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「……とりあえず、千円で」 俺はおそるおそる、財布から千円札を一枚抜き出した。一万円札なんて出した日には、この里の経済が爆発するか、俺が強盗に遭うかの二択な気がしたからだ。
だが、その千円札を受け取った両替商の親父の目は、宝石鑑定士のように鋭く光った。 「……おいおい、兄ちゃん。これ、どこの国の紙だ? この細かい印刷に、不思議な手触り……。ただの紙じゃねえな、これは『芸術品』だ」 「えっ、ただの千円ですよ? 牛丼三杯も食べれば消えるくらいの……」 「ギュー…ドン? 知らねえが、これ一枚で里の最高級旅館に一週間は泊まれるぜ」
ドサッ、とカウンターに置かれたのは、ずっしりと重い小銭の袋だった。 「……マジかよ」 俺は、千円札一枚が「一財産」に化けたことに戦慄した。
「ほら、ボサッとしてないで。次は服よ」 霊夢に背中を押され、やってきたのはごく普通の呉服屋だった。 霊夢は「これぞ金持ち!」と言わんばかりの派手な柄物を勧めてきたが、俺はそれを必死に固辞した。
「いや、そんな高いのはいいです! 普通のでいいんです、動きやすくて、汚れが目立たないやつ!」 「えー、せっかくの『上様』なのに……」 不服そうな霊夢を無視して、俺が選んだのは落ち着いた**紺色のシンプルな和服(着流し)**だった。
「お、いいじゃないか。それなら里の人間にも馴染むし、何より卵焼きの黄色が映えるぜ!」 魔理沙がニカッと笑い、俺の背中を叩く。
慣れない手つきで着替えを終え、鏡(のような水鏡)を見る。 そこには、さっきまで「スーパー帰りの不審な男」だった俺が、なんだか**「里に住み着いたばかりの若旦那」**のような姿で映っていた。