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律は救急箱を棚に戻すと、華の方へ視線を向けた。
「歩けますか」
短い言葉。けれど、それがただの確認ではなく、心からの気遣いに聞こえて胸が熱くなる。
「だ、大丈夫です。ちゃんと歩けますから」
そう答えながら立ち上がった華は、ほんの少し足をかばってしまった。
律は黙って隣に立ち、歩幅を合わせるようにゆっくりと歩き出す。
「無理をすれば、また転びます」
「……はい」
隣を歩くだけなのに、華の心臓は速くなっていく。
その穏やかな歩調が、彼女にとって何よりの支えだった。