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修学旅行、二日目の夜。
消灯時間を過ぎた部屋は、静かだった。
布団の中で、葛葉は目を開けたまま天井を見ている。
「……寝れねぇ」
『同じく』
隣の布団から、ローレンの声が小さく聞こえた。
「昼歩きすぎたせいだろ」
『足より頭が冴えてる』
「何それ」
『くっさん、起きてると思った』
少しの沈黙。
『……こっち来る?』
「は?」
『話し相手欲しい』
「……仕方ねぇな」
葛葉はそっと布団を抜け出して、ローレンの布団に潜り込む。
「狭」
『文句言うな』
「お前が呼んだんだろ」
『……あったかい』
「今さら」
二人で並んで天井を見る。
『今日の班行動さ』
「ん」
『くっさん、ずっと俺の写真撮ってたな』
「……記録だよ」
『記録にしては多くない?』
「消すか?」
『消すな』
「どっちだよ」
ローレンは小さく笑う。
『……楽しかった』
「だな」
『クラスのやつらと騒ぐのも』
『くっさんと回るのも』
「欲張り」
『修学旅行だぞ』
「確かに」
ローレンは少し間を置いてから言った。
『……昼さ』
『女子に囲まれてなかった?』
「……見てたのかよ」
『見えるだろ』
「写真頼まれただけ」
『ふーん』
「何だよ」
『ちょっと嫌だった』
「……お前も男子に囲まれてたじゃん」
『説明してただけ』
「それも同じだろ」
『……』
「……」
しばらく沈黙。
『……くっさん』
「ん」
『俺』
『独占欲、強いかも』
「今さら?」
『自覚した』
「遅ぇよ」
葛葉は寝返りを打って、ローレンの方を見る。
「俺もな」
『……修学旅行の夜に言うことか』
「ロマンだろ」
『どこが』
「知らん」
ローレンは少し照れたように言う。
『……帰ったら』
『また普通の日常だな』
「嫌?」
『嫌じゃない』
『くっさんがいるなら』
「……同じこと思ってた」
廊下から、先生の足音が遠くで聞こえる。
『……戻る?』
「今動いたらバレる」
『じゃあ』
『もう少しだけ』
「……仕方ねぇな」
ローレンは布団の中で、そっと葛葉の服の裾を掴む。
『……離れんなよ』
「離れねぇ」
『約束な』
「約束」
二人はそのまま、声を潜めて笑った。
やがて、話し声も減っていく。
『……おやすみ』
「おやすみ」
修学旅行の夜は、いつもより少しだけ、特別だった。