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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「…響、おじさん来たよ?」




モニターを見ながら声をかける。


慌てて半裸の響がやって来た。





「…マジか…。また、お預け?」




うなだれる響に代わって、私はモニターのおじさんに対応した。



「おじさん…お久しぶりです!今開けますね」



幼なじみの関係なので、響のご両親とも面識がある私。

特に私は響の両親に可愛がられて、おばさんにはよく服をプレゼントされた。


だから10年ぶりとはいえ、大きな企業の会長とはいえ「おじさん」と呼んでも許される。

…………


「琴音ちゃんっ!」


部屋に上がってきたおじさんは、私の顔を見るなり、両腕を開いて目を潤ませた。



「おじさん…こっちから会いに行かなくてごめんなさい…」


「うんうん、いいんだよ。琴音ちゃんこんなに大きくなって…おじさん嬉しいよ…!」



ぎゅうぎゅう抱きしめられる私を見て、響が突然牙を剥いた。



「じじぃっ!それくらいにしとけっ!琴音はもう大人だっ!」



父親に向かって…というか、日本のトップ企業の会長に向かってじじぃとは…。


相変わらずスゴい親子だ…。




「…で?何の用?…てか、会社で話せばよくね?何でここまで来るんだよ?…こっちにもいろいろ予定があるんだけど?」



わかりやすくイライラしている響…。


やっと初エッチにこぎつけたのに、邪魔をされた怒りがスゴい…。






「うん。…お母さんと喧嘩しちゃった…」


「は?」


「だってさ。お母さん、一緒に行った花屋のお兄さんに、手を触られてたんだよ?」


「なんだそりゃ」


「だから、お釣りをもらうときにさ、わざわざ手を包むようにして…こうして…」



私の手を取って、その時の再現をしようとするおじさん。


「…っ!琴音に触んなっ!」


パシッと父親の手をはたいて、響が触れられた私の手をさすった。




「…え、なに?君ら、付き合ってるの?」



おじさんが目を丸くして言うので、私は少し赤くなって響を見上げる。



「そう。付き合ってるし、嫁にもらうから」


簡単だけど、もう私の親にも挨拶に行ったと言う。




「なんだ…そうなのか、いやぁ…参ったなぁ…」




おじさんがわかりやすく狼狽えているので、さすがに身分違いで反対だと言いたいのだろうと…ドキドキした。



「なんだよ。反対とか言わないよな?母さんだって別にどっかの令嬢だったわけじゃないし、父さんが勝手に見初めて猛アタックして嫁にしたんだろ?それなら俺だって同じだから」



…そうなの?

初めて聞いた…!


身分違いだと思ってたけど、響との結婚が、俄然現実的になってきた。




「いやぁ…!反対なんてしないよ!響は子供の頃から、琴音ちゃんのこと可愛がってたしなぁ。付き合ってるのも結婚も大賛成…!」



喜んでくれたけど、どこか浮かない顔をしている。



「でも、琴音ちゃんを捕まえたなんて知らなかったからさぁ…頼まれちゃったんだよ。響を紹介してくれって…」


「あぁ、見合いとか?そんなの断ってくれよ?」


「…そうしてやりたいんだけど、もう、受けちゃった話なんだよね…」




おじさんは弱りきった顔をして、頭を抱えた。


「だって響、1度も女の子を連れてきたことないだろ?もしかして…琴音ちゃんを逃して、同性愛とか…そっちに走っちゃったのかなぁ…ってお母さんと心配してて」


「…俺はひたすら琴音を思っていただけだ」




そこで、おじさんが私に顔を向けた。


「琴音ちゃんは…嫌だよね…。響のこと好きになってくれたなら、形ばかりだとしてもお見合いなんてさ…」


おじさん、少し顔色が悪くなってる。

相当困ってるみたいに見えて、思わず言ってしまった。



「形だけなら、いいけど…」



お見合いなら、1日だけだよね…。

ほんの数時間の顔合わせ。


それだけでおじさんの顔がたつなら仕方ない…。




「ほんとに?よかったぁー…。これでホッとしたぁ」


胸を撫で下ろすおじさんを、ため息をつきながら響が見下ろして言う。



「本当に会うだけだな?で、日にちは?」


「今度の日曜!頼むわ!」


「わかった。…じゃ、帰ってくれ」



響は有無を言わさず、父親を立たせようとした。



「え?嫌だよ。だから、母さんと喧嘩したって言ったじゃん…」



まさか…。

響の顔がひきつる…!



「悪いけど、お母さんが謝ってくるまでここに泊めてくれ」





結局おじさんは、リビングのすみに布団を敷いて、泊まっていくことになった。




夜中までおじさんの昔話に付き合ったおかげで、2人でベッドに横になったら…すぐに眠ってしまった私たち…。



…私の新しい下着とスリップのお披露目は、またしばらく延期になりそうだ。



………………


「じじぃ…いつ帰るか未定だと」



本当は響の部屋に帰りたかった。


でも…例え自分の父親だとしても、私が男性と2人きりになるのを嫌がった響。

必然的に、同居も先延ばしになった。



それなら私が住むマンションに来てくれたらいいのに…



「行ったら絶対手を出したくなるから…」



そう言って、口をへの字に曲げる響。



「それに、シングルベッドじゃ狭いし…」



よくよく聞いてみれば、一番の理由は「壁が薄い」ことが理由みたい。


こんなすごいマンションの壁が薄いっていうなら、うちのアパートとか、もう紙だよね?


それに…えっちって、そんなに絶叫するものなの…?


……………


そして、おじさんに頼まれたお見合いの日がやってきた。



お見合いは夜だという響。

おじさんがランチをごちそうしてくれるということで、お昼頃マンションに行く。



「いらっしゃい琴音ちゃん!」



おじさんが満面の笑みで迎えてくれる。


テーブルには旅館の夕食…のような食事が整ってるのを見て驚いた…



「どしたの?この豪華な食事は…」


「罪滅ぼしのつもりだろ」



響が呆れたように言う。


付き合っていることを知らなかったとはいえ、これから響を見合いに行かせることに、おじさんは多少の罪悪感を覚えているらしい。


そんな…挨拶にいかなかった私も悪いんだから、気にしなくていいのに…。


冷蔵庫を開けて、何を飲むか笑顔で聞いてくれるおじさんを見て笑顔になる。



スパークリングワインを飲みながら、美味しい料理をいただいて…私が余裕だったのはここまで。




「あー…だるっ」



スーツを選んでくれと言われて、一緒に寝室のクローゼットを覗き込む。


こんな私でも、ひと目で上質だとわかるスーツが10着以上…


そしてフワっと香るのは、響がつけてる香水の香り…



「うーん。この焦げ茶は?…あ。だめ…これは私を捕獲したときのスーツだ」



「じゃ、黒のコレにするか?」


響が手にしたスーツを取り上げて、胸のあたりにあててみる。


だめ…カッコよすぎる。


紺色、シルバーグレー…



「だめ…全部。なに着てもカッコいい…」



ベッドに座り込む私の隣に響も腰掛けて言う。


「…じゃ、裸で行けって?」


Tシャツを無造作に脱いで、その滑らかな肌と、程よく筋肉がついた上体を見せつける。


はぁ…。

裸なんてもっとダメに決まってるじゃん…



「じゃ、そのストライプのスーツでも着ていけば?」


ゴロン…と横になって言えば、響がたまらず吹き出す。


「…なんだよ。急に雑だな?」



…思わず首もとに抱きついてみれば、それはどこから見てもイチャイチャしたカップルなのに、これからお見合いに出掛けるなんて。



…………


「じゃ、行ってくるわ…」



スーツに着替えた響…髪も整えた姿に息を呑む。


どうしてそんなにカッコいいの…?


お見合いしてもいいなんて言って、本当に後悔した。


だってこんなに素敵な人に、惹かれない女の人はいないもん。



どうしよう…すごく好かれちゃったら。


おじさんに隠れて、その大きな背中に抱きついた。



「琴音…?」

「やっぱり行っちゃやだ」

「俺だってここにいたい」

「…」

「琴音のせいだ…バカ」





「…あのぅ…お父さん、いるんですけど…?」




先に行ったと思ってたのに、まだいたとわかって焦る…!


慌てて離れようとするも、響が手を離さないから…。

おじさんは私たちの脇を、真っ赤な顔でコソコソ通り抜けて行った。




チュッと頬にキスを落とされて…そろそろとドアが閉まり、私の愛しいイケメンは行ってしまった。


スパダリは甘くない

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コメント

1

ユーザー

すんなり無かったことになりますように…🙏 父ーっ!!!ぜーーーーったい断ってよー!可愛い琴音ちゃんでしょ! 響もバシッと、お断りにきました!って言ってよ!!! 琴音ちゃんに危害を加えられないように一筆書いてもらって、母印押してもらってね!!! 2人とも言わないと…お仕置きよーっ😤😤😤

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