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すんなり無かったことになりますように…🙏 父ーっ!!!ぜーーーーったい断ってよー!可愛い琴音ちゃんでしょ! 響もバシッと、お断りにきました!って言ってよ!!! 琴音ちゃんに危害を加えられないように一筆書いてもらって、母印押してもらってね!!! 2人とも言わないと…お仕置きよーっ😤😤😤
「…響、おじさん来たよ?」
モニターを見ながら声をかける。
慌てて半裸の響がやって来た。
「…マジか…。また、お預け?」
うなだれる響に代わって、私はモニターのおじさんに対応した。
「おじさん…お久しぶりです!今開けますね」
幼なじみの関係なので、響のご両親とも面識がある私。
特に私は響の両親に可愛がられて、おばさんにはよく服をプレゼントされた。
だから10年ぶりとはいえ、大きな企業の会長とはいえ「おじさん」と呼んでも許される。
…………
「琴音ちゃんっ!」
部屋に上がってきたおじさんは、私の顔を見るなり、両腕を開いて目を潤ませた。
「おじさん…こっちから会いに行かなくてごめんなさい…」
「うんうん、いいんだよ。琴音ちゃんこんなに大きくなって…おじさん嬉しいよ…!」
ぎゅうぎゅう抱きしめられる私を見て、響が突然牙を剥いた。
「じじぃっ!それくらいにしとけっ!琴音はもう大人だっ!」
父親に向かって…というか、日本のトップ企業の会長に向かってじじぃとは…。
相変わらずスゴい親子だ…。
「…で?何の用?…てか、会社で話せばよくね?何でここまで来るんだよ?…こっちにもいろいろ予定があるんだけど?」
わかりやすくイライラしている響…。
やっと初エッチにこぎつけたのに、邪魔をされた怒りがスゴい…。
「うん。…お母さんと喧嘩しちゃった…」
「は?」
「だってさ。お母さん、一緒に行った花屋のお兄さんに、手を触られてたんだよ?」
「なんだそりゃ」
「だから、お釣りをもらうときにさ、わざわざ手を包むようにして…こうして…」
私の手を取って、その時の再現をしようとするおじさん。
「…っ!琴音に触んなっ!」
パシッと父親の手をはたいて、響が触れられた私の手をさすった。
「…え、なに?君ら、付き合ってるの?」
おじさんが目を丸くして言うので、私は少し赤くなって響を見上げる。
「そう。付き合ってるし、嫁にもらうから」
簡単だけど、もう私の親にも挨拶に行ったと言う。
「なんだ…そうなのか、いやぁ…参ったなぁ…」
おじさんがわかりやすく狼狽えているので、さすがに身分違いで反対だと言いたいのだろうと…ドキドキした。
「なんだよ。反対とか言わないよな?母さんだって別にどっかの令嬢だったわけじゃないし、父さんが勝手に見初めて猛アタックして嫁にしたんだろ?それなら俺だって同じだから」
…そうなの?
初めて聞いた…!
身分違いだと思ってたけど、響との結婚が、俄然現実的になってきた。
「いやぁ…!反対なんてしないよ!響は子供の頃から、琴音ちゃんのこと可愛がってたしなぁ。付き合ってるのも結婚も大賛成…!」
喜んでくれたけど、どこか浮かない顔をしている。
「でも、琴音ちゃんを捕まえたなんて知らなかったからさぁ…頼まれちゃったんだよ。響を紹介してくれって…」
「あぁ、見合いとか?そんなの断ってくれよ?」
「…そうしてやりたいんだけど、もう、受けちゃった話なんだよね…」
おじさんは弱りきった顔をして、頭を抱えた。
「だって響、1度も女の子を連れてきたことないだろ?もしかして…琴音ちゃんを逃して、同性愛とか…そっちに走っちゃったのかなぁ…ってお母さんと心配してて」
「…俺はひたすら琴音を思っていただけだ」
そこで、おじさんが私に顔を向けた。
「琴音ちゃんは…嫌だよね…。響のこと好きになってくれたなら、形ばかりだとしてもお見合いなんてさ…」
おじさん、少し顔色が悪くなってる。
相当困ってるみたいに見えて、思わず言ってしまった。
「形だけなら、いいけど…」
お見合いなら、1日だけだよね…。
ほんの数時間の顔合わせ。
それだけでおじさんの顔がたつなら仕方ない…。
「ほんとに?よかったぁー…。これでホッとしたぁ」
胸を撫で下ろすおじさんを、ため息をつきながら響が見下ろして言う。
「本当に会うだけだな?で、日にちは?」
「今度の日曜!頼むわ!」
「わかった。…じゃ、帰ってくれ」
響は有無を言わさず、父親を立たせようとした。
「え?嫌だよ。だから、母さんと喧嘩したって言ったじゃん…」
まさか…。
響の顔がひきつる…!
「悪いけど、お母さんが謝ってくるまでここに泊めてくれ」
結局おじさんは、リビングのすみに布団を敷いて、泊まっていくことになった。
夜中までおじさんの昔話に付き合ったおかげで、2人でベッドに横になったら…すぐに眠ってしまった私たち…。
…私の新しい下着とスリップのお披露目は、またしばらく延期になりそうだ。
………………
「じじぃ…いつ帰るか未定だと」
本当は響の部屋に帰りたかった。
でも…例え自分の父親だとしても、私が男性と2人きりになるのを嫌がった響。
必然的に、同居も先延ばしになった。
それなら私が住むマンションに来てくれたらいいのに…
「行ったら絶対手を出したくなるから…」
そう言って、口をへの字に曲げる響。
「それに、シングルベッドじゃ狭いし…」
よくよく聞いてみれば、一番の理由は「壁が薄い」ことが理由みたい。
こんなすごいマンションの壁が薄いっていうなら、うちのアパートとか、もう紙だよね?
それに…えっちって、そんなに絶叫するものなの…?
……………
そして、おじさんに頼まれたお見合いの日がやってきた。
お見合いは夜だという響。
おじさんがランチをごちそうしてくれるということで、お昼頃マンションに行く。
「いらっしゃい琴音ちゃん!」
おじさんが満面の笑みで迎えてくれる。
テーブルには旅館の夕食…のような食事が整ってるのを見て驚いた…
「どしたの?この豪華な食事は…」
「罪滅ぼしのつもりだろ」
響が呆れたように言う。
付き合っていることを知らなかったとはいえ、これから響を見合いに行かせることに、おじさんは多少の罪悪感を覚えているらしい。
そんな…挨拶にいかなかった私も悪いんだから、気にしなくていいのに…。
冷蔵庫を開けて、何を飲むか笑顔で聞いてくれるおじさんを見て笑顔になる。
スパークリングワインを飲みながら、美味しい料理をいただいて…私が余裕だったのはここまで。
「あー…だるっ」
スーツを選んでくれと言われて、一緒に寝室のクローゼットを覗き込む。
こんな私でも、ひと目で上質だとわかるスーツが10着以上…
そしてフワっと香るのは、響がつけてる香水の香り…
「うーん。この焦げ茶は?…あ。だめ…これは私を捕獲したときのスーツだ」
「じゃ、黒のコレにするか?」
響が手にしたスーツを取り上げて、胸のあたりにあててみる。
だめ…カッコよすぎる。
紺色、シルバーグレー…
「だめ…全部。なに着てもカッコいい…」
ベッドに座り込む私の隣に響も腰掛けて言う。
「…じゃ、裸で行けって?」
Tシャツを無造作に脱いで、その滑らかな肌と、程よく筋肉がついた上体を見せつける。
はぁ…。
裸なんてもっとダメに決まってるじゃん…
「じゃ、そのストライプのスーツでも着ていけば?」
ゴロン…と横になって言えば、響がたまらず吹き出す。
「…なんだよ。急に雑だな?」
…思わず首もとに抱きついてみれば、それはどこから見てもイチャイチャしたカップルなのに、これからお見合いに出掛けるなんて。
…………
「じゃ、行ってくるわ…」
スーツに着替えた響…髪も整えた姿に息を呑む。
どうしてそんなにカッコいいの…?
お見合いしてもいいなんて言って、本当に後悔した。
だってこんなに素敵な人に、惹かれない女の人はいないもん。
どうしよう…すごく好かれちゃったら。
おじさんに隠れて、その大きな背中に抱きついた。
「琴音…?」
「やっぱり行っちゃやだ」
「俺だってここにいたい」
「…」
「琴音のせいだ…バカ」
「…あのぅ…お父さん、いるんですけど…?」
先に行ったと思ってたのに、まだいたとわかって焦る…!
慌てて離れようとするも、響が手を離さないから…。
おじさんは私たちの脇を、真っ赤な顔でコソコソ通り抜けて行った。
チュッと頬にキスを落とされて…そろそろとドアが閉まり、私の愛しいイケメンは行ってしまった。