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今回はこの量で許してくださいどうか何卒🙏 そろそろラストスパートかも…?
「ありがとう。アンタのおかげで…勇気出たよ。」
「そうか、そらよかった。…お前名前なんて言うんだ?」
「……ナツミ。ナツミっていう。アンタは?」
「俺は…えっと……アキラだ……確か…」
「ふーん…そっか。あのさ、私も何か手伝える事ない?」
「え?」
「アンタの記憶を取り戻す手伝いができないかってこと。」
「うーん…いや、いいよ。」
「なんで?」
「この前キツネが言ってたんだけど、そういうのは自分の力で取り戻すのがいいらしいから…お前はお前を待っている人のとこに早く行け。」
「そっか……私はあんなにすぐ思い出したのに…アンタ、そんなに思い出したくないのかな…」
「………分からない。だから見つけに行くんだ。」
「そう………まあ頑張ってね。私、向こうで待ってるから。」
「ああ、じゃあな。」
「じゃあね…」
あの女…いやナツミが現世に行ってから二日経った。
彼女は私を手伝うと言ってくれたが……まあ、あの気持ちのままやるのは申し訳ないと思い、断った。
「お父さーん、今日どこ行くの?」
「ああ今日はハヤテを帰しに行くよ。」
「帰す?」
「そう。ここはハヤテがいる所じゃないんだよ。」
今日はハヤテとお別れをする。ここはハヤテのいるべき所じゃないんだ。
そもそも真相なんて分からなくてもういいんだ。ハヤテを現世へと帰し、私は黄泉へ行けばいいんだ…と気づいた。
気になりはするが、まずはハヤテを帰して、それからでもいい。
壁に着き、昨日作った縄はしごを使って登った。はしごの方が、ハヤテも登りやすいと思ったからだ。
…どうやら、あのキツネはいないようだ。
「いいか?ハヤテ。この霧の中を歩いて行けば、お母さんの所へ行ける。ハヤテは、お母さんの所に行かないといけないんだ。」
「なんで?僕まだここに居たいよ。お父さんとお別れしたくない。」
「それはダメなんだ。大丈夫、お母さんがいるから、全部教えてくれるよ。行っておいで。」
「………うーん…分かった…じゃあね。」
「うん。じゃあな。」
ハヤテの説得に成功した。
…もうこれでハヤテと一緒にいられるのは最後か…
―その時、私はがっちりとハヤテの手を掴んだ。
そして私は言った。
「やっぱりダメだ!ハヤテ、まだ行かなくていいよ!」
「そうなの?分かった、まだお父さんと一緒にいる!」
―まただ。あの壁の話をした時と同じ…勝手に口から出た。
なぜなのか分からず、私はハヤテを引き留めた。
これも『記憶』と関係があるのか? なぜなんだ?
また一つ謎が増えた。分からない事が多すぎる…
結局、私達は『家』に帰った。
OVER 第五章 『引く手、引かれた手』 完