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私は、人間が(私を含め)嫌いだ。
─別にこれといった意味はない。私は人間ではないということでもなく、精神病も患っていない普通の人間。だからこそ、個性がなくてネットにすら晒せない、醜い私のような人間が嫌いだ。
私達人間を、なにかの”原石”として例えよう。原石は磨けば磨く程綺麗になり、やがて本来の輝きを発するはずだ。
だが、輝かなければどうだろう。問題はその”輝き”だ。元々原石の種類が違うものならば、磨いた時の輝き具合も違う。もしかすると、”輝かない”かもしれない。
つまり、生まれた時の環境や顔の整い…人生のスタートが違うわけだ。私はスタートダッシュを思い切り転けた。宝石どころか河原の綺麗な石ころにすらなれていない。
……私はみんながみんな宝石のように綺麗な個性を持つとは言っていないはずだ。今の自分に満足しないならさらに磨けばいい。そう思った人もいるだろう。
意見を答えず質問で返すことになるが、いくら磨いても成長しないならもう時間の無駄、では無いだろうか。
実際に私は、顔が不細工だ。二重の目だけれど目つきが悪くて、その下に大きな鼻とそばかす。唯一、問題がない良い所である口も、上ふたつに存在を消されている。今まで必死に頑張ってきたが、良くなるのは肌荒れと乾燥、ニキビだけ。整形は自分の財布の金では到底届かない。親に言うのも怖い。
これだけではない。神様は私だけに不幸をふりかけやがった。好きだった水彩画も周りの上手さに潰され、歌だって”実力派”とやらに潰されて。何も飛び抜けて上手くない。むしろマイナスだ。
私はこの人生が嫌だけど、まぁ一応友達はいる。優しくて、この世の綺麗な部分だけ切り取ったような人が。
……まあ、その人の憤怒に塗れた顔を見たのが人生最後の出来事だとは思ってなかったけどさあ。
そんなわけで私、今幽霊になった。
なんで現世で幽霊になったのかすら分からない。だって何もかも諦めた元人間だもの。
白装束を着ている訳でもない。ダボついたジャージに外ハネのボブ、お気に入りの黒いスニーカー。いつもの自分だ。鏡にも写真にも映らないから、蛙化したり作画崩壊もない。
でもさ神様。ノルマくらい教えてよ。幽霊人生(死んでるけど)を謳歌しろとかじゃないよね。何?ハッピーエンドにしろとでも?無理無理無理。こういう終わり方の人がいるから、ハッピーエンドが際立って幸せに見えるんだろうが。私はそれを支えてんの。
『─まあ、でもさー…こういうのもいいんじゃないのかい、自分。』
ころっと考えを変えるのは少し悔しいけど、考えを無理やりでもポジティブにしないとやっていけない。車に轢かれながら(幽霊だからすり抜ける)、そう呟いた。
『お供えもん食いに行こうぜ〜。たまには糖分摂取だぞ自分。』
お供え物には絶対お菓子があるはず。私はお菓子をよく食べていたし大好きだったから。勿論、意識し始めた頃から食べてないけど。
信号が点滅した。点滅が7回、そして赤になる。私はそれを無視して、堂々と横断歩道を渡った。誰かとすれ違う。……あれ、赤になったよな。
「……ももね!!ダメ!!!」
─一瞬、何が起きたか分からなかった。鈍い音。しばらくして視界に入ったのは血の海だった。ガードレールにぶつかった軽トラックの傍で、同い年くらいの女の子が倒れている。
『うそお…超不幸じゃん』
そう言って、私はその子の近くに行く。立ち止まって、彼女を見下す。生きていた時はできなかった(できるはずなかった)立ち方だ。しゃがみこむと、血に塗れた顔が見えた。いいなこの顔。この顔をムダにするのか。もったいな。
『君のお供え、3番目くらいに届けてやるよ』
……さーて、お供えもんお供えもん。食べに行こ。
たまにはこんなのも、いいのかもしれない。今は細かいこと考えずに、第2の人生を謳歌しようぜ自分。
立ち入り禁止を示すテープをすり抜けて、自分が死んだ場所に向かう。…あの子、幽霊になるのか?明らか未練タラタラな気がする。まあ、明日になりゃわかるっしょ。
『お供えも〜ん、お供えもん…』
うらめしおばけ、未練おばけと実況中。
はじまり、はじまり…
翠姉ちゃんのアナザーストーリーです。
主人公は違うけど。
もし翠姉が幽霊になって、ずっと守護霊みたいに憑きまわしてたら……
ってやつです。
ゆるゆる(非)日常おばけたちの、痛覚を忘れた恋模様実況をお楽しみください。
では