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#前世
shima7a
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第109話 「あと二つ」2027年7月。
夏の福岡大会。
準々決勝。
柳城高校の相手は、古豪・西筑学院高校。
堅い守備と機動力を武器に勝ち上がってきた実力校だった。
試合前。
福間監督は、いつものように部員を集める。
「特別なことはありません。」
「一球。」
「一歩。」
「一つの声。」
「それを大切にしてください。」
「はい!」
力強い返事が球場に響いた。
試合開始。
柳城の先発は三年生エース・山本。
初回からテンポよく打たせて取る。
三回。
柳城が先制。
送りバント。
進塁打。
タイムリーヒット。
柳城らしい攻撃だった。
しかし。
六回。
相手もすぐに追いつく。
一対一。
試合は終盤へ。
八回表。
柳城の攻撃。
二死一、二塁。
打席には五番打者。
打球は三遊間へ。
ショートが飛びつく。
届かない。
センター前ヒット。
二塁走者が生還。
二対一。
柳城が勝ち越した。
九回裏。
最後の打者。
高々と舞い上がるフライ。
センターがしっかり捕球。
ゲームセット。
柳城高校。
二対一。
準決勝進出。
試合後。
スタンドから大きな拍手が送られる。
福間監督は、応援席へ深く一礼した。
学校へ戻るバス。
車内は静かだった。
疲れもあった。
だが。
誰も浮かれてはいない。
福間監督が立ち上がる。
「あと二つです。」
部員たちは監督を見る。
「ですが。」
「あと二つではありません。」
「今日の試合は終わりました。」
「次は、準決勝。」
「その一試合だけを考えましょう。」
部員たちは静かに頷いた。
夜。
学校。
誰もいないグラウンド。
啓介は一人、ベンチに座っていた。
そこへ福間監督が歩いてくる。
「眠れませんか。」
「少しだけ。」
啓介は笑った。
「先生は眠れますか。」
福間監督も笑う。
「毎年、準決勝の前日は眠れません。」
二人は顔を見合わせる。
「意外でした。」
「監督も同じなんですね。」
福間監督は空を見上げる。
「緊張するからこそ。」
「全力で準備するのです。」
しばらく沈黙が続く。
やがて福間監督が静かに口を開く。
「啓介。」
「はい。」
「今年の三年生は、本当によく頑張っています。」
「だから。」
「この夏を、少しでも長く続けさせてあげたいですね。」
啓介は力強く頷いた。
「はい。」
夜風が吹く。
照明の消えたグラウンド。
そこには。
福間監督と啓介。
二人の静かな時間だけが流れていた。
夏は、あと二勝。
福間監督最後の夏は。
いよいよ佳境を迎えようとしていた。
第109話 終
コメント
1件
天海カオルさんの #第109話、読み終わったよ〜!📚💖 「あと二つ」っていうタイトルから漂う、勝負の重みと切なさがもう…😭✨ 試合の一球一歩に込められた監督の言葉、すごく染みたし、試合後のバスで誰も浮かれてない静けさが逆に熱いよね…! 夜のグラウンドで監督と啓介が交わす「眠れません」のやり取り、めちゃくちゃエモい…同じ人間なんだなって思えて泣ける🥺💦 あと二勝、福間監督の最後の夏…全力で応援したくなる!次の話も楽しみにしてるね⋆♡