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帰り道。
時間が経つ程、段々と腹痛が強くなっていく。
「急に座り込んでどうしたんだい?」
「腹痛で歩けないかもです…」
隣の呪霊に担がれて運ばれた。
本当は羂索におんぶされたかったが、運んでもらう側が文句を言うのは失礼だから口に出すのはやめておく。
寺に着いて布団に寝転がるころには、腹も結構膨らんできていた。
羂索がスプーン状の細長い器具を取り出す。
「腹から直接アレを取り出すね。」
「え…?一旦待っ、」
お菓子の袋を開けるかのようなノリで、腹を切開された。
「ああああぁぁ!?」
目が覚めてまず見えたのは、新しく産んだ(正確には堕胎した)壊相の呪物だった。
さっきの衝撃でどうやら気絶していたようだ。
まだ痛みのする腹には切開部が糸で縫われている。
「あ、起きたようだね。さっき取り出したこれは君の実家で産んだものより弱くてね〜。もっと面白いものを期待したけど駄目だったかな。」
「麻酔無しで堕胎手術はさすがにキツいんですが…」
「麻酔知ってるんだ。加茂家の権力を利用して手に入れることは不可能ではないけど、別になくてもいいかな。」
「え〜」
(血塗を産んだらここから逃げるか…)
昨日[いつでも実験に協力しなくなり寺を出る選択肢を羂索は与えてくれる。その代わり私は誰にも口外しない。]という縛りを結んだ。
膿爛相以降はいなくても別に問題ないだろう。
次の日に血塗を産み、さらに次の日の朝。
「憲倫さん、3日前にいつでも実験に協力しなくなり寺から出る選択肢を与えてくれる縛り結びましたよね?」
「実験のことを私以外の誰にも言わないというのもあるね。」
「なので、寺から出ようと思います。短い間でしたが、お世話になりました。」
荷造りは済ませてある。
外に出るため玄関の方へ行こうとした途端。
「赤縛」
「なぜ!?」
赤血操術による網状の血液で拘束された。
「寺から出ても構わないよ。この拘束が解けるならね。縛りに結んだのはあくまで寺から出れる選択肢。実際に逃げられるかは別の話だよ。」
「…屁理屈です。」
「好きに言えばいい。君は私の好奇心を満たすための道具になってもらうからね。」
最推しに拘束されたことが、心の底では嬉しいと感じてしまった。