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長野に行くと言ったら、華さんがおにぎりとお茶の入った水筒を持たせてくれて、ますます遠足気分が高まった。
蓮水さんは、白いポロシャツのカジュアルなパンツスタイルで、こういう普段着の感じもいいなぁーと思う。
それにヘアスタイルもいつもみたいにかっちりとセットしていないだけで、こんなにも印象が変わるんだ……と、ぼーっと見つめていたら、
「……初デートが、うまく運ばれると良いですね」
華さんがスッとそばに寄って来て、耳に囁いた。
「いつからわかっていたんですか……」
赤らんだ顔で小さく独り言のようにも呟くと、
「わからない方がおかしいですよ。あんな恋する眼差しを」
あっさりとそう返されて、穴があったら入りたいような気持ちになった。
「……うん? 何を話していたんだい?」
不思議そうな顔の蓮水さんに、「いいえ、何にも」と、華さんはにっこりと笑うと、私にだけわかるよう「ファイト!」とでも言うように、握った拳を見せた。
「……ありがとうございます」
心強い味方がたまらなく嬉しくて、うるっときちゃいそうになりながら微笑って返す。
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
華さんに見送られて歩きながら、『初デート』だなんてと、改めて思う。
もしも本当に、そんな感じになれたらいいなと、先を行く広い背中を軽やかな足取りで追いかけた──。