「じゃあなんであんなことしてんだよ」
葵は納得いかないってふうに問いかける。葵は決めつけるような癖があるから、たまに勘違いが起こる。確認って大事だ。気持ちいいからあんなことしてる、で完結してるんだろうな、葵の頭は。全くお粗末だ。でもまだ嫌いじゃないよ葵のこと。
「からっぽになれるから」
「そんなの相手の(自主規制)で腹ん中パンパンだろ」
「葵くん汚いです!」
「なんだよそんな俺が汚いみたいな言い方!」
「ほらお前らやめろ。そんな汚い内容で喧嘩すんなよ」
「今は入ってないからな!! ちゃんと掻き出したからな!!」
「生々しい話するんじゃねぇぇえ!!!!!!!!」
……あ。今の、すっごい麦茶同好会っぽかった。素直になれば、なんてことないって、こういうこと。素直に、正直に、遠慮なく言い合いをすれば、自然な俺たちそのままでいられる。それが楽しかったんだ。
「っと、話が逸れたな。」
いっちゃん、さすがお兄ちゃんと言わんばかりのリーダーシップ?司会力?まとめ上手?って言うの?
「からっぽってどういうことなんだ?麦。葵はこれが聞きたかったんだろ?」
「そのままだよ。頭ん中からっぽ。ぐちゃぐちゃのドロドロにされて訳わかんなくてもうなんにも考えられなくなって、それからしばらくからっぽな時間。」
「…なんだよそれ。お前はずっと逃げてたっていうのかよ……」
葵がこちらに近づいてくる。何かを察したいっちゃんが俺の体を解放した。今のうちに逃げようかな、なんか葵怒らせちゃったみたいだし。葵の平手打ちって痛いんだよなあ…でもここで逃げたらもう一生元に戻れない気がする。今がきっと戻れる1番のチャンスなんだ。
「ちゃんと向き合えよ、逃げるなよ、俺たちのこと、まだ見限るなよっ……」
頬に来る衝撃に心の準備をしていたら、意外にも衝撃は肩に来た。肩を強い力で掴まれている。向き合う。そういえば、ちゃんと、考えたことあったかな。たくさん考えることはあっても、自分が辞めればなんとかなるってすぐに終わらせてた。ちゃんと向き合う、ってことをしていなかったということかな。葵は泣いてたし、思いのほか葵は良い奴だし、柚ちゃんもいっちゃんも優しく微笑んでるし、真剣に俺の事見てるし、穴空いちゃうじゃねえか、…
「ごめんな、ごめんっ…葵、…柚ちゃん、いっちゃん……っう、ひっく、」