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諦めたことは沢山ある。
諦めたくなかったことも
諦めるしかなかったことも
その全てによる後悔で
今も俺は 突き動かされている。
いつか叶えられたら
そうしたら
きっと俺は
今度こそ幸せになれる。
だから
だから、一歩踏み出して
ねぇ、背中を押して。
・・・
『 暑ー 』
木々も 緑になり始め
錆びた網から遠慮がちに風が漏れる。
「 電車って涼しくないんだ 」
たら、と君の頬から首筋に
そして 鎖骨に胸元に。
『 東京っ子には分からへんわ 』
『 田舎の電車は窓全開よ 』
一見滑らかなその液体すら
美しく思えてしまうのは君の美貌のせい。
「 すごいね 」
「 海があんなに近くに 」
緩やかな曲線を描く頭部から
ふわりと舞う 細い黒髪に
『 そおそお、知っちょるか 』
『 次の駅は 海で降りれるんよ 』
少し焦げていても滑らかな肌
やんわりと着崩した制服。
「 え 」
「 行きたい 」
『 行こか、降りる準備してぇや 』
「 ん 」
痩せ気味の胸元に浮かぶ助骨に
何度か、同じ言葉を漏らした。
初めて出会った時
何度も、同じ言葉で躓いた。
薄らと浮かぶ傷の上には
新しい記憶だけを刻んで。
楽しければ、笑っていられれば
後悔しないのならそれでいい。
だから、何度も同じことを言ったんだ。
一緒に笑っていたかったから
ずっと、同じ景色を見ていたかったから
だから、行ったんだ。
あの日
授業に出なかった君を追いかけて
また喉元で同じ言葉を躓かせながら言う。
” 生きたいと言え。 ”
・・・
コメント
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てんさい