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***




「立花! 逆だよ、駅こっち」


息を切らす坪井に背後から腕を掴まれ、力強く引き寄せられた胸の中。

まるで身体を埋め込まれるかのように、しっかりと抱きすくめられた。


「……つ、坪井くん、どうして」

「どうしてって……置いてかないでよ、俺、優里ちゃんと話すことなんて何もないってば」

「……ごめん」


嫌な態度であの場を後にしてしまったことは自覚があった。

理由なんてきっと言葉にするまでもないのだけれど。


「八つ当たり……した、と思う。嫌な態度とってごめんね」


しゅんとした声で真衣香が言うと、頭上で、空気が和らいだような気配がして。

その後すぐに小さく笑い声が聞こえた。


「あの程度の八つ当たりじゃ足りないでしょ」

「……え?」


歩道の端っこだけど、もちろん人目がある。

しかし坪井は気にする素振りもなく、ギュッと抱き寄せる腕に力を込めた。


「てか、そもそも八つ当たりってのもおかしいね。お前はもっと怒っていい」


そうして、聞こえてくる声は穏やかで。真衣香の瞳にじわじわと涙が滲み出す。


「どう、して……」

「俺はそれ、全部受け止める責任があるよ。あ、それも違うか。受け止めさせて下さい、お願いします、だよな」


優しい声に、下を向き、見つめ続けていたアスファルトが歪んで……やがてぼやけて見えなくなった。


「優里は……っ、自慢の友達なの……」


わなわなと震える唇から悲鳴のような声。


「うん」


対して坪井は、静かに、そして短く声を返した。


「わ、私なんかが仲良くなれたの、優里がひとりの時に助けるみたいにして近づいたからで」

「でも、優里ちゃんにとってもお前は自慢の友達みたいだよね」


「うう……」と、変に涙を堪えていたせいか、唸るような泣き声が漏れ出てしまう。


綺麗な思い出に、突如、芹那という存在が加算された。坪井を今も凌駕する人物。

過去も未来も脅かされるような、この感覚は何だろうか。


「元を辿れば全部俺が悪いよ。優里ちゃんが青木に罪悪感持ったままだったの俺のせいだろ」


声を喉に引っ掛けながら、苦しそうに坪井が言った。

それもまた、真衣香の胸を抉る。

こんな声を出させたいわけではないのに。

『違うよ』と言いたいけれど、声にならない。


ポタポタと涙が地面に落ちていく。瞬きをすると視界がクリアになって、でもまたすぐに滲んで。


いない歴=年齢。冴えない私にイケメン彼氏ができました

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