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「ん? 美緒は一番大切な、俺の奥さんだよ」
そう言って、健治は私の顎をクイッと持ち上げ、唇にキスを落とす。直ぐには離してくれずに唇を舐め上げ、薄く開いた私の唇の合間に健治の舌が入り込んでくる。逃れようと身じろぎをしても空いてる方の手で抱きしめ拘束されてしまう。
顎を抑えられたまま、動けない。受け入れる事しか出来なくなり、クチュクチュとリップ音が鳴り響く。
やがて、息もままならない状態で、甘やかな刺激を加えられているうちに、理性とは別の生き物が私の中で目を覚ます。
理性は”やめて”と叫んでいても、本能は別の意思を持って、体の奥底に熱い火を灯し始めた。
口の中の上顎を舐められて、甘い息が漏れる。健治に慣らされた体は、いとも容易く熱くなる。
舌を絡められ、根元を刺激され、誘惑に抗えない。
少し強引な激しい口づけに翻弄されて、私の理性は降伏の|烽火《のろし》を上げた。
「ん……んっ……ぁ」
健治のキスで蕩けていく。
ルームウェアの隙間に健治の手が滑り込む。仕事から帰って来てブラも外してしまっていて、今の私は防御力ゼロ。おまけに蕩けて自分の体を支えることもおぼつかない。
「美緒……いいだろう?」
弱った獲物は、肉食獣に食べられるだけ。
下着ごと脱がされ、流し台に体を預けている。自分が料理されて食べられてしまうような。錯覚にも似た感覚が余計に本能を煽りたてる。
「こんな……ところで……」
「そんなことを言って、美緒も感じている……」
見透かしたように私を捕えて、太ももを撫で上げ、足の間に手を伸ばされるとクチャと音が聞こえた。
「な?」
「や……いじわる……」
恥ずかしがる私の反応を健治は楽しんでいる。
「美緒が可愛いから意地悪したくなるんだよ」
そう言って、腰の辺りをサワサワと撫でつけ、上着をたくし上げる。剝き出しされた胸へ健治が唇を寄せて来る。
「健治……」
抵抗ともいえない声を上げると、胸の先端に息が掛かり、口に含まれた。
健治の口腔内の熱が、ダイレクトに伝わって来る。
舌先で転がされたり、甘噛みされたり、たまらなく気持ちいい。
内ももにも柔らな刺激は与えられ続けている。やがて、健治の指先が茂みの奥の割れ目に手が忍び込み、その刺激が私の中の熱を煽りたてた。
「あっ、ぁ、」
本当は話をしたいのに、結局は健治の思い通りに翻弄されて、甘い声を上げているダメな自分。
聞きたいことが、たくさんあるのに実際には口に出来なくて、健治の思い通りにされてしまう。
蜜で濡れた私の中に健治の指がヌルリと入り込み、反射的に体がビクッと跳ねる。
「気持ちいいんだ……。もっと、感じさせてやるよ」
健治の艶を含んだ声が耳に掛る。
濡れた瞳で見つめれば、健治の指先が私の欲望を探り当て、やがて、なぞるように動き始めた。
「んぅ……」
男の人の節のある指が私を刺激をし、弱い部分を責め立てる。
溢れた蜜がクチャリと淫猥な音を立て、お腹の奥に熱が溜まりだす。
「やっ……だめ」
息も絶え絶えに健治に縋っても、許してもらえずに、その場所を攻められ鼻に掛かった声が漏れる。
「だめ……も……むり」
「腰、揺れているよ」
「いじ……わる」
つぷっと、私の中に入り込んだ健治の指を締め付ける。いやらしいほど、ビクビクと反応しているのが自分でもわかる。このまま、昇り詰めてしまいそう。
「まだ、これからだよ」
熱い息がうなじに掛かり、背中に健治の熱を感じた。
キッチンでこんなこと……。
流し台に縋るような状態で、後ろから健治の熱いモノが私の中に徐々に入り込んでくる。
健治は息を詰めながら、ゆっくりと私の中を満たし始めた。
浅い注挿を繰り返し、ゆらゆらと揺らしながら、探るように内側を埋め始めた。粘り気のある水音が私を煽り立て、口からは甘い吐息が漏れ出す。
「ん……ぅん」
やがて、最奥まで健治で埋め尽くされた。
指で追い詰められ、今にもイキそうなところで止められていた私の身体は、自分の中に健治を感じて、満たされている。
こんな場所で、ただの雄と雌に成り下がり、獣のような恰好で貪り合う。
結婚して、愛で満たされていると思っていた頃の、甘く全身が痺れるような愛の営みとは、ほど遠い姿。
今は、愛で満たされるのではなく、欲で満たされているのだと思った。
「美緒、気持ちいい?」
「ん……」
強引に顎を持たれて、唇を奪われる。
唇を塞がれて、口の中も健治の舌で蹂躙されて、いっぱいになった唾液が口の端から漏れ、捕食されているような感覚に溺れる。
大きな手が私の胸のふくらみを揉みしだき、先端をキュッと摘まんだ。
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ピリッと痛みが走り、身体が跳ねる。
「あっっ」
「ふふっ、気持ちイイんだ」
脳からアドレナリンが分泌されて、興奮状態の今は、痛みさえも甘い刺激に変えられてしまう。
「もっと……やさし……くして……」
初めて抱かれた時のように優しく、包み込まれたい。
私だけを好きでいてもらいたい。
こんな場所で体を繋げて欲望だけを満たすような事をしても、心が満たされない。
「美緒……かわいいよ」
耳元で囁き、ゆっくりと首筋へ舌が這う。そして、肩口にチリッと痛みを感じた。
チュッとリップ音が聞こえて、そこに所有痕を付けられた事がわかった。
自分は自由でいたいのに私の事は拘束したがるなんて……。
「いゃ……」
拒絶の言葉は、注挿を繰り返される中。甘さを含んで、強請っているようにしか聞こえない。
「おねが……い、やさ……しく」
「美緒……美緒……」
だんだんと快楽の高みへと追い立てられ、口からは嬌声が漏れる。
体は熱くなり歓喜の声を上げているのに、心が冷えていくような気がした。
「けん……おねがい……」
「くっ……」
健治の欲望が私の中に吐き出され、熱い息が首筋にかかる。
「美緒、愛しているよ」
甘い声が聞こえる。
首筋に軽くキスを落とされ、私の中に納まっていたモノが引き抜かれると、一抹の寂しさを感じた。
そして、中から残滓がトロリと内ももを伝う。
「あっ、健治……」
「ごめん、美緒がかわいかったから抑えきれなかった。中に出しちゃったけど、そろそろ子供もいいだろう?」
健治の言葉に心がざわつく。
「お風呂、入ろうな」
健治が、脱ぎ散らかした服を拾い、私の肩にフワリとかけ、手を差し出だされた。
だけど、その手を取る気持ちになれず、俯いたままでいると、気遣うように覗き込こまれる。
「大丈夫か?」
「こども……」
「ん?」
「子供が欲しいなら浮気はダメだよ……」
ここまで言うと言葉に詰まり、上手くしゃべれない気持ちの代わりにハラハラと涙がこぼれた。
そんな私を健治の腕が優しく包み込む。
「避妊しなかったの悪かったよ。ごめん、泣くなよ。美緒、愛しているよ」
健治は返事にならない返事を囁いた後、泣きじゃくる私の背中を子供をあやすかのように擦り慰めた。
優しくされるとわからなくなる。
健治が一番好きなのは、私だと信じたくなってしまう。体を繋げることで情も深くなり、その温もりを失いたくないという気持ちになる。
この先を聞くのが怖い。聞いたら終わりになるかも知れない。
”子供がいないうちは、やり直ししやすいかもよ。良く考えなさい”と言った母の言葉を思い出す。
健治に抱きしめられて、温もりに包まれていると、失う事が怖くてこれ以上踏み出せずない。
今は、ただ力なく、立ちすくむだけだった。