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※注意※
本作品は非公式の二次創作です。
原作・公式関係者様とは一切関係ありません。
作品内には独自解釈、捏造設定のほか、 一部に暴力表現、精神的に重い描写、暗い表現が含まれます。
苦手な方は閲覧をご遠慮いただき、閲覧は自己責任でお願いいたします。
完結したらタグは削除します。
「何してんの、ほんとに」
JDさんの呆れた声に、僕とトピくんが揃って振り返る。
「見てわかんない?」
「いや、わかんないから聞いてる」
「lean4です」
「それは見ればわかる」
「じゃあいいじゃないですか」
隣でトピくんが堪えきれないみたいに吹き出して、そのまま僕の肩にもたれかかってくる。
少し離れたところではコウくんまで口元を押さえて笑っていて、もうこの時点でまともに取り繕う気は誰にもないらしい。
受注場所の空気は、今日もいつも通りだった。
人が集まって、散って、また誰かが来る。
その合間にしょうもないことをして、誰かがツッコんで、気づけば全員巻き込まれている。
たぶん、端から見たらだいぶくだらない。
でも、そういう時間が案外嫌いじゃなかった。
「いやいや、これちゃんとやるならもっとこう……角度あるでしょ」
「角度?」
「ありますよね?」
「ないと思うけど」
JDさんが真顔で返した瞬間、トピくんがまた声を上げて笑う。
その笑いにつられるみたいに、僕まで吹き出した。
「JDさんもやります?」
「やんない」
「えー」
「えー、じゃないでしょ」
「でもちょっと気になってるよね?」
「気になってない」
「絶対気になってる」
「マーくん、だる」
「ひどくない?」
「自覚あるならいいでしょ」
言いながら、JDさんは結局こっちへ歩いてくる。
だからほら、そういうところなんよ、と思いながら、僕は少しだけ口元を緩めた。
本気で嫌なら、最初から寄ってこない。
それを知ってるから、こっちも遠慮なくふざけられる。
「JDさんもやろうよ」
「やだ」
「トピくん、抑えて」
「任せろ」
「任せないで」
そんなやり取りのすぐ横で、蓮さんが「何これ何これ」と笑いながらこっちを見ていた。
そのさらに向こうでは、音鳴先輩が呆れたような顔をしつつ、でも明らかに面白がっている。
「お前ら、受注場所来てまで何してんねん」
「文化活動です」
「しょうもな」
「会長もやります?」
「やらんわ」
「え、似合いそうなのに」
「なんでやねん」
すぐ返ってきた関西弁に、その場の空気がまたひとつ笑いに揺れる。
こういう時、868は本当に妙にまとまりがいい。
誰かがふざければ誰かが拾って、誰かが呆れれば誰かが笑って、それでいて放っておかれる人がいない。
みんな好き勝手しているように見えて、気づけば同じ輪の中にいる。
それが、僕は結構好きだった。
「あ、いたいた」
ふと視線を上げた先、少し離れた場所に見覚えのある姿を見つけて、思わず声が漏れる。
「トピくん」
「ん?」
「いた」
「……あ」
たぶん、同じものを見つけたんだろう。
トピくんの顔が一気に面白いものを見つけた時のそれに変わる。
「行く?」
「行くしかない」
「何が?」
JDさんの声を背中で聞きながら、僕とトピくんはほぼ同時にそっちへ向かった。
受注場所で顔を合わせるたび、なんとなく恒例みたいになっているやつだ。
本人からしたら、たぶんいい迷惑だと思う。
でも、やめる気は今のところなかった。
「いや、やっぱりいましたね」
「今日も完璧ですね」
そう言いながら、僕はしれっと隣に立って同じ角度に身体を傾ける。
トピくんも逆側からぴたりと並んで、気づけば綺麗に三人並んだ形になっていた。
「何してんの君ら」
「敬意です」
「どこが?」
「最大限の」
「嘘つけ」
そのやり取りに、後ろからまた笑い声が上がる。
もう何人かこっちを見ていて、絶対ろくなことにならない空気だった。
「マーくん、嬉しそう」
「トピくんもでしょ」
「バレた?」
「バレます」
「ほんまお前ら楽しそうやな」
音鳴先輩の声に、僕は肩をすくめる。
「平和でいいじゃないですか」
「それはそう」
「JDさんもやる?」
「だからやらないって」
「やってるところちょっと見たいけどね」
「見たくないでしょ」
「ちょっとだけ」
「ちょっとだけって何」
返しながらも、JDさんが完全にはこの輪の外に行かないのがおかしくて、また笑ってしまう。
たぶん今日も、こんな感じで時間が過ぎていくんだろうと思っていた。
受注を見て、誰かが何かをやって、チンチロでもして、勝った負けたで騒いで。
それで終わる、いつもの夜。
そのくらいにしか思っていなかった。
「で、結局何しに来たんでしたっけ」
何となく流れでふざけ倒したあと、僕がそう言うと、近くにいた蓮さんが「それお前が言う?」みたいな顔でこっちを見た。
「お前らが一番本来の目的見失ってたやろ」
「そんなことないですよ」
「いや、あった」
「JDさん冷た」
「事実でしょ」
「それはそう」
トピくんが即座に頷いて、僕は思わずそっちを振り返る。
「トピくん、味方してよ」
「いやだって、さっきのマーくん完全に遊びだったし」
「トピくんも同罪です」
「ばれた?」
「ばれてます」
そんな会話をしながら、なんとなく人の流れに合わせて受注場所の端へ寄る。
周りには他のギャングやら何やら、見慣れた顔もそうじゃない顔もいて、でもこの辺りの空気は不思議といつも似ていた。
誰かが煙草をふかしていて、誰かが適当な雑談をしていて、誰かが「なんかすんの?」みたいな話をしている。
その中に868が何人か混ざっているだけで、なぜかその場が少しだけ騒がしくなる。
「で、今日どうするん?」
音鳴先輩の声に、近くにいた何人かがそっちを向く。
「他なんか行けそうなのあります?」
「見てへん」
「見てくださいよ」
「嫌や」
「仕事する気あります?」
「あるに決まってるやろ」
「説得力ないなあ」
「お前今誰に言うてんねん」
間髪入れずに返ってきた言葉に、また周りが笑う。
本当に、誰か一人が口を開けば大体こうなる。
そういうところが、868らしいなと思う。
「ジョア、なんか見る?」
ふと蓮さんに声をかけられて、僕は「あー」と曖昧に返しながら受注の一覧に視線を向けた。
「どうしようかなって感じですね」
「珍し」
「いや、別に」
「飛行場、後20分くらい」
飛行場か。最近車でバチバチにやり合ってなかったから今日人数いるしやりたいかも。
「飛行場いいですね」
「誰か見に行きます?」
「久しぶりだ」
「行きたい人いないなら自分いきますよ」
「じゃあ、頼もうかな」
まじか。キター。行くしかない。絶対チンチロ勝ってきてやる。
「マーくん、行けんの?」
「はい??行けますが」
「この前僕とチンチロして5000万負けてたのに」
「はー?それいいますか」
「じゃあトピくん客船取ってくれるんだね?」
なんだこのガキ。
「今日の僕はラッキートピオカですから」
無言でトピくんがdice 3してくるのに対抗して自分もdice 3する。
「3」
「トピくん弱すぎ」
「いや、まだマーくんの見てない」
「目無し」
「いいよー?」
トピくんは3。流石に勝てるわ。いっちょまえに煽っちゃって。後で悔しがってるのが見える。
/dice 3
「はいー4ですー 」
「トピくんの負けー」
「そこは目無しからの一二三やろ 」
「そんなんじゃありませーん」
いつも通りの僕たちのやり取りに少し離れたところから笑い声が聞こえる。
「ラッキートピオカは?」
「いやいや、これ練習だから」
「また適当言ってる」
「ちゃんと勝つから」
「ほんとに勝てるの?」
そんな僕たちにJDさんが呆れたような表情のまま話しかけてくる。
「うわ、そういうのよくないですよ」
「今日客船やるかはトピくんに掛かってるからね」
JDさんのその一言に、周りの視線がじわっと集まる。
「なんでそんな僕見るんですか」
「なんとなく」
「負けるとでも思ってます?」
「さっき負けたじゃん」
「いや、でもわかんないよ?」
JDさんが面白がるみたいに言って、コウくんまで少し困ったように笑った。
「トピくん、こういうのちゃんと勝ってくれそうだし」
「コウくん?」
「流石に勝てるよね?」
「JDさん?」
JDさんもしっかりチョケてますやん。
「あー、ちょっとわかんないかもなー」
「うわ、出た」
「JDさん、今の聞きました?」
「聞いた」
「どう思います?」
「まあ、そういうとこある」
「あるんだ……」
ちょっとだけ意外そうに言いながらも、JDさんからのその返しがなんとなくおもしろくて、変に顔が緩みそうになるのを誤魔化すみたいに僕はしゃがみ込んだ。
「じゃ僕行ってきます」
「お、ありがとうな」
「トピくん、ちゃんと勝ってよ?」
「もちろん」
「トピくんの負ける未来しか見えない」
「JDさん?失礼ですよ」
「でもちょっとわかる」
「コウくんまで??」
そんな軽口を叩き合いながら、堕夜さんに軽く挨拶をし、自分の車に足を向ける。
小さな音を立てて止まるたびに、しょうもないくらい真剣な声が飛んで、笑いが起きて、また誰かが茶々を入れる。
ただただ飛行場も見に行こうとしただけなのに受注そっちのけでチンチロが始まる。これじゃ本当に何しに来たのか分かんなくなる。
でも、そういうのも嫌いじゃない。
「じゃあ、僕ちょっと他の大型どんな感じか見てきますね」
立ち上がりながら無線でそう言うと、何人かがそれぞれの温度で顔を上げた。
「おー」
「気ぃつけてな」
「はーい」
「後で連絡くださいね」
ケイン先輩の落ち着いた声が飛んできて、僕は軽く返す。
「了解です」
「そんな時間かからないと思うんで」
「りょーかい」
トピくんがひらひらと手を振って、コウくんも「いってらっしゃい」と柔らかく笑う。
「マーくん」
JDさんに呼ばれて振り返る。
「運転気をつけて」
それだけ言われて、僕は一瞬だけ目を丸くした。
すぐに、少しだけ笑う。
「うん」
「子どもじゃないから大丈夫だよ」
「そういうこと言う人ほど危ないから」
「信用ないなあ」
「自業自得でしょ」
「ひど」
でも、そのやり取りがなんとなく心地よくて、僕は結局最後まで笑ったままその場を離れた。
背中の向こうでは、まだ誰かが何か言っていて、たぶんまたくだらないことで笑っている。
その音をぼんやり聞きながら車に乗り込んで、エンジンをかける。
ほんの数分、長くても十分かそこら。
適当に見て、戻って、また合流する。
そのくらいのつもりだった。
だからこの時は、特に何も考えていなかった。
ただ、いつも通りに少しだけ一人で動くだけだと思っていた。