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ピーポーピーポーとけたたましく鳴り響く救急車の中、アタシは完全に人格が変わっていた。さっきまでの余裕はどこへやら。波のように押し寄せる激痛に、アタシの理性はとっくに千切れていた。
「あ、あああああ痛ぇ! 痛いんだよクソぉぉ!」
救急隊員さんも白石さんも引き気味の暴言を、全力で叫び散らす。
「み、美咲さん……あ、あの、ゆっくり息吸って!」
「吸えねぇよ! こっちは肺まで圧迫されてんだよ! お兄は!? 」
「陽一さんには連絡済みです! 旦那さんも、きっと……」
「優馬(旦那)ぁぁ! てめぇどこで何してんだコラァ!!」
アタシの怒号とサイレンの音が混ざり合い、救急車は猛スピードで病院へとひた走っていた。
***
一方、美咲の旦那の優馬は地獄にいた。
病院は子供の立ち入り禁止。彼は上の子の翔を実家に預けるために車を走らせたが、不運にも渋滞に捕まっていた。
「翔、じいじとばあばの言うこと聞くんだぞ! ああ、進まない……道が全然進まない……やばい。このまま間に合わなかったら、美咲に殺される……!!」
優馬はハンドルの前でガタガタと震え、渋滞の神に祈り続けていた。