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琳埜
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夜。
静かなベランダ。
街の明かりが遠くでぼんやり光っている。
ローレンは柵にもたれながら、タバコをくわえた。
葛葉は隣でライターを持っている。
「……つけてやるよ」
『は?』
『お前できんの』
「できるわ」
葛葉はライターをカチッと鳴らす。
……つかない。
もう一回。
カチッ。
……つかない。
ローレンは小さく笑う。
『下手すぎ』
「うるせぇ」
もう一回。
カチッ。
一瞬火がつくけどすぐ消える。
「……なんでだよ」
『力入れすぎ』
「は?」
『貸せ』
ローレンは葛葉の手を取る。
「……え」
後ろから手を添える形になる。
ローレンの手が、葛葉の手の上に重なる。
『こう』
『親指、少しだけ滑らせる』
「……こう?」
カチッ。
小さく火がついた。
『そう』
火が揺れる。
タバコの先に近づく。
ローレンが少し顔を寄せる。
静かな夜。
火の光が二人の顔を照らす。
タバコの先が赤く光る。
ローレンはゆっくり煙を吸った。
白い煙が夜に溶けていく。
『……できるじゃん』
葛葉はまだ固まっている。
「……近い」
『何が』
「お前」
ローレンは肩をすくめる。
『教えてやっただけ』
葛葉は少し笑う。
「……優しいじゃん」
『違う』
『見てらんねぇだけ』
葛葉はライターを指で回す。
「……でもさ」
『ん』
「こういうの」
「ちょっと大人っぽくね?」
ローレンは煙を吐く。
夜風がそれを流していく。
『……ガキが言うな』
「は?」
『顔真っ赤』
「赤くねぇし」
ローレンはもう一口吸う。
そしてふっと笑う。
『……ほら』
タバコを持っていない方の手で
葛葉の手首を軽く引く。
『もう一回やってみ』
「え?」
『火』
『今度一人で』
葛葉はライターを構える。
カチッ。
今度はすぐ火がつく。
ローレンは少し目を細めた。
『上手くなったじゃん』
葛葉はニヤッと笑う。
「……だろ」
夜のベランダ。
静かな風。
二人の間に、ゆっくり煙が流れていった。
コメント
1件
めっちゃ良かった…「火をつける」ってただの動作なのに、手の重なり方とか距離感だけでちゃんと2人の関係性が見えるんだよな。ローレンが「顔真っ赤」って言ってるシーン、静かな夜のベランダで煙が流れる余白の使い方がガチで好みだわ。こういう無言の間が取れる作品、作者のセンス感じる🔥