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走っていく2人を、隣で泣いているりんを見て、ひろとはふと最近よく見る夢を思い出す。

そこには微笑ましく会話する3人の姿があって、その輪のなかに俺もいる。

教室の窓から光が差し込み、笑う俺たちを照らす。今日も暑いな。なんて言いながら’いつも’の日常が続いていく。

思いを馳せたひろとの口から溢れる。

ひろと:

こっちが…夢だったら……。



しばらく走り続けたひびきとちはるに、優しく雨が降り注ぐ。日は沈み、あたりは暗くなっていた。

ちはる:

…はぁ…はぁ………


苦しそうに呼吸をしている。


ちはる:

まってください!


ちはるは勢いよくひびきの手を振り解く。


ちはる:

誰なんですか…あの人たち。

どうして逃げるんですか。


ひびき:

…ごめん。

あれは、ちはるの、俺の友達。


ひびきの表情を見たちはるは、それ以上聞きはしなかった。そのまま会話することなく2人は家に帰った。


ー翌日ー

その日は学校の終業式だった。

しかし、そこにちはるとりんの姿はなかった。

終業式を終え、帰路に着こうとしていたひびきにひろとが声をかける。

ひろと:

なあ。 少し…話さないか?


2人は空になった教室に行く。


ひびき:

昨日は…悪かった。


ひろと:

何が?


ひびき:

嘘ついてたこと


ひろと:

お前…いい加減にしろよ! 俺じゃないだろ!

お前が謝るべきなのはりんだろ?

りんは…お前のことを心配して…


ひろとは勢いよくひびきの胸ぐらをつかみ、声を荒げた。その声は廊下にも響くほどのものだった。


ひびきは下を俯いたまま、呆れたように鼻で笑う。[頑張った結果が、これかよ…。俺は、なにを…]

度重なる負の連続、親、友達との衝突でひびきの心は挫けかかっていた。


怒りを堪えてひろとは語る。


ひろと:

俺たちから目をそらそうとするな。

ちゃんと、今のちはると向き合えよ。


ひびきははっと目を見開く。

今のひろとの言葉でひびきは、記憶をなくしたちはる自身を、受け入れられてなかったことに気づいた。


ひびき:

ありがとう…。少し、時間をくれ。


そういうとひびきは急いで家に帰る。

しかし、家にちはるの姿はなかった。両親は仕事に行っていた。


荷物を置き、走ってちはるを探しに行く。

公園、駅、ショッピングモール、至る所を探し尽くしたころには日が暮れていた。


ひびきの鼓動はますます強く、早く波打つ。

ひびき:

昨日のことで…家を出ていったのか…?

いや、もっと前から…。


ひびきはふと自分の言動を思い出す。

食べ方が前と違うと言ってしまったこと。

敬語ではなく前のようにタメ口で話して欲しいと言ってしまったこと。

数え出すと、自分がいかに今のちはると向き合えていなかったのか自覚した。


膨れ上がる不安と心苦しさを胸に、探し続けること約6時間。あたりはすっかり暗くなり、静かな街の通りに蝉の声が響いていた。

家に戻ればいるかもしれない。いや、きっとそうに違いない。そう思い込んでひびきは帰路に着く。


疲れにより意識が朦朧としてきた中、ふと、あたりを見回したひびきは頭が真っ白になった。

ひびき:

ここは…どこ…だ。

知らない街まで…来たのか。


力が抜けるようにひびきは倒れてしまった。



………ッ…………ピッ…………ピッ………

ひびきが目を覚ました。そこは、ひびきの学校近くにある病院の一室だった。

ベットの隣でひびきの母と父が悲しそうな顔でひびきをみつめていた。


ひびきの母:

気分はどう?痛いところはない?

ひびき:

ちょっと疲れただけ。大丈夫だよ。

それより、ちはるは…?

ひびきの母:

ちはるちゃんなら家にいるわよ。昨日は体調を崩しちゃって、病院に連れていってたのよ。

ちょうどあなたが帰ってくる頃かしら。ごめんなさい。すれ違っちゃったわね。いつもの駄菓子屋さん近くで倒れていたのを、近くの人が見つけれくれたそうよ。


ひびきは母と父の様子をみて、何かがおかしいと感じた。なぜ、両親はこんなに悲しい顔をしているのか。自分の体はこんなに管に繋がれるほど危ない状態なのか…。


ひびきの父:

今日は安静にしていなさい。明日には退院できるそうだ。父さんは仕事があるから、また夜にくるな。

ひびきの母:

なにか飲み物買ってくるわね。


そう言って2人は病院の部屋をでた。

しかし、廊下で2人が何か話しているのが聞こえた。

………わよ。やっぱり……ことは嘘…たのよ。

………そんなわ…だろ……たしかに…だったんだ。


はっきりとは聞こえないが、自分の話をしていることはわかった。

そしてもう一つ。確かに母は駄菓子屋さんと言っていた。ひびきが知っている駄菓子屋は一つしかない。いつも学校に行くときに通る道沿いの店だ。

しかし、その道を考えようとしたがはっきりとは思い出せない。だが、昨日いた道がいつもの通学路のようには思えなかった。



ー3時間前ー

医者:

ひびきさんのご両親ですね?

どうぞお座りください。


医者の顔は険悪だった。


医者:

落ち着いて聞いてください。

ひびきさんのMRIを撮らせていただいた結果、脳に黒い影のようなものが発見されました。

おそらくひびきさんは…若年生アルツハイマーだと思われます。


ひびきの母:

じゃくね…ん。 それって、もっと高齢の方が発症するものなんじゃ…

あの子は、ただ疲れて倒れただけじゃないですか……


医者:

多くのケースはご年配の方に見られますが、稀に若い方で発症される方もいらっしゃいます。

症状としては、まず自分がいる場所、道などがわからなくなり、迷子になるケースが多いです。

そして近い記憶からどんどん忘れていき、人の名前もわからなくなります。

最後には自分で食事やトイレにも行けなくなり、寝たきりになるでしょう…。


ひびきの父:

そんな…

原因はなんなんですか?直す方法はあるんですよね?


医者:

なんせ謎が多い病ですのではっきりとは申し上げにくいのですが、おそらく過度のストレスなどが原因でしょう。

そして、有効な治療法も確立していないので、薬で進行を抑制することが精一杯です。


母も父も、あまりにも残酷な現実に唖然としていた。いつかは自分のことも忘れてしまう。そう考えると、母は泣き崩れてしまった。


普通の高校生は夏休みに入る中、物語は新しい幕を開ける。


積もった記憶が流れ落ちていく。


この時からでしょうか。

私(ちはる)が、彼(ひびき)が、

変わっていったのは。


次回 [夏休み]

























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