渡辺にベッドを譲って、岩本はソファで寝ることにした。大きな体を窮屈に曲げて、目を瞑るが、一向に睡魔が訪れない。
悶々としていたら、夜中、渡辺が水を飲みに起きて来た。
岩本は寝るのを諦めて、深夜にやっている古い映画を見るともなしに見ていたところだ。
キッチンにいる渡辺に声を掛ける。
💛眠れない?
💙うん、枕が替わるとなかなか…
💛案外繊細なんだな
💙案外ってなんだよ
💛いや
渡辺は適当なコップに水を汲み、岩本の隣りに座った。ソファの上で体育座りをしている。
いちいち渡辺の仕草が可愛らしくて、岩本は見ているのが苦しかった。
またそれを本人がまったく自覚していないことが恐ろしい。
暗い部屋にテレビだけがついている。
部屋が暗いのと、渡辺が近いのとで、岩本は体がむずむずしてきた。
悟られないように少し距離を取って座り直した。
💙ごめん、迷惑かけて
急にしおらしくなった渡辺に、岩本は胸の鼓動が高まった。
💛どうしたの?急に
💙俺って我儘だなあって思ってさ
💛いまさら(笑)
そこがみんな好きなのに、と思う。
岩本はもちろん、きっと宮舘もそうだ。
💙勢いで涼太と一緒に暮らし始めたけどさ
💛…うん
💙俺でよかったのかな?って思うよ、よく
💛……
💙涼太だってさ、阿部みたいに優しいやつの方が本当は楽だろ
💛そんなこと言うな
岩本の心の声が、思わず口をついて出てしまった。
渡辺が驚いて岩本を見た。
💛翔太は自分のことが全然わかってない
💙照?
💛さっき、翔太のことを好きなメンバーがいるかって話したよな
💙あれは、冗談で、
岩本は渡辺の手首を掴んだ。
💛俺だよ
💙…は?
💛それは、俺なの
💙はっ、バカ言うな
岩本は渡辺の腕を引き、自分の方へと向けた。
💛悪いけど、本当だから
💙…!!
そしてそのまま、強引に渡辺と唇を重ねた。
どんっ。
💙や…めろっ!
💛のこのこ家まで来たのは翔太の方だよ
💙………
💛もう帰れば?
💙言われなくても、朝が来たら帰る
岩本は渡辺にもわかるように、大きくため息を吐いた。
💛翔太
💙なんだよ
💛もう部屋に戻れ
💙……照
渡辺は心配げに岩本の顔を覗き込んだ。
岩本は顔を見られないように、横を向いた。
💛なに?
💙俺たち、友達だよな?
💛朝になったら、友達だ。戻れ
渡辺はそれでもなお岩本を長いこと眺めていたが、やがて諦めたように立ち上がった。
💙おやすみ
💛おやすみ
渡辺の姿が見えなくなってから、岩本は泣いた。
翌朝。
岩本が目を覚ますと、渡辺はもういなくなっていて、テーブルにメモが置いてあった。
『お邪魔しました、また仕事場で』
こうして、岩本と渡辺の特別な夜は終わった。