テラーノベル
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40
無名kちゃん
49
#降谷零
#風見裕也
風見は自分の元へ来た降谷に首を振る。
スミスが跡形もなく消えて4日。
出国の形跡もないし。ママの別荘や別宅などありとあらゆる場所を水面下で探った。
行く場所もないだろうに、それに靴をはかないなんてあり得るか?まさか…
「まさかな…」と呟く降谷をよそに室内の明かりが消え、スライドショーが始まる。
映るのはドイツの首相、外務大臣。
「1週間後にドイツの首相夫婦と、外務事務次官であるーーエデルガルト・ハインツ氏が大使館を訪問します」
真っ青なスーツを着て手を振る女性。柔らかそうなブロンドをなびかせ、同じ色の瞳……。
降谷は素直に言った。「…美人だな」風見がすぐ目だけ動かし、立ち上がる。
「ハインツ氏は、ミス・ヤグルマギクと本国では呼ばれていますーー青い花で、彼女は好んで青いスーツを着ることからその名がついたようです…」
ぺら、と書類はめくられる。「この花はーー」
「皇帝の花の象徴」
後ろから聞こえた声に、皆は振り向く。
「スミスーー!」
壁によりかかり、立ったまま。彼女は「続けて」と呟く。
ざわざわした室内で、立ち上がろうとした降谷の手首を引く風見。首を振られ、意味不明といった顔をしてみせる。
「彼女が行方知れずの間、何をしていたか…」ちらちらとまわりを見る風見。さらに声が小さくなる。「疑う捜査官もいるんですーー」「…それは」降谷も目だけでスミスを見る。いつもどおり態度がでかい。
風見は咳払いする。「ドイツは日本の震災後に起きた、原発事故を深刻に受けとめーー国内全ての原子炉を即廃止。国連でも高い評価を受けています」
他の捜査官が立ち上がる。
「ですが、原子炉は廃止しただけでその後の用途は……」
「まあ、核の素だからな」と降谷。「放棄させろと?」「そんなのは無謀だろ……」「持ってない国なんかない…」
「騒ぐな」降谷は立ち上がる。
「今回は事務次官だけ迎賓館でパーティーがあるが、目的はたったひとつ」
す、と指を立てる。
「廃止した原子炉の【使い道】を突き止めることだ。使わないならなぜ残してる?使うなら……」と声を小さくする降谷。風見が持っているリモコンを変えた。
風見も立ち上がる。「現在、ロシアとバルト3国……エストニア、ラトビア、リトアニア!3国は領土問題で緊張状態が続いておりーー」
「いつ核戦争が起きてもおかしくない」
「なぜロシアの領土問題が?」という捜査官に、そのとおり。と言わんばかりにパチ、と指を鳴らす降谷。
「ハインツ氏はロシア王室の遠い親戚にあたるんだよ」
ふぅん、というスミスの声がした。
「ドイツがロシアに加勢するのは目に見えてるーー今回の訪問はなにか、日本に協力を要請される可能性が高い!もしくは…」
「有無を言わず…」スミスは小さく呟いた。
電気がつくと、降谷と風見はスミスに駆け寄る。
「おいーー」はあっ、と降谷は安心して息をついた。「今までどこにいたんだ」途方に暮れたような声が出る。
スミスは後ろに立つ風見をちら、とみてから顎を上げた。「違う男のところ」
「「はあ?」」
2人の男は互いに顔を合わせてそらす。
「おいふざけるな」降谷はさらに詰め寄る。スミスの首に、何か青いものが見えて「スミスーー」すっ、と手を伸ばした瞬間だった。
ぱんっ…!
手を叩き落とされ、降谷は素直に驚いて言葉を失う。
「っさわらないで……!」スミスは首を押さえた。
「スミスーー」
「…ごめんなさい……」スミスはどんどんうつむく。はら、と髪がひと房落ちる。
「今は…………」
走っていくスミスを、驚きのあまり追いかけられずに降谷はくるりと風見を見た。
「えっ」じり、と寄ってくる降谷に風見は後ずさる。「わっ!?」ぐわ、と手が伸びて首を掴まれた。「なーー」「これじゃ逆だな…」
降谷は後ろにまわり、首を掴んでいる。
「な、やめてください…うわあっ!?」
ぐ、と前に押されお辞儀した状態になる。ぱし、と手首を掴まれ後ろに引っ張られた。「いたた!痛い!なんですか降谷さんっ…!」
「ごめん」ぱっ、と手を離され、風見はネクタイを直す。「乱暴ばっかり」「スミスの首」「え?」「今、風見にやったのと同じ跡がついて…手首にも……それにシャツ」す、と自身のシャツを指差す。「ボタンの合わせが確かに女性服と逆だ」
風見は素直に尋ねた。「つまり…?」
屋上に立ち尽くすスミスの碧い髪が横殴りに揺れている。風が強い。
「あまり警視庁に軽々しく来るなよ」
少し遠くから話しかける。
「君は所轄の連中に見られたらまずいんだーー」
「ねぇ」肩越しにスミスは笑う。久しぶりのあの笑みに、降谷は安堵するのがわかる。
「家にいてくれ、って言えば…?」
ふふ…と彼女が片方の肩をすくめて腕をさする。
「強がっーー」
振り向いた瞬間、スミスは抱き締められる。「あぁ…」降谷は思いきりその頭に顔を埋めた。
「もう…会えないかと思った……」
ぐ、と痛いほどこもる力に、スミスは単純に黙っていた。
スミスは嬉しいのか悲しいのかわからず、ただ、同じようにする。
「ふーー」降谷さん、と言おうとして風見はやめて、ドアに隠れた。
「すごく抱きたい…」
思わず風見は赤くなりぎくっとし、静かに階段を降りて戻った。
「…零」ふふ。とスミスと額を合わせて笑いあう。「わたしも…」
しばらくそうしたあと、スミスは胸元に戻った。
「げほっ」風見は戻ってきた2人に食べていたパンを詰まらせる。さすがにヘリポートで何もしてないだろうが、抱き合っているのを見た後で素直に動揺した。
「あ、そうだ」スミスは思い出したように風見の持つパンを上から取り上げる。
「おいっ」
スミスはもしゃもしゃ食べてから、それを苦い顔で見て、ポイと返す。というか投げる。
「だめだな…加工品は……」す、と腹に手をやるスミス。「食べてないのか?」何も?と降谷は風見をちらと見る。
あんな変な格好で指の跡があるなんて、監禁でもされたのか?と話していたばかりだった。
だが、誰に?
彼女が日本に引き渡されたのを知るのは……
「わたしは30日何も飲まず食わずでもなんとかなる。ところで」スミスは風見の右側にある書類を取るために左腕を伸ばす。近くにきた彼女のからだに、久しぶりに顔をそらした。
「この女」前髪がひと房垂れる。外務事務次官の写真。
「…いつもいるな?首相がいる席に」
「ん」ぐ、と風見は大きく背もたれに寄りかかりスミスと距離をとった。
「まぁ」と降谷はいろんなところを見る。「【公式】の不倫相手だからな」
はっ!とスミスは明らかに呆れたようすで書類をばらまく。
「つまり…ドイツの首相はバカってことだな」
スミスは腕を組み頷いた。「だからこの」とハインツ氏を顎でやる。「この女が実質、政権を握ってるんだろうな」
よくわからない。という表情をする風見に、勢いよくテーブルに座り顔を出すスミス。
「いいか」
「うっ…」風見はなぜかのけぞる。
スミスはそのまま足をテーブルに横向きにあげ、髪を後ろになびかせた。
「いつの時代も、大統領の妻はモンローじゃないんだよ…」
「はあ?」
よっ。とスミスは立ち上がり、書類を拾う。
「風見はもし」と降谷は明るすぎて見えないスライドショーに近づいていく。
「俺が、お前の女の浮気相手で。お前の仕事行く先々ついてったら?」
風見は辺りを見回して言った。
「殺します」
後ろにいるたくさんの捜査官が大きく頷いた。味方は多い。
「でもしない?なんでだ?」降谷は肩をすくめ、青い瞳で笑うハインツ氏を見る。
「…利用価値があるから……?」
なるほど。と素直にまた頷く捜査官に風見は(おい!)と振り向いて口パクする。
「厄介ね」
彼女、とスミスは降谷を見る。「したたかで…自分の価値をわかってる。首相の妻は政治とかなにもわからないでお家でパイでも焼いてるのね。絵に描いたような幸せな男ってわけ」肩をすくめ、スミスは続ける。
「だから…奥様は何も言えないわね…」
「ハインツが助言してるのを知ってるからか…」
「彼女が何を企んでいるか。首相より重要かもよ?」
うーん。と降谷は素直に天井を見た。
「簡単に原子炉の行方を話す相手じゃない…」
ちなみに、とスミスは辺りを見回す。
「当日の迎賓館での【催し】はなんなの?」
風見は書類をまいて、1枚をとる。
「食事と日本舞踊と…」
「だめだめ」スミスはその1枚を放り投げた。「そんなつまらないもの見せたら」首を振る。「だが、外務事務次官だぞ。表向きは仲良く外交するんだから」風見は手を出して、はあ?という仕草。「それじゃナメられるのよーー」
スミスは顎を引いた。
「あと。当日の外交官はドイツ語のやつじゃだめよ。ロシア語のやつを用意するのね…」
ざわつく室内。「な、彼女はーー」「そう…」スミスも振り向く。
「彼女の武器は【血】なのよ。ロシアのルーツなら…その大国の、王家のプライドが必ずあるわ」
「ならどうやって首ねっこを?」という捜査官に、スミスはすっと首筋を手で隠す。
降谷は見ないふりをした。
「うん」と降谷は顎に手をやり頷いた。
「少し…ぎくっとさせるか。風見」
と言われ「えっ!わたしロシア語無理ですよ!」と首を振る。「言っておきますが、ドイツ語もロシア語も言語ではかなり習得が難しいんですよ!」
ピアノを思いだし、冗談じゃない。と思う。
「スミスもだ。やってくれるな」
「は?」きょとんとするスミスに、降谷は片膝をつきーー胸元からボールペンを出した。
「外交官には僕が成り済まして潜入する。日常会話程度ならロシア語はなんとかなるからな…」
スミスはボールペンを引き抜く。
「ドイツ語はわたし」
す、とスミスは風見にボールペンを差し出す。たったっ、と走っていき、スミスは風見の胸元に飛び込んだ。勢いに「うわっ!」と後ずさる。
する、と片足をあげるスミス。そのままボールペンを胸元にいれた。
「あなたは…」と胸元に指が一本ずつあがってきて、スミスは風見を碧い目だけで見上げた。
コメント
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うわああ第21話もめっちゃ熱かった…!!🔥 スミスが戻ってきて安心したのも束の間、首の跡とか「違う男のところ」発言とか風見くんパニックになりすぎてて笑ったけど、同時にゾクゾクしたよ…😭💕 降谷さんがヘリポートで抱きしめるシーン、ガチで胸がギュッてなった。「すごく抱きたい」ってまじかよ…! しかもスミスがまさかのロシア語通訳やるって流れもカッコよすぎるし、ハインツの怪しさも気になる〜!次回も絶対読む!!📖✨