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BL・腐向け作品です
「じゃあ、今日折角来てもらったし…会議もしておこうか。」
険悪な空気を和らげるように、蘭が声を上げた。
周囲に反対する者はおらず、そのまま打ち合わせが始まった。
内容は主にメンバーの情報共有。
奈津がなぜ自分が配属されたのか、前マネージャーが辞めた理由については、特に触れられなかった。
打ち合わせが終わり、他のメンバーとマネージャーたちは先に部屋を出ていった。
気づけば、楽屋には俺と彼だけが残っていた。
静かな空気。息をするのも躊躇うほど、張りつめている。
「……で?新人。」
「えっ……?」思わず声が震えた。
「何ぼーっとしてんの。帰んないの?」
不意にかけられた声に、背筋がピンと伸びる。
「す、すみません。まだ信じられなくて……俺が、貴方のマネージャーだなんて」
「…んなもん、すぐ慣れる。それより…明日のスケジュールでも確認しといた方がいいんじゃねぇか?」
視線を上げると、猗流舞の瞳が俺を射抜く。
近すぎる距離に、思わず息を詰めた。
呼吸が重なり、睫毛の影がくっきりと見える。
俺を見つめるその瞳は、先程と変わらない鋭さだった
なのに、一瞬だけ、ほんのわずかに柔らかい光が差し込んだ気がした。
猗流舞は軽く肩をすくめると、わずかに口元をゆがめて言った。
「……俺に振り回されても、泣くなよ。」
挑発とも冗談ともつかない声色。
けれど、その奥にほんの一瞬だけ、どこか遠いものが滲んだ気がした。
返す言葉が見つからず、俺はただ立ち尽くす。
扉の向こうに消えていく背中が、少しだけ寂しそうに見えたのは——気のせい、だろうか。
ドアが閉まる音がやけに静かに響いた。
残された空間には、彼の香水の匂いと体温の残り香だけが漂っている。
「……振り回されても、泣くなよ……か」
自嘲するように呟いてみても、胸の奥がずっとざわついていた。
あの目。冷たく突き放すようで、どこか寂しそうだった。
寂しいなんて言葉、似合わないのに。
なぜか、ほんの一瞬だけ“孤独”が見えた気がして、目が離せなかった。
新人の俺なんかが、彼に何をしてやれるんだろう。
でも――もし、誰も本当の彼を知らないのなら。
俺だけは、知りたいと思ってしまった。
そう思った時にはもう、
彼の背中が、頭から離れなくなっていた。