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#シリアス
臣桜
82
(近い…!近すぎる!ただでさえ体調悪いのに、緊張でどうにかなりそう……)
沈黙が続くのが怖くて、必死に次の話題を探そうとした、そのときだった。
視界が不意にぐにゃりと歪み、強烈な目眩が僕を襲った。
足元がぐらりと揺れ、地面が消えたような感覚に陥る。
「っと……危ないっ!」
「あ……」
倒れそうになった僕の身体を、すかさず怜治さんが長い腕を伸ばしてガシッと抱きとめてくれた。
彼の広い胸の中にすっぽりと収まるような形になり
強くて、どこか落ち着く花の香りが鼻腔をくすぐる。
「っ、あ…ごめんなさい…急に、目眩がして…っ」
「大丈夫?…すごく顔色が悪いよ。唇の色も白い」
怜治さんの声に、明らかな焦りと心配の色が混ざる。
「すっ、すみません……」
「これ、この前言ってたヒートの兆候……?かなり近いんだね」
「は、はい……。だから、今日は薬を多めに買いに行ってたんですけど…最近、なんだか身体が不安定で……」
申し訳なさから俯く僕の耳に、怜治さんから思いがけない提案が届いた。
「ねえ、さっちゃん。……もし良かったら、次からは俺が車で迎えに行くよ?」
「え……?む、迎えに……ですか?」
「だって、そんなに不安定な体調なのに、一人で重いものを持って歩くなんて危険だよ」
怜治さんは荷物を持っていない方の手で
ごく自然にポケットからスマホを取り出すと、画面に連絡先のQRコードを表示させた。
「……連絡先、交換してもいいかな?」
「え、でも…そんなの、怜治さんのプライベートの時間を奪っちゃうし、迷惑じゃないですか……?」
戸惑いながらも、胸の奥の歓喜と緊張で心臓が破裂しそうになる。
「迷惑なんて、これっぽっちも思わないよ。俺で良ければ、いくらでもさっちゃんの力になりたいし」
「だから、何かあったらいつでも俺を頼ってほしいな」
夕日に照らされながら
信じられないほど優しい笑みを浮かべるその姿は
まるで僕のためだけに現れてくれた王子様のようだった。
「本当に…いいんですか……?」
「もちろん。それに……俺、さっちゃんとはお店の『店員と客』以上に、もっと仲良くなりたいなって思ってたから」
「え……?」
「この前も言った通り、さっちゃんは放っておけないんだよ。何か大きなトラブルがあってからじゃ遅いからね。大人として、もっと俺を頼ってほしい」
「あ…ありがとうございます……っ」
胸の奥から熱いものが込み上げてきて、目の奥がじわりと熱くなった。
こんなにも優しくて、頼りがいのある大人が
自分の目の前に現れてくれるなんて思ってもみなかった。
「それじゃあ、連絡先入れるね」
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