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リビングに置いてある、一冊の漫画。
誰のだろう、と手に取ってみる。お母さんか彰人だと思う。けどなんか女の子が二人表紙にいる。じゃあ違いそうだ。あいつの、いやいや、じゃあ誰の。
彰人、高校生男子だけど、まさかこんな漫画見るとは思えないし。お母さんも見るわけないから除外。
──もしかして、あいつがこんな趣味あるの……?
あいつの趣味、それなら見たくないけど、でも好奇心っていうやつだ。これを機に好くことはあり得ないけど、取り敢えず見下す様のネタとして読もう。この作者は何一つ悪くない。ただあいつが読んでるとなると、少し評価を下げてしまいそうだ。
舞台は女子校。もう無理だ、父親が隠れてこんなのを読んでるとなると、どんな目で見ればいいんだ。それもリビングに堂々と置いておかないでほしい。これを見られたら、と考えなかったのだろうか。何故か虚しさが込み上げてきた。
知りたくないものを知ってしまった気分だ。パラパラと流し読みをしておく。女の子はやけに照れ顔をしていし、距離が近い気がする。まあ女の子が出てくる漫画はこんなものだろ──
何故かキスをしていたので、私は急いで閉じて、机に叩きつける。
「絵名、どうかしたか?」
「なんでもないッ!」
彰人がお風呂から出てたみたいだ。タイミングが悪い。
いやしかし、何故こんな漫画がリビングに置いてあるのだ。普通細心の注意を払うべきだろう。堂々と一巻、いやよく見ると床に二巻、三巻置いてあるし。包装紙もついていない。買ってすぐに読んで部屋に置くのを忘れたのか。あいつがどの頻度でリビングに来るのかは全く把握してないか、一番可能性があるのは確か。
続きが気になった訳ではない。どんな流れでそうなったのか、少し興味が湧いたのだ。彰人もお茶を飲んで、自分の部屋に戻っていったし、暇つぶしにちょっとくらい読んでもいいだろう。
あと、あくまで参考にする為だ。もしかしたら今後漫画風のMVを作ることになるかもしれない。その時にどのようなコマ割りで描けばいいのか参考になる。
そもそも恋愛漫画を読む人間ではないのだ。少しむず痒い。でも、読めてしまう。女子校舞台の純愛物語。スカーフを上級生から下級生に送る制度があり、その設定を中心に物語が繰り広げられている。
別に気に入ったわけでもないし、趣味を理解する気もないのだが、何となく、気まぐれで、私は二巻に手を伸ばしていた。
──読み終わったら、お母さんに相談しよう。