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「相変わらず初々しいね。可愛いよ」

玲伊さんは髪にキスを落とすと、さっとわたしの手を掴んでバスルームに向かった。


***


バスルームに入ると、まず、洗面所の鏡の前に座るように言われた。

「ちゃんと毎日、ブラッシングしてた?」


鏡のなかの玲伊さんがそう尋ねてくる。

なんだかこの感じ、とても懐かしい気がする。


「うん、玲伊さんに言われたとおり、朝晩とシャンプーの前に」

彼はブラシを手に取り、毛先からやさしくブラッシングを始めた。


「本当だな」

「わかるの?」

「ああ、ちゃんと手をかけているかいないか、手触りですぐわかる」

「さすがはカリスマ美容師」

「こら、ちゃかすな。よし、じゃあ立って」


立ちあがると、彼はわたしの前に来て、ブラウスのボタンを外しはじめる。


「じ、自分でできるから」

慌ててそう言うと、彼は軽くキスして声を落として囁く。


「俺にやらせてよ」


困るのは、そのすべてが鏡に映っていることだ。

恥ずかしさから身を隠そうと玲伊さんに抱きつくと、鏡の方にくるっと向きを変えられてしまった。


後ろから服を乱してゆく玲伊さんの姿があまりにも煽情的で、思わず顔を逸らすと、すぐ顎を掴まれて、正面を向かせられる。


「ちゃんと見てて。俺に可愛がられているときの優紀がどんな顔してるのか」

「そんなの……無理」


そう言いながらも、目を閉じることができなかった。


鏡に映る玲伊さんが、あまりにもエロティックで、あまりにも美しすぎて。



あっという間にすべてのボタンが外され、露わになったブラジャーのホックを難なく外され、彼の両手がわたしの胸を包みこみ、揉みしだきながら首筋に唇を這わせてくる。


「やだ……恥ずかしいよ……ねえ、玲伊さん」

「だから……それは逆効果。煽ってるだけだって」

「そんなこと……言われても」


もう一度、彼の方を向かされて、深く唇を奪われる。

指で胸の先の敏感なところに触れながら。


「あ、あっ……ん」


「やばいな。このまま押し倒しちゃいそうだ。まだ施術してないのに」

「だめ。こんなとこじゃ」


「じゃあ、どこならいいの?」

「もう」


玲伊さんは片方だけ口角を上げ、バスタオルを取って、わたしを包みこんだ。


浴室に入ったあとは、ちゃんと当初の目的を思い出してくれて、洗い場でシャンプーとトリートメントをしてくれた。


「どう? 気持ちいい?」

「うん……最高に気持ちいい」


彼のシャンプーは本当に気持ちがいい。

力加減が絶妙だし、洗いあがると頭皮まで生まれ変わったようにすっきりする。


「まあ、愛情をたっぷり込めてるからね、優紀にシャンプーするときは」

「いつもと違うの?」

「当たり前。仕事のときは、こんなに毎回丁寧にはできないよ」


そんなふうに、自分だけ特別って言ってもらえるのは、やっぱり嬉しい。


そういえば、彼にシャンプーをしてもらうのは、はじめて愛を交わした日以来。

ふと、あの日の記憶がよみがえり、また顔が火照ってくる。


「ヘッドマッサージはバスタブのなかでしようか」


大きなジェットバスなので、二人ではいっても悠々と脚を伸ばすことができる。

そして、今、わたしのヘッドレストは玲伊さん。


彼に身を預けてされる頭皮マッサージは、至福を超えて、そのまま昇天してしまいそうになるほどの心地がする。


「優紀……」

言葉をかけられ、上を向くと、彼の唇が降りてきた。

「施術のお礼、してくれる?」

「うん……」


玲伊さんはわたしを自分の膝の上にのせて、目を閉じる。

わたしは彼の首に腕を回して、自分から口づけた。


「俺がいつもしてるように、してみて」

唇を合わせたまま、玲伊さんは言葉をこぼす。


ちょっとためらいながらも、わたしは彼の開いた唇にそっと舌を差し入れる。


でもそれ以上はとてもできなくて、入り口で舌を遊ばせていたら、逆に彼の舌にからめとられてしまった。


「れぃ……あァ……」

ぞくっとした刺激が背筋を走り抜け、わたしは彼にしがみつく。


ひとしきり口腔を弄ったあと、彼の唇はわたしの首筋から耳を彷徨し始める。

そして、さっきまでわたしの頭を優しくマッサージしていた指先は、変わらぬ執拗なほどの丁寧さで、胸の尖端や脚の狭間を同時に弄りだした。


「や、やぁ……あ、あん、い……や」



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