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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第14話 〚届かない沈黙〛(海翔視点)
教室を出ていく、
白石湊の背中を見ていた。
さっきまで、
澪たちは笑っていた。
明らかに、
楽しそうだった。
それなのに——
俺が声をかけた瞬間、
湊は黙った。
頷いて、
逃げるみたいに去っていった。
(……俺か)
理由を探す。
威圧した?
距離が近すぎた?
それとも——
「信用、されてない?」
小さく呟いて、
自分で首を振る。
そんなこと、
今まで気にしたことはなかった。
澪の前に立つ時、
迷ったことはない。
守る。
それだけだった。
でも、
“過去を知っている人間”が現れた。
澪が笑って、
心臓も静かで。
その輪の中に、
俺はいなかった。
(……俺は、外か)
廊下を歩きながら、
無意識に拳を握る。
奪われる感覚じゃない。
敵意でもない。
ただ、
自分の立ち位置が、
分からなくなる。
「……いや」
足を止める。
信用されてない、
なんて決めつけは違う。
澪は、
俺を避けていない。
むしろ、
前よりも自然だ。
(なら、問題は俺じゃない)
湊は、
慎重なだけ。
過去を知っているからこそ、
簡単に今を壊さない。
それなら——
俺がやることは、
一つしかない。
無理に入らない。
試さない。
踏み込まない。
(壁でいい)
澪が笑っていられる距離を、
崩さなければ。
教室に戻ると、
澪がこちらを見て、
小さく会釈した。
それだけで、
胸の奥が落ち着く。
(……大丈夫)
信用は、
奪うものじゃない。
待つものだ。
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