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緑谷出久これは僕の名前だ
ヒーローに憧れていた。
ずっとずっと
小さい頃から
一番好きなヒーローはオールマイト
強くて笑顔がまぶしくてカッコいい。
いつか僕もオールマイトみたいなヒーローになるんだ!
そう思っていた。
そして突きつけられた”現実”は
夢ではなく悪夢の始まりだった。
全てが悪夢、あきらめたくないと
目をそらして抗い続けてきた。
幼なじみは強くてヒーローぴったりの個性を持っていて
僕の憧れだった。
でもその幼なじみからの当たりは強く会うたび暴言に暴力
どうして・・・
僕が何したって言うんだ・・・
怖い、痛い、苦しい。
ヒーローの登竜門として有名な雄英高校ヒーロー科への進学を目指していた。
無個性でもヒーローになれるって信じて。
「限界だよ」
雨の日、幼なじみとその取り巻きに追いかけ回され路地裏で殴られ蹴られ
ぼろぼろになりヒーローのノートも燃やされ投げられ水たまりに浸かっていた。
僕はヒーローになれない
誰も慣れるなんて思ってない
お母さんさえも
誰一人。
雨はただでさえ惨めな僕をさらに惨めにさせた。
意識がもうろうとする
今まで溜まりに溜まったストレスがドッと押し寄せてくるような感覚
このまま死ねたら楽なのかな。
体に力が入らずそのまま崩れ落ち踞る。
「あは・・・死んでもいいかな・・・。」
視界は暗く閉ざされて行った。
雨の中一人フードを被り歩く男が一人居た
男の名前は死柄木弔。
あーやだやだ・・・
人ごみが嫌いで全て消し去りたい気分になる
ふと路地裏から血の臭いがした
男は血の臭いに敏感だった。
何か有るなぁ
そんな気持ちでふらりと臭いの先に歩いた
踞るガキが一人
雨の中小さく聞こえた声を聞き逃さなかった
そのままガキは意識を失った
口の端がつり上がり
倒れていたガキを担いでBARへ向かうことにした。
「死柄木弔・・・それは何ですか」
「拾った。」
「まぁた、捨て猫でも拾ってきたみたいに言わないでくださいちゃんともといた場所に返してきなさい!」
「オメーは俺のかーちゃんかよ」
「かーちゃんでもなんでもいいですから面倒はごめんですよ?その子どうしたんですか?」
薄暗いBARには黒霧と死柄木そして死柄木弔の膝の上に気絶した素姓も分からない少年。
黒霧は何処で拾ってきたんですか?仲間にするんですか?と問いただす
「拾ったから今日からコイツは俺のもの」
「・・・はい?」
黒霧はポカンとする
何の説明にもなっていないのですが
死柄木は一体何を考えているのか。
しかし少年はボロボロだ気を失っている所を見ると死柄木弔が倒して連れてきたのだろうか?
「その少年の個性は?」
「知らない。」
「人質とかですか?」
「違う」
黒霧はいまいち状況がつかめない
本当に子猫を拾ってきたかのような
いやいやまさか
でも目の前の光景は目を疑う物だ
拾ってきた気絶する猫を大事そうに抱える子供のような光景だ。
ふと眺めていると少年が目を覚ました。
「・・・あれ・・僕」
「やっと起きたかガキ」
「ひょえ」
すっとんきょな声がBARに響く
「あああっごめ、ごめんなさいっご迷惑御掛けして!!!」
死柄木弔の姿を見ると大抵は怯えるが思っていた反応とは少し違ったようだ
BARに居るときは大抵手を全身に付けているのだ。
抱えられていた自分と状況を理解したかのように跳ね上がるとお辞儀した。
本当に拾ってきたのか・・・あの死柄木弔が・・・
しかもこの子、普通にいい子だ。
しかし私たちは見た目明らか怪しいのに警戒心の無い子供は心配になる
「俺は死柄木弔、でそこに居る黒いのが黒霧。お前名前は?」
死柄木弔が名乗るなんて!成長しましたね・・・!
「初めまして黒霧と申します」
少年も紹介に礼儀正しく返してくれる
「は、はじめまして!僕は緑谷出久って言います」
「ふーん出久・・・」
「本当にお世話になりました、僕帰らないと・・・!
お礼はまた改めてさせて頂きます!!」
少年は帰ろうとしだすがそれを死柄木は止めた。
「だめだよ」
「えっ・・・」
「俺が出久を拾ったから今日からお前は俺の。
ここに居ろここから出て行けば殺す。」
威圧感、死柄木弔の持つ悪のカリスマはここから来てると言えよう
一般の少年からしたら怯えて足も動かなくなるのが当然だ。
少年は震えていた。
「僕が・・・死柄木さんの?」
「そうだ。」
そして二人は驚愕することになる
どんな顔をしているか。
絶望の顔か恐怖の顔か
何方でもなかった
少年は笑っていた。
闇の中から一点の光を見つけたような
すがるような顔で言ったのだ。
「ここに居ても良いんですか?」
絶望して全てをあきらめた時出会った人
死柄木さんは僕の光だ。
僕を助けてくれた人
今は僕の中で一番の憧れの人となっていた。
「ここに居てもいいんですか?」
「俺が拾ったって言ったろ?ここからでたら殺すともいった。」
それが答えだった。
強くてカッコいい
笑うことは少ないけど僕にはとっても優しい人。
あの日僕は敵連合の拠点に連れてこられた
居場所を与えてくれたのは死柄木さんだ。
あれから何日経ったか
お母さんが心配と言えば嘘じゃないけど
かっちゃんは・・・喜んでるかもしれない
入試もあきらめろって言いにきたくらいだから
受験シーズンはとっくに終わっていた。
僕は黒霧さんのBARのお手伝いをしていて
皆さんが御出かけしているときはお留守番です。
死柄木さんには弔と呼べと言われて今は弔さんと
呼ばせて頂いてます
あれだけ憧れたヒーローから離れて
僕は今敵連合に居る。
弔さんの御役に立てることがあればいいんだけどなぁ
大好きだったヒーローの敵
今は僕に取ってのヒーローは弔さんなのだ
やられて欲しくない
はなれて欲しくない
そんな気持ちの中あのノートを思い出した
出久はヒーローオタクだ。
ヒーローノートあれがあればもっと役に立てるんじゃないかな・・・
最初は外に出るなと言われていた出久も今は外に出る許可を貰うほどなじんでいるのだ
ただこのBARに来てから一度も出久は外に出ることはなかった黒霧さんと弔さんと一緒のときに外に出ることはたまにあったが自ら望んで出ることは無かった必要ないと思っていたからこそだが
一応弔さんに貰った専用の携帯で弔さんにノートを取りに行くことだけメール伝えた。
黒霧さんに事情を話すとこことは離れているらしく街までゲートで飛ばしてくれることになった。
「こちらへ戻り連絡頂ければまた迎えに来ますから。くれぐれも気をつけてくださいね」
「はいありがとうございます」
そうやってにこっと微笑めばフード越しにやさしく頭を撫でてくれる
弔さんも黒霧さんもいまは僕の家族なんだ
お辞儀をするとゲートへ戻り姿を消す。
母親の捜索願いにより出久は行方不明で現在捜索中に当たる存在なため
注意して外を歩かなければならないのだ
フードを深く被り久しぶりの街に出た
家をのぞくと丁度誰もいないようだった。
母さんが心配だった
僕の欲しいことばはくれなくとも
大切な家族だったのだ。
今まで書き溜めてきた
ヒーローノートをリュックに詰めると
家を後にした。
黒霧さんに戻る連絡を送り向かっているときだった
「おい」
後ろから聞き慣れた声に呼び止められた
「そのリュックお前・・・」
足音は近づいて来る
ここで振り向いては行けない
そう悟り思い切り踏み出した
「逃げんな!!!まてコラ!!!クソ!!!!」
まずいまずいまずいまずい
幼なじみのかっちゃんだ
追いかけて来る
怖い怖い怖い怖い
早く帰らないと
体力で勝てる分けないのに
あとちょっとなのに・・・!
思い切り押さえつけられ体は地面のコンクリートに叩き付けられる
「見つけたぞクソデク!!!!」
「痛いよ!!!離してよかっちゃん!!!」
「オメーいままで何処に隠れていやがった!!!!!」
「そんなのどうだっていいでしょかっちゃんには!!!」
必死で暴れ回っても勝てるわけが無いのはわかっている
それでも抵抗する
「んだとクソナードのくせに!!!」
「離せ!!!!」
力一杯動いた時一瞬体制が崩れた
そこを狙って抜け出してまた走り出す
「まてや!!!!クソデク!!!!!」
聞き慣れた爆発音に体が浮き痛みが走る
「っぐ!・・・っう」
「死なない程度だから安心しろや」
かっちゃんかなり怒ってる
居なくなって喜んでいた所にまた僕が現れたから?
どうしてそこまで・・・
僕は何もしてないのに存在することすら許してもらえないのか?
「にげんじゃねーぞクソナード!」
「そんなに、僕が生きてることが嫌かよ・・・!」
力一杯叫んだ
声に驚いたのか一瞬かっちゃんの動きが止まる
体はまだ動かせそうにない
さらに怒らせてしまったのかオーラが増す
このままだと本気で怒ったかっちゃんに殺されそうだ
まだ死ぬわけにはいかない・・・
一度はあきらめたけど、今は弔さんが僕にはいるのに
殴り掛かる幼なじみを眺めることしか出来ない中
何か感じ取ったのかのようにすぐ飛び退いく
「緑谷出久、大丈夫ですか?遅れてしまいすみません」
「黒霧さん」
「弔が居なくて本当に良かった、いや、でもその姿を見たら怒りそうですね」
「うっ、こ、こちらこそ、すみません・・・」
「お前・・・!!!」
かっちゃんは黒霧さんを知っているようだった
「おやおや、何処かで見た顔と思えばヒーロー科の学生さんじゃないですか」
「USJん時のワープ野郎がなんでデクと居んだよ」
そういえば前に二人共出かけてるときにUSJがどうとか言っていたような気がする
「ヴィランの野郎が無個性クソナードにようでもあんのかよって言ってんだよ!!!」
「それはこっちの台詞ですよヒーローを名乗る者が子供であれ無害の少年に個性で暴行をするなど」
そう言うと黒霧さんは僕を抱え上げゲートを作る
「私も色々気に入らない所がありますが今は相手をする時では無いですし人を待たせて居ますので帰らせて頂きますよ」
「おい!!!!!!まて!!!!!」
その手は届くことが無かった
「なんで・・・なんでだよ、クソデク」
怒りと後悔のこもった声はただそこに響いた
「これじゃぁどっちがヒーローで敵かわかったものじゃないですね」
「あはは・・・そうですね」
「二人とも遅かったね?・・・で、その状況説明してくれるんだよね?」
僕も黒霧さんも弔さんに怒られたが殺されることは無かった
何日かたったらTVで雄英高校の体育祭の様子が流れているのを皆で見た。
「爆豪勝己アイツが・・・」
表彰台の1位に立つ男は僕の幼なじみだった
弔さんは黒霧さんに前のことを聞いたのかかっちゃんに最近興味を持っているらしい
というよりすごい殺意を向けてる気がする・・・
「ヒーロー志望がいじめ主犯ほど笑えることはないよね?
あ〜あ〜おかしいなぁ・・・殺してぇなァ」
僕を膝の上に抱えながら言わないで欲しいですはい・・・
今日も僕はBARでお手伝いです
実は隠密系の訓練もこっそりしてたりします最近は
「お帰りなさい!弔さん!みなさんもお疲れさまです!」
「・・・ただいま」
「出久くん〜〜〜!かあいい〜〜!チウチウしたい〜〜♥︎」
「やったら殺す」
「ぶ〜〜〜弔くんのケチ!」
初めてここが敵連合の本拠地って聞いた時びっくりしたけど
始めは二人だったのが今はメンバーも増えて絶賛拡大中です
チウチウしたいって言ってる金髪の女の子がトガヒミコさん
「出久」
「荼毘さん?」
「土産」
「わ!プリン!ありがとうございます!」
「勝手に餌付けするな・・・トばされたいか?」
「弔さんも一緒に食べましょう!」
「食う。よくやった荼毘。」
「きめぇ・・・」
プリンを買ってきてくれた黒髪の方は荼毘さん
皆さんとっても仲良しです
二人が来たのは
ヒーロー殺しステインさんが逮捕されてからだ。
ステインさんは以前敵連合に所属していた
目つきは悪くてぶっきらぼうな人だったが弔さんみたいに
優しく扱ってくれる人でもあったのだ。
会えないのはとても悲しいけれど生きていると言うことが何よりの救いだった。
帰ってきたらまたお話がしたいなぁ
「出久・・・こっち」
僕の名前を呼びぽんぽんと膝を叩く
弔さんの膝の上が僕の定位置になりかけてる
「早く」
「はいっ」
今日も僕の世界は狭くて暗いけど暖かいです。
イライラする
イライラする
ずっとずっと
イラついている
何もかも気に食わない
俺は完璧で優秀なはずなのに
このイライラはおさまることがない
何故か
分からない
本当は分かっているはずだ。
認めたくない。
クソデク・・・
イライラする
ずっとずっと、俺を追いかけてきた
俺の後ろに居た無個性のデクが・・・
何でだ?
「・・・・何でお前がソッチ側に居るんだよ。」
雄英高校ヒーロー科 1年A組
爆豪勝己、最近の彼は様子がおかしかった。
クラスメイトも心配していた。
普段の彼はけんかっ早くクラスメイトにいじられては
ボムボム怒っている
そんな彼が最近は何か考え込んでいるのか大人しくいじろうにも全く反応が返ってこないのだ。
これは何か深刻なことがあったに違いないとクラスメイト達はおもうのであった。
爆豪が雄英高校に入る前
彼の幼なじみの緑谷出久という少年が行方不明になっていた。
ちらっと皆それを耳にしていて
それに関係することなのではないかと思っている所だ。
爆豪自身も緑谷が居なくなってから
密かに彼を探していたのだ。
「屋上からワンチャンダイブ」
自分から放った言葉だ。
今まで出久を見てきてそんなこと本当にするなんてみじんも思っていなかった。
もし生まれ変わって、デクに個性があってそれでアイツが幸せになれるならなんて
バカみたいな考えだ。
冷静になれば酷いことを言ったことに後悔させられる。
デクのことになるといつも頭に血が上る。
小さい頃から自覚はしていた。
片思いはいつも裏目に出て、
怯える顔で震えた声で
「かっちゃん」
と呼ばれるようになってて。
イライラしてたまらなかった。
黒霧と爆豪は面識があった
それはUSJ、ヒーロー科の訓練をするための施設出の出来事だ
敵連合の軍団に襲われオールマイトの登場によりその場は救われた。
ワープゲート
敵連合の襲撃の際に居たやつだ。
「黒霧さん!」
そう呼んでいた。
さらわれたわけでもなくアイツから望んでアッチに居ると言うことだ。
「おい!!爆豪聞いてんのか〜??」
「おいってば!!!」
同じクラスの切島が話しかけていることに気づく
「あ”???」
「うわっこわっ、じゃなくて、林間合宿だってさ!楽しみだよなぁ〜〜!」
「知るかクソ」
「爆豪お前ほんと、最近さらにイラついてるよな〜」
「・・・」
「まぁ、また敵連合が現れるかもって話しだし、警戒を劣るなって言ってたぞ」
「敵連合・・・な」
むしろ来てくれりゃぁ好都合ってもんじゃねーか
「おぉ!なんかやる気だな!」
「あたりめぇだ」
クソデクを取り返す。
「ヒーロー科の林間合宿?」
「あぁ、次はそこを襲う」
敵連合本拠地のBARに今日はいつもより多い人数の人が集められていた。
開闢行動隊
メンバーの名称のようだ
ざっと今回の目的を弔さんが話し始める。
説明が終わると付け足すように
定位置となった弔さんの膝の上に座る出久の頭をぽんぽんと
やさしくなでながら
「危険だろうが今回は出久にもついてってもらう」
そう言い放った。
「えっ!?僕もっ!?!?」
「あぁ」
「出久は無個性だろ?何のメリットが有るんだ?」
「荼毘さんの言う通りです、僕、足を引っ張ったりしたら・・・」
「大丈夫だ。戦闘はさせない、あくまで情報収集してきてもらうだけだ
ムカつくことにヒーローの情報収集に関しては誰よりも出久が優れているし。
何のために隠密行動の訓練してると思ってるんだ」
「個性の情報収集か。それなら文句ねー」
「えええ!出久くんも一緒♥︎♥︎嬉しい〜〜!」
どうやら他のメンバーの方も特に反対は無いらしい
弔さんたちの役に立てるよう頑張ろうと決意した。
襲撃は夜
そして最優先ターゲットの写真が提示された。
「かっちゃん?」
「あぁ」
「コイツの抹殺が最優先事項だ。」
波乱の予感です。
おまけ1
黒霧は今日もBARにて
「おや、二人ともお帰りなさい」
「ただいま戻りました!」
「・・・」
「すみませんね、買い足し頼んでしまって」
「いえいえ!」
「腹ァへった」
「はいはい今出しますね」
「・・・・なんだよ」
「いえ、なんでもありません」
ついじっと見てしまったが死柄木弔はなんだか機嫌が良さそうだ
死柄木弔と緑谷出久に買い物を頼んでいた所帰ってきたようだ
二人はいつも出かける時パーカー着ているが出て行ったときと少し変わっていた
「おや、ずいぶんと可愛らしいパーカーを着ていらっしゃいますね。」
緑谷出久が着ていたパーカーは灰色の死柄木弔とお揃いだったはずだが
新しいデザインの物に変わっていた。
緑色にフードにうさ耳が付いたパーカーだ
サイズは少し大きめでそれがまた似合っていて愛らしい。
緑谷出久の好きそうなデザインだ。
「これはですね!弔さんが僕のためにうさぎさんパーカーを選んでくれたんです!」
嬉しそうに目をキラキラさせながら少年は言う
「へぇ死柄木弔がそのうさぎさんパーカーを・・・」
死柄木弔が・・・ですと?
おまけ2
過去のお話
エンデヴァー
それが俺のクソジジィのヒーロー名
万年No2の親父(あいつ)
大嫌いで
大嫌いで
そんな奴の血を引いてる
自分も大嫌いだった。
左は使わない。
そう決めていた。
中学2年の頃。
俺は運命の少年と出会ったのだ。
ボロボロで無個性だった男の子
自分よりも見た目は幼く見えた。
緑色にふわふわの髪
大きく丸い瞳の少年。
無個性の少年は人助けをしていて
俺も手伝ったのがきっかけだ。
小さいからだでおばあさんをおんぶしながら
荷物を抱え駅まで向かっている所声をかけた。
「可愛い学生さん達、ありがとねぇ」
「いえいえ、お気をつけて!」
おばあさんはとても感謝していて
少年の笑顔は安心させられる何かを持っていた。
「すみません手伝って頂いて!」
「いや、気にしなくて良い」
「あっ、お礼に飲み物でも!」
「お前のほうがおばあさん背負って大変だっただろ、俺は荷物を持っただけだ」
「でもっ」
「それなら少し話さないか?」
「あっ!は、はい!」
駅の近くのカフェを指差して歩けば
後ろからひょこひょこと付いてきた。
なんというか・・・
かわ、
俺は今何を・・・?
飲み物を頼みガラスに面している横長の席に並んで座る
見え辛いが所々怪我をしているように見える、
色々気にはなるが口を開いた
「お前はヒーローを目指しているのか?」
「ひぇっ!は、はい・・・」
「・・・?」
「あっ、なりたいとは思ってるんですけど!僕、その、個性が無くて」
「個性が無い・・・?」
「う、うん、今時珍しいってお医者さんにも言われてて」
「そうか・・・」
「僕はいいんだ!それより君の個性は?」
聞きかえされるのも当然だがあまり聞かれたくない内容ではあった、
隣の少年は無個性を打ち明けてくれたのに言わないわけにもいかない。
「半冷と・・・・半燃だ、」
熱のことは普段言わないようにしていたがこの子なら言っても良い気がした。
「えっ!!!すごい!カッコいいね!!ヒーローにぴったりで羨ましいよ!」
キラキラとかすむことの無い瞳で言われた。
ドキッ・・・
・・・?
羨ましいと言われることは多いが大抵嫌な物を含んで言われることが多いのだ
その目はでキラキラさせながらヒーローに憧れる純粋な子供の目だった。
キレイだ。
「それって凍らせることも燃やすことも出来るんだよね!」
「あぁ、でも・・・炎は使わない。」
「・・・どうして?」
「個性婚て知ってるか?」
今日初めてあったようなやつに話すことではないのに
なぜか話してしまった。
それは相手が無個性だったからだろうか・・・
それともあの目を見てしまったからだろうか・・・
長話を真剣に聞いてくれた。
話が終わる頃には飲み物も氷だけになっていた。
「そ、そんなことが・・・」
「俺は左を使わずにNo1ヒーローになりたいんだ。」
隣の少年は真剣な顔で話の整理をしているのか
ブツブツと考え込んでいた。
すると少年はこっちに向き
俺の左手をやさしく両手で握りしめると言った。
「僕は個性が無くて、個性を持ってる皆がキラキラ輝いてて、
どんな個性も羨ましくて、憧れてて、無個性の僕なんかが言えることじゃない・・・
とは思うんだけど、それでも君の個性は素敵で凄いと思うし・・・
それに君は僕やおばあさんを助けてくれて
この温かい手もそのために使ってくれて、
お父さんがどうだか分からないけど・・・
このやさしい手は君のもので
その力も君の力じゃないかって思うんだ・・・。」
まっすぐな目で
今日あったばかりの少年にそんなことを言われた。
今まで誰にも言われなかった言葉。
俺は無反応でボーッとしてたのだろう
「あああっあの!初対面でこんなこといわれてもって話だよね!!
ごごご、ごめんね!!!ほ、ほんとうに今日はありがとうございました!」
耐えきれなくなったのか顔を真っ赤にして少年は走り去ってしまった。
名前を聞かなかったことに大きく後悔した。
轟焦凍が心を動かされた瞬間だった。
止まっていたものが少しずつ変化していく。
ヒーローにさえなればまたあの少年に会えると信じて疑わなかった。
日を追うごとに少年に会いたくなる。
もしまた出会えたなら、感謝の言葉と・・・もう一つの気持ちを。
そして特待生としてヒーロー科である雄英高校1年A組に入ることとなる。
林間合宿の夜、襲撃の時間を迎えた。
夜風は気持ちいい
高い所から森を見渡せば学生の姿がチラホラ
森からは悲鳴が上がっているがそれは僕らの物でなく
学生達のレクリエーションの物だ。
僕も、あそこに入っていたら・・・
いいや、そんなことはあり得ないのだ。
僕には敵連合の仲間がいるんだ。
個性が無くても受け入れてくれる人たちが。
長い夜が始まることとなる。
「時間になりましたら集合してください。」
黒霧さんと弔さんはBARで待機しているそうで
そう告げると姿を消した。
「出久くん〜〜!一緒にいこ♥︎」
ゴツンと鈍い音がした・・・
トガさんに荼毘さんがげんこつを入れたようだ
回りもビクッとしている
「アホ、お前なんで出久と何で来たか忘れたのかよ、お前なんかといたら目立つだろ・・・」
「うぐぐ・・・」
「俺たちの戦いには巻き込まれんなよ、危険だと思ったら逃げてこい」
「はい。ありがとうございます!」
敵連合とはいえ仲間には優しい
荼毘さんの言葉にお礼を言うと
行動開始する。
基本出久は単独行動だ。
他の開闢行動隊メンバーも
各々の目的のため散らばる
今回は弔さんに貰ったパーカーは着ていない、
戦闘でぼろぼろにしたくないし・・・
手に握られているのは暗号化された現在合宿中のヒーロー科の
生徒名簿だ。
以前弔さんや黒霧さんたちがUSJに襲撃をおこない、
体育祭の放送を見て情報が必要とされる今後的連合にて
危険視される情報が必要な学生の名前が入っていた。
その中には幼なじみのかっちゃんの名前も入っている
そしてもう一人かっちゃんに並ぶ学生。
轟焦凍
体育祭の時に表彰台2位に立っていた少年だ。
名前はその時知ったが、彼には一度会っていた。
それは中学の頃、一度だけで彼は僕のことを覚えていないだろう
ただ以前話したことは確実に僕は覚えていた
「左は使わない。」
当時そう言っていた彼は大会の戦いで両方を使っていた。
昔で合ったばかりの僕は余計なことを言ってしまったが
彼の中で両方使うきっかけになる何かがこれまでにあったのだろう。
この二人が主に出久の観察対象だが
かなり怖い・・・
しょうじきかっちゃんには近づきたく無いのが本音だ。
弔さんも爆轟には出久は近づかなくていいと言われていたが
もう一人の轟くんが運悪くかっちゃんとペアで行動しているのだ。
あれだけ強い二人に見つかれば逃げられず最悪倒されるのをかくごするしか無い。
それでも弔さんの役に立ちたいのだ。
暗かった森は各地で爆発音や戦闘に寄る音が響き始めていた。
出久もそれにまぎれて動き出す。
心音を沈めて暗闇に身を隠しじっくり対象を観察して情報を集めるのだ。
道中学生に悟られず情報を集めながら
轟と爆轟の元へ行く。
他の行動隊メンバーの個性はあらかじめ聞いていたため巻き込まれる心配もない。
どうやら二人はムーンフィッシュさんと戦闘中だったようで
これは自分も巻き込まれる可能性が大きい、
開闢行動隊は精鋭とは聞いたが危険人物は多い、
その中には死刑囚の男もいて彼がその一人なのだ
荼毘さんやトガさんのように親しいわけでもなく
戦闘に関しては近寄れば巻き込まれて死ぬ可能性が高い人物だ。
息をひそめ観察する。
気づかれるな、観察しろ、情報を全て頭に叩き込むんだ。
緊張は心音を大きくさせる。
ムーンフィッシュさんの個性歯刃
刃は鋭くこちらにも伸びて来るのに気づく
黒霧さんと時間有る時に鍛錬していてよかったと思う
だがそれで気づかれてしまった
よけた先に彼らが居たのだ
しまった・・・・!
ムーンウィッシュさんは相手が僕だったことに気づいたようだ
「シゴト・・シゴト・・・」
さっきは顔が見えなかったために狙ってきたようで
今は的の内に入ってないのが分かり安堵するが
それもつかの間
「は、はははは!!!見つけたぞ・・・!!!!!クソデク!!!!!」
かっちゃんの敵意の矛先はこちらに向いたようだ
非常にまずい状況だ
護身は多少あるとは言えかっちゃんと戦えるような力は無い。
逃げようにも丁度背後はガスだまりだ・・・
失敗した失敗した
まずいまずい・・・
落ち着け、落ち着け、
ムーンフィッシュさんの方に走るしか無い・・・!
「何考え事してんだ!!!クソナード!!!!!」
くそっ!
瀑力で突進して来る
避けきれない!
「そいつに手を出すな!!!」
殴られるかとおもったら目の前には氷の壁が出来上がっていた。
一体何が・・・?
「テメェ!!!!!何邪魔してくれる半分野郎!!!!!!!」
「それはこっちの台詞だ。」
「オメーには関係ねーだろうが!!!」
「有る。」
「んだと!!!」
どうやら轟君が何故か僕を助けてく太みたいだ
そして目の前で仲間割れが始まった。
そのすきに逃げようとすれば今度は靴が氷によって地面に縫い付けられていた。
怪我をさせる気はないのか靴底あたりだけが氷で繋がっており足は凍らされていない。
ムーンフィッシュさんはひたすら攻撃を続けているようだが轟君の氷の壁で阻まれていた。
「俺はコイツをボコってでも連れて帰るんだよ!!!」
「ボコる必要性を感じない、デクっていったな?どういう・・・」
「あのクソナードが今行方不明の緑谷出久なんだよ!!!」
「例の幼なじみか・・・」
「わかったらジャマすんじゃねぇ!!!俺はあのクソデクに用があんだよ!!」
「やめろ!何かしたら俺は爆豪、お前とも戦うつもりだ。」
クソ、とかっちゃんちゃんもさすがに状況を理解しているのか動きを止めた。
「緑谷出久、いや、緑谷という名前だったんだな。俺のことは覚えているか?」
動けない足を必死に動かすが動かない
「質問に答えてくれ、状況からしてお前はこの学園の学生でも無い部外者で、
この場に居ると言うことを考えると敵連合側と思っていいのか・・・
靴を置いて逃げるのも良いが直接足が地面に縫い付けられることになるぞ。
痛い思いはさせたくない、従ってくれ」
轟君はあくまで僕を傷つける気はないらしく僕も今足をやられるのは最悪を招くのも
理解していたため少し話すことにした。
「うん、覚えてるよ・・・、中学の時に一度会ったね・・・。」
忘れられたと思っていたのか覚えていると言う解答に少し表情が和らいだ気がする。
そして表情は再び固くなる
「なぜ・・・こんな所に居るんだ。」
「僕は・・・」
答えようとしたとき
大きな音が近づいてきているのに気づく。
大きな音とともに木々が吹き飛ばされてこちらに近づいて来る。
黒い大きな化け物だ。
それはヒーロー科生徒の一人の暴走によるものであった
「こんなときに・・・・アレは常闇か?」
「爆豪!!!!!轟!!!どちらでもいい!!光を!!!」
走って来る生徒がこちらにその暴走した化け物を引っ張ってきていたのだ。
その破壊力は凄まじくムーンフィッシュさんが攻撃をするがあっさり吹き飛ばされて戦闘不能にされてしまった。
闇が深いほど強力になる個性
情報は得ていたがここまでとは・・・
こちらに攻撃をむけてくるが
轟と爆豪は同時に動きだしそれを阻止した。
そして僕はその隙を見て靴を捨てていつの間にか晴れていた
ガスが蔓延していた方の森にまぎれ姿を隠すことに成功した。
かっちゃんは早々に気づき叫び声を上げる
「おい!!!!何処行きやがった!!!!クソナード!!!!」
「緑谷!!!」
息を潜めその場をやり過ごそうという時
連絡が入った。
撤退の時間だ。
素足というのは建物の中では非常に有効だが外となれば話は別だ。
特に森の中は、石やら枝やらを直接踏みつけ移動しなくてはならないのだ。
集合場所へ早く向かわなければならない・・・
バキン
枝の折れる音、小さな音。
それすらも気が立っている
かっちゃんは見逃さなかったのだ。
爆風に体が吹き飛ばされ体は木に激突する。
「っぐっ、、、」
「デークー俺から逃げられるなんて思うなよ???」
「かっちゃ・・・ん・・・」
普通の人が受けて無事で居られる爆風などではない。
一発でこの有様だ
それでも逃げ出そうと言う中かっちゃんはやはりあの日のように追いかけてくるのだ
それはまた妨害されるのだが
「テメェ!!!何しやがる!!」
後ろを振り返れば轟くんがかっちゃんに個性を向けていたのだ
「手を出すなって言っただろう?お前こそ何してくれてるんだ」
轟君は冷静なタイプだと思っていたが今はかなり怒っているようだった。
氷と熱と爆発の衝突が起きた
僕はそこからにげようとするもかっちゃんも轟くんもこちらを追いかけながら激闘をはじめてしまった。
もう振り返るべきではないと必死に走る。
ばくはつでボロボロのうえ素足もかなり痛いが足を止めることは無い
集合場所に必死に向かい荼毘さんの姿が見えた。
「出久、ずいぶんぼろぼろだなぁ。」
「すみません・・・、あと、僕追いかけられてて、ごめんなさい」
「出久は観察と情報収集だろ。謝る必要はねーし逃げろっていったんだ
逃げていーんじゃねーの?」
そういいながら荼毘さんに体を抱え上げられた。
足は地面からはなれ楽になる。
「ひゃああ〜♥︎ボロボロの出句くんかぁいい〜〜ちうちうしたい〜」
「これで全員か、他の奴はダメみたいだな」
轟くんとかっちゃんの姿が近づいて来る
「お前、ずいぶんな奴らに見つかったなぁ」
「う・・・すみません」
抱え上げられる僕の姿をみて激闘を繰り広げて仲間割れしていたはずの二人の
声がはもる
「「ソイツをはなせ!!!」」
「それはできねーなぁそれにタイムリミットだ。」
ワープゲートがその場に出現し
みるみる姿を消して行く
轟くんとかっちゃんは凄い勢いでこっちに向かって手を伸ばして来るが
その手は届くことは無かった。
「二人とも・・・ばいばい。」
次ぎは・・・もうあえないかな?
僕はちゃんと笑えてたかな?
僕は僕の居場所に帰るんだから。
また・・・
また届かなかった・・・
ゲートに消えるデクの目には
俺の知らない闇が含まれたいた気がした。
そして今回俺を妨害したのが
この半分野郎だ。
コイツさえ居なければ。
コイツが俺の邪魔をしたんだ。
これからぶっ殺してやりてぇとおもったが
激戦で体が限界を迎えたのか
爆豪も轟もそろって力つきた。
そして彼らはクラスメイトの一人がノームに発信器を仕掛けたことを知ることとなる。
待機中BARにて
落ち着きの無いリーダーの姿を見て黒霧はため息をこぼした。
「死柄木弔・・・そんなに心配なら行かせなきゃ良かったじゃないですか・・・」
「うるさい・・・。」
「さっきまであんなにかっこつけてゲームとか言ってたじゃないですか」
「うるさい・・・。」
「トランプで遊んでたのは分かりますけど・・・」
あからさますぎませんか?
先ほどまで死柄木弔はトランプゲームをしていた・・・のだが
今は・・・
今はそう・・・
トランプが出久という文字を象って居た。
あからさますぎませんか?(2回目)
「死柄木弔、さすがにそれは・・・」
「うるはい・・・・」
今度は緑谷出久のパーカーに顔を埋めている
あからさますぎませんか?(3度目)
緑谷出久が来てから彼は少しどころかトチ狂っている。
狂っているのは元々ですが・・・別の意味でも狂わされてる木気しか・・・
これで怪我なんかされて帰ってきでもしたら
またどうなることやら・・・
お母さんの不安は的中することとなるのだが
それは数分後の少し先のお話。