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レオの部屋についてシャワーして、みんなで囲んだ温かくも華やかだった食卓。レオも初神さんも野々神さんも大怨霊も、深夜だとゆうのに賑やかに笑い合って何の屈託もなかった。まだ知り合えた程度の仲なのに、皆で摂る食事がこんなに楽しいとは思いもしない。幽霊も食べるのね…ご飯。
皆で食後のお茶をして少し話したら、野々神さんとアタシと初神さんと3人並んで食器を片付ける。ベッドの縁では、大怨霊を膝に乗せたレオがデレデレ過ぎてなんだかムカついた。あんた解ってる?そうやって密着してると!嫌でも生命力を盗られちゃうんだからね?。普通なら死ぬわよ!?
「それじゃあレオちゃん、うずめちゃん、ありがとう。…ほらノノカも帰るわよぉ?。あ。ほら、カリンちゃんはアタシの部屋に来ない?。ね?」
「ええ〜っとぉ。〈小声〉このままレオ君と大怨霊を二人きりにしたら不味くないですか?。彼も顔色が…すこし優れないみたいなんですけど?」
「……………。〈小声〉その事でも話したいから来なさいって言ってるの!」
「そうですね。じゃ…今夜は音々さんのお部屋に泊まらせてください♪。それじゃレオ?うずめさん、わたしお隣に泊まらせてもらうからねえ?」
考えもしなかった初神音々さんからのお誘い。これはわたしにとってかなり都合が良い話しだわ。今夜だけの事を考えればレオと大怨霊を二人にはしたくないけど、解決するべきなのは次の満月の夜の事。あの大怨霊にレオを連れて行かせない為の作戦は不可欠なのよ。ぜひ力を借りなければ…
「そうか。お前が良いならそうしろ。あ、音々さん。こいつ寝相がめちゃくちゃ悪いけどヨロシクお願いします。かりん?大人しく寝るんだぞ?」
「言われなくても大丈夫ですよーだ!。行きましょ?初神さん。」
「それじゃレオちゃん、カリンちゃんをお借りしまぁす♡。こら、ののかはいつまでそうしてんの?。もう撮影会は終わり!さっさと来なさい!」
「えー!?こんな美味しい絡みを撮影できる機会なんて滅多に無いんすよぉー。あ、うずめさま?レオちんの腰を跨いだまま背中を…そうっ!。良いっすよぉー色っぽいっす!。今度は唇を薄く開いてぇー。あうっ!?」
「レオちゃん、うずめちゃん。お邪魔しました♪。おやすみなさい♡」
「おやすみ、音々さん、ののか、かりん。…また明日な?…」
「うふふふっ♪。おやすみなさい、みなさん♡。また明日。」
襟の後ろを掴まれたノノカが音々さんに引きずられて行った。名残り惜しそうなノノカを征しながらカリンがドアを閉める。ようやく訪れた静寂と二人だけの時間に気が抜けた。これで何となく長かった今日とゆう1日が終わる。しかし、これでうずめさんが納得する訳がないのだ。膝を跨いだまま見上げている彼女を俺はお姫様に抱きあげてバスルームへと向かう。
俺と二人っきりで入る風呂に、うずめさんの中では並々ならない執着とこだわりがあるらしい。手ぬぐいなどを使わずにボディーソープを泡立てた手の平で丁寧に流されるのだが、その柔らかくすべすべな掌の感触になかなか慣れない。時どき触れ合う肌の弾力に理性が吹き飛びそうになるが…それでも楽しみにしているのは俺だけでは無い筈だ。とか独り善がりか。
「え。…音々さん『も』…レオくんの愛人…だったんですね。(レオめぇ。わたしが居ないのを良いことにっ!どれだけ性欲開放してんのよっ!)」
「そうよお。うずめちゃんに頼まれちゃったのよねぇ♪。あ…食べて?」
「い、頂きます。…もぐもぐもぐ…でも、うずめさんに頼まれたってどうゆう事ですか?。独り占めしたいものだと思うんですけど。怨霊だし…」
「それは怨霊じゃなくてもそうっすよ。女の子なんだし。…久し振りに食べると美味しいっすねぇアタリメって♪。あむ。…もぐもぐもぐもぐ♡」
「ののか?。食べすぎると臭くなるって言うから気をつけなさいよぉ?」
初神さんの部屋に着いてから、何となく始まっている女子会。皆がそれぞれ寛ぎやすい格好になって乾物やチョコをつまみに缶ビールや缶のサワーを呑んでいる。わたしは当然ノンアルコールなカクテルなのだが、場の雰囲気ですでにほろ酔い気分だわ。しかしこの二人…なんてスケベな体を…
「もぐもぐもぐもぐ。…ナニが臭くなるんすか?。あむ…もぐもぐもぐ…」
「あそこよ。ア・ソ・コ♡。信じるか信じないかはノノカ次第だけど♡」
「そっ!?。そんな所が臭くなったら絶対に駄目じゃないっすかー!?。なんて物を食べさせるんっすかネネ姉さん!。…だ。…大丈夫かなぁ?」
「うふふふふっ♪。アタシが後で確かめてあげるわねぇ?」
「もぐもぐもぐ。(こんなスケベな話題って大人女子会アルアルなの?)」
綺麗なテーブルに広げられた数々のおつまみを食べながら、何となく話しが弾む。女子会なんて中学の修学旅行以来だけど、まさかこんなに楽しくなるとは思わなかった。あの頃のわたしは聞き役ばかりで…話せる事が少なかったのをよく覚えている。他の皆にはそれぞれちゃんと家族がいて、両親がいるのが普通だ。どうしても自分の話しとなると口籠ってしまう。でもこの二人には年上だからか…遠慮なんていらない安心感があった。
「…わらし思うんですけどぉ…レオっておかしいですよねぇ?相手はゆーれーですよぉ?。しかもぉ〜ビリビリ来るほどの怨念を抱えてるしぃ〜」
「それはあーしも心配してるっす。…うずめ様を信用しない訳じゃないっすけど、やっぱり普通の人間じゃないし…どこか怖い物があるんすよね…」
「そうねぇ。うずめちゃんは未知の存在だから怖いのは解るわぁ。でもあたしとしては可愛らしくもあるのよねぇ。随分と助けられたのもあるけれど、同じ男性に惚れ込んでいるってトコロでは盟友って感じがするのよ。」
「そのメイユウにぃレオを連れてかれたらろうするんれすかぁ?。冥界なんかに連れ込まれたら、いくら強い霊力があっても連れ戻せないんれすからねぇ?。…ごっごっごっ…く〜♪このマスカット味効くぅ♡。あにゃ?」
「……カリンちゃん?なんだか酔ってま…あ。なんでストロングなんか飲んでるんすかー!?。それはあーしのなのにー!?。か…カリン…ちゃん?あ。一瞬で寝ちゃったっす。…なんだか幸せそうな顔してるっすねぇ?」
「もぅ、ノノカはぁ。どうりでカリンちゃんの呂律が怪しくなったと思ったのよぉ。…ほらぁ、はやく足を持って。あたしのベッドに運ぶわよ?。はぁ…本題に入る前に酔い潰れちゃうなんて想定外だわ。……よいしょ…」
肉感的なのに意外と軽いカリンちゃん。『10代って良いわねぇ』とか思いながらあたしのベッドに寝かせてみたけど大丈夫かしら?。念の為にエアコンを効かせておいた方がいいわよね?寝相が悪いって言っていたし。この部屋に泊まって体調でも壊されたら、レオさんに言い訳できないわ。話しの続きは彼女が目を覚ましてからでもできるけど、急がないとよね。
「パシャパシャパシャ!。う〜ん。カリンちゃんのお腹からお尻へのラインとかなかなかに美味しいそうっすねぇ♪。!?。痛いっすよ姐さん…」
「無防備に寝てる娘をエッチな角度から撮らないの。あんたはまだ部屋に戻らないの?。カリンちゃん寝ちゃったし…今夜はお開きにするけど?」
「…姐さんは気付いてるんすよね?。レオ様がやつれ始めているのに…」
「へぇ。ノノカも気付いてたんだ。…まぁ…このまま行けば、いくらレオちゃんが生命力に長けてても…持って1ヶ月かなぁ。…だけどそのことを注意すれば、レオちゃんはきっと意地でも無理しちゃうだろうしねぇ。」
そう。もしかしたら本人も気づいているかもだけど、レオさんは明らかにウズメちゃんからの強い霊障を受けている。入居の挨拶の時と、あのホームセンターで出会った頃の顔を思い返せば疲労困憊なのは確かよね。もちろん仕事の疲れもあるのだろうけれど、霊体であるウズメちゃんの肉体の維持には途轍もない生命力が必要なのだとゆう事だけはハッキリしたわ。
いくら若くても、いくら丈夫な身体でも、際限なく生命を吸い続けられれば何れレオさんは朽ちてしまう。ウズメちゃんもそんな事は望んでいないはずだけど、彼と離れたくない気持ちの方が勝っているからどうしても。それにレオさんも真剣に思ってるから引き離すことはできないだろうし…
「明後日、いいや明日の夜に、うずめ様が何処かに行くって言ってたっすよねぇ?。なんだか表情がすこし硬かったんすけど…何かあるんすか?」
「その事でカリンちゃんと話したかったんだけど、アンタが紛らわしい飲み物を持ってくるからダメになったじゃない。(とは言っても打つ手がある訳じゃないのよねぇ。アタシたちはレオさんの生命を最優先に考えて、できるだけの事をするだけなんだけど邪魔になるのだけは避けたいし…)」
満月の夜にレオさんはまた死ぬ覚悟なのかも知れない。あの時のようにウズメちゃんを想う言葉を口にすれば、自らの言葉が負の言霊となって我が身に還され彼はまた心肺停止に陥ってしまう。そう知っていても彼はきっとそうしてしまう。恋は盲目と言うけれどレオさんの想いは理解できた。
出来ることなら引き止めたいし、そのまま死なせたりしたくない。でも次も助けられるとは限らない。かと言って誰かに頼れる話でもないのよね。今のアタシなんかに助けられるのかしら?。せめて反魂の言霊に貫かれる前のレオさんの生命力をもっと活性化できたなら死なせずに済むのかも。
「あーしも何か、あの二人の役に立てることは無いんすか?。これでも生命力とかには自信あるっすよ?霊感だって高い方だと自負してるっす。」
「無いこともないのかもなんだけど、コレと言って思い付かないのよ。ねぇ?ノノカ。心肺停止しかけている男性の肉体の活性化を確実に、しかも素早く促す方法って無いのかしら?。普通の蘇生方法とかじゃなくて…」
「えー?そーゆーのは姐さんの方が詳しいんじゃないんすかぁ?。グビグビ…ふはぁ♪。ええっとアドレナリン注射とか用意できないんすかね?」
「そんなの無理に決まってるでしょう?。それにアタシの腕力じゃ心臓マッサージとかにも不安があるのよ。だからノノカにもっと直接的にアプローチできる方法が無いか聞いてるんじゃない。ぐっぐっぐっぐっ…ふう。」
また、あんな恐ろしい光景を見なくてはならないのかと思うと身の毛がよだってしまった。しかももう他人ではない、一方的にでも惚れ込んでいる青年の命がかかっているってゆう現実がアタシの肩に伸し掛かって来る。
他に頼れる人物も居ないからにはアタシが何とかしないといけないのに、焦りと最悪な状況だけが頭を過ぎってしまう。それでもレオさんの想いを止めたりしたらウズメちゃんにも恨まれるだろうし。う〜ん、愛人って案外と辛いものなのねぇ。なまじ本妻にも認められてるから尚さらだわ…
「うふぅ♡。もぐもぐ…何にしてもあーしも協力するっすよ。姐さんとあーしとカリンちゃんの三人がかりならなんとかなるっしょ♪。それとあーしのママに必要な物を頼んでみるっす。あの人なら何とかするっすよ。」
「……もぐもぐもぐ。…ありがとうノノカ、今は宛てにしておくわ。さてと歯でも磨いて横になるわ。で?アンタはどうするの?この部屋で寝る気なら服は着なさいよ?。明け方には川風で冷えるの知ってるでしょう?」
「ダブルベッドなら三人で眠らるっすよ♪。姐さんの柔肌〜♪久し振りに堪能させてもらうっす♡。おっぱいの揉み合いとかしたいっすねぇ♪」
「ノノカ?。もしもどさくさ紛れに揉んだら…殴るからね?」
アタシだけでは無理ならばここに居る二人の力も借りちゃおう。ノノカにしてもカリンちゃんにしても、女としてレオさんに惹かれているのは間違いないんだし、多少は強引でも協力してもらえるはずだわ。アドレナリンは興奮剤の1種、当然ながら手に入れるのは難しいけど理屈は何となく解ったわ。レオさんが昏睡状態になる前に何らかの刺激を与え続ければ、少なくとも肉体が生きようとしてくれればイケるはず。あとは手段よねぇ…
「んふぁ。……あ。音々さん。…おはようございます……どうぞ?」
「お…お邪魔するわね?。(なに!?ガッツリ窶れてるんだけど!?)」
翌日の正午前。アタシは買い物ついでに買ってきたケーキを持ってレオさんの部屋を訪ねたのだけれど、ドアを開けてくれた彼はげっそりと頬を痩けさせていた。オマケに眼の下には見たこともないほどの濃いクマが。これは明らかに生命力を大量に削られているに違いない。ひと目で解った。
あたしの考えが甘かったわ。相手がどれほど強烈な怨霊であれ、愛していることには違いないのよね。そもそも想いを重ねる若い男と美しい女が同じベッドで大人しく眠りにつく訳が無いのよ。どうしたって感じ合わずにはいられなくなる。これは急がないと本当に命取りになりかねないわね。