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「「「『水龍』様……?」」」
3人の声が重なった。思わず聞き返した俺達の言葉を聞いて、青年はしまったという顔をする。その隙を見逃すめめではない。
めめ「『水龍』様とはなんですか?」
長い沈黙の後に、彼は恐る恐る口を開く。
青年「……『水龍』様は俺たちに水を恵んでくださるお方だ。ここは水不足になりやすい土地だったが、『水龍』様のおかげで数百年前は水不足になることはなかったんだ」
まるで物語を語るように、彼の話は続く。おそらく、実際に伝承話として老人達にから聞かされていたのだろう。
青年「でも、『水龍』様が時々眠ってしまわれて、水を恵んでいただけない時があった。そのたびに村に『水の使者』様が現れて『水龍』様を起こしに行ってた。何回も何回も。何代も何代も」
いえもん「だから『水の使者』か…」
『水龍』を起こしにいって、水が貰えるようにする。まさに『水の使者』だ。
青年「…百年くらい前にまた『水龍』様が眠られた。だから、いつも通り『水の使者』様が現れると思ってたけど、探してもいなかった…。『水龍』様は、今も眠られたままだ」
それは変だ。それならなぜこの村は_
青年「…だから、今俺達は困ってるんだよ…!魔石の一つや二つ見逃してくれよ!」
思い浮かんだ疑問を俺が口にしようとすると、衝撃の言葉でそれが妨害された。
盗みを見逃してくれだって?ふざけるのもいい加減にして欲しい。
レイラー「珍しく素直に答えていたと思ったらただの命乞いだったんですね。…もういいです。聞き飽きました。これ以上師匠の手を煩わせるわけにはいきません。私が始末します」
レイラーの声に怒気が混じる。彼女の堪忍袋の尾が切れたようだ。
めめ「待ってください。まだ聞きたいことがあります」
めめがレイラーを止め、青年に向き直る。
めめ「さっき『水の使者』だと思ってた人がいた、と言っていましたね?その人はどこですか?」
そうだ。さっきの話で忘れかけていたが、俺達は本来『水の使者』を探すためにこの村に来たんだった。
青年「……俺はこの先どうなるの?この後殺されるならそれは言えない」
めめはすっと目を薄めて青年を睨む。
めめ「こんな状況で交渉するつもりですか……。…分かりました。知っていることを全て正直に話すなら殺しません。」
青年「………あいつは、村のどこかでに閉じ込められている。詳しい場所は知らない」
めめ「……ッ!!!」
青年の言葉を聞いた途端、彼女の目が大きく見開かれる。その目が潤い、顔色がどんどん青色に染まっていく。と同時に、唇が微かに震え始め、それが徐々に全身に広がっていった。震えが彼女から立つ力を奪っているかのように、崩れてしゃがみこむ。
普段は見せないめめの異常な様子に、俺はただ唖然としながら彼女を見つめることしかできなかった。
めめ「…ッㇵ!………っぁ!、……」
青年「…っは、……?」
青年もいきなり形相を変えためめに動揺しているようだ。
レイラー「っ師匠……」
どうやら過呼吸になっているようで、俺達の声は聞こえていない。レイラーが近づき彼女の背をさする。めめを映すその目は、心配の色が強く出ていた。
めめの浅い息が少しずつ深くなっていく。かと思うと、青年を縛っていた闇の魔法が解けた。それが分かると、青年は逃げるようにどこかへ行ってしまう。
しばらくするとめめの荒い息が収まり話ができるようになった。
レイラー「大丈夫ですか?」
そう優しく声をかける。
めめ「………すみません……心配かけて………もう大丈夫です」
そういいつつも彼女の表情は凍りついたまま固定されている。震えも収まっておらず、明らかに大丈夫という様子ではない。
いえもん「めめさん……」
めめ「……大丈夫ですから。忘れてください。……忘れたいんです」
頑なに本心を否定する様子を見て、そこに踏み込んでしまってはいけないような、彼女の心の闇を覗いてしまったような感覚に陥る。
これ以上俺に考える隙を与えないためか、めめは強引に話題を変えた。
めめ「それより、水の使者だと思われていた人を探し出しましょう。レイラーさん、エリアサーチは使えますか?」
レイラー「もちろん使えます!」
レイラーはさっきの様子だと、めめに何があったのかを知っているようだった。しかし、敢えていつも通りに振る舞ったように見えた。
めめ「では、村全体にエリアサーチをかけてください。今ある魔力を全て使うことになると思いますが、もし敵がいた場合私が殺しますので。とにかく全力でお願いします」
レイラー「分かりました!範囲が広いので魔石も使いますね」
そう言うと、彼女は鞄の中から拳より少し小さい大きさの魔石を取り出し、両手で体の中心に持つ。そして集中するためか、彼女の両目が瞑られた。
レイラー「エリアサーチ…!」
彼女の身体から白色の光が微かに漏れ出し、光の膜が周りへ走るように広がっていく。とはいっても光はとても弱く、広がっていった空間の違和感がほとんど感じられない。クシャレ村の村人は魔法が使われたことに気が付かないだろう。
光の境界線が村の端に届くと、それが水に浮かんだ泡のように儚く静かに消えていった。
レイラー「……見つけました」
閉じられていた目がゆっくりと開き、その言葉が静寂の中に紡がれる。
次回に続きます。
はいというわけですが前回誤字をしたので訂正させてください。前の最後に『水神』と書きましたが本当は『水龍』でした。(今は直ってます)これから気を付けます。期限ギリギリに慌てて書いたら誤字ってました。今度はもう少し余裕をもって書きたいです(願望)
今回も補足はありません。
ってことで!また来てね!