テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『脈打つ肉の繭、骨が紡ぐ家具』サイト-19の超厳重生物隔離セクター。アイは、極厚の三重防爆ガラスの前に立ち、隔離室の真ん中に鎮座する「巨大な肉の塊」をじっと見つめていた。その直径数メートルにおよぶ異形の部屋は、まるで生き物のように「ドクン……、ドクン……」と、不気味な重低音を響かせながらゆっくりと脈打っていた。「これより、SCP-002の内部ミームの波動測定、および防護障壁のテストを開始します。ルイ、イマニ、精神汚染フィルターの出力を最大に保って」アイの引き締まった声が、冷たい実験室に響いた。「了解……。部屋の周囲の細胞活性、急速に上昇中」「いつでも緊急殺菌システムを起動できるよ!」感覚共有双子のルイとイマニが、全く同時に息を呑みながら、キーボードを叩いて防御システムを稼働させた。アイの足元では、オレンジ色の999が「プニュゥ……」と、その肉の部屋から漂う「過去に犠牲になった人々の底知れない怨念」に、悲しそうに体を小さく縮めてアイの足首にぴったりと張り付いていた。キャスター付きの一つ目ロボット、ベニヤとキハダの2匹のアイポッドも、チチチという駆動音を完全に消し、一つ目のレンズの焦点をその不気味な肉の部屋の「鉄製のハッチ(入り口)」へと真っ直ぐに向けて固定していた。アイの腕の中では、白いウサギのウォルターが、部屋の内部から聞こえる「骨が擦れ合うようなカタカタという微かな音」を捉えようとお耳をピンと立てている。このSCP-002は、通称「生きている部屋」。一見するとただの肉の塊だが、ひとたび鉄のハッチを開けて人間が中に入ると、部屋はその人間を跡形もなく溶かして吸収し、その人間の体を使って新しい「家具」を作り出してしまうのだ。部屋の中にある美しいランプは人間の皮膚でできており、ソファは人間の肉と骨で組まれている。ガチ、ガチガチッ……!突如として、隔離室の中のSCP-002の鉄製ハッチが、内側から激しく激震を始めた。肉の壁が波打つように膨れ上がり、ハッチの隙間から、まるで新しい獲物を誘い込もうとするかのように、甘ったるい死のミーム香気がじわりと染み出し始めた。その香りを嗅いだ人間は、自ら進んであの肉の部屋の中に入りたくなるという、恐ろしい精神汚染を引き起こすのだ。「ルイ、イマニ、今よ! 脳波を保護する高周波ジャミングを起動!」アイが鋭く叫ぶと、ルイとイマニが同時に緊急レバーを強く引き下げた。「精神防護パルス、照射開始!」隔離室の中に特殊な遮断波動が満ち渡り、部屋から漏れ出ていた甘い香りが、一瞬にして中和されていく。「プニィィィィィン!」すかさず999が前に飛び出し、防爆ガラスの表面全体を覆うように自身の体を大きく引き伸ばした。999の全身から、激しいオレンジ色の「生きる希望と絶対的な愛の波動」が放たれ、肉の部屋が放つ「人間を喰らうドス黒い捕食本能」を、根こそぎ優しく包み込んで深く癒やしていった。その愛の波動とジャミングの相乗効果により、脈打っていた肉の部屋は、まるで満腹になって眠りにつく獣のように、みるみるうちに穏やかな元の周期へと静まっていった。「ウォルター、仕上げをお願いね」アイの指示を受け、腕からコンソールの裏側へと這い入っていったウォルターが、肉の部屋の異常な生体電流をデータバンクへ流していた「生体ファイバーケーブルの結び目」の前に辿り着くと、ちいさなお口を開けてそこをカリッと一噛みした。カチリ。澄んだ音が響いた瞬間、モニターに表示されていたSCP-002の不気味なバイオノイズが一斉に消え去り、完全に安全な「休眠状態」へとロックされた。ウォルターの能力によって、部屋が外部へ向けて精神汚染を広げる因果のルートが、完全に解きほぐされて消滅したのだ。「ふぅ……。今回も未然に防ぎきったわね」アイは深く息を吐き出し、手元の実験ノートに『SCP-002(生きている部屋)の定時防衛テスト完了。発生した活動活性化は、アイポッドのデータ監視と999の希望波動のコンビネーションにより、被害を出すことなく完全に無力化。さらにウォルターの概念切断により、完全に休眠状態へと再収容した』と、確かな筆跡で書き込んだ。ルイとイマニは「あの部屋の家具には、絶対に座りたくないね……」とホッとしたように顔を見合わせて笑い合い、腕の中のウォルターもお鼻をピクピクさせてアイの顔を見上げている。ベニヤとキハダも安堵したようにチチチと車輪を回した。どれほど恐ろしい「肉の部屋」が人間を飲み込もうとも、この強い絆と、光と希望を持った仲間たちがいる限り、財団の明日が失われることは絶対にない。アイはノートを閉じると、大切な仲間たちの温もりを感じながら、世界の闇を封印し続けるための確かな笑顔を浮かべるのだった。
368
コメント
1件
おつかれさま〜!第22話、読了したよ🥀 もうね、今回もすごかった……「SCP-002(生きている部屋)」の描写がめちゃくちゃ生々しくて、読んでるこっちまで無意識に息止めてた。皮膚でできたランプとか、肉と骨で組まれたソファとか、その発想だけで背筋がヒヤッとするのに、アイたちが冷静に対処してるのがかっこよすぎる。 特に999が希望の波動で捕食本能を包み込むシーン、めっちゃ好き。あのオレンジが、この作品の唯一無二の優しさなんだよね。あとウォルターがケーブル噛んで因果を断つところ、小さな存在だけどめっちゃ頼もしかった。 「どんな闇があっても、絆と光があれば大丈夫」って思わせてくれる終わり方、すごく温かかった。続きもじっくり読ませてもらうね🌙✨