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領主の館の執務室は張り詰めたような緊張感に包まれていた。

シャーリィは表情を変えること無くマーガレットをじっと見つめていた。出入り口はカテリナが塞ぎシャーリィの後ろにはセレスティンが控える中、冷や汗を流しながらもマーガレットは口を開く。

「その砲弾について、私は一切何も知りませんわ。我が名誉にかけて誓わせていただきます」

胸に右手を添えて誓いを立てるマーガレット。それは帝国最大の宗教団体『聖光教会』系統の誓いを立てる作法である。

ただ、『勇者』であるシャーリィに対してそれを行うのも妙なものではあるが、それを知るのは極少数であるためここでは問題になら無い。

「知らなかった、そう仰るのですか?」

シャーリィは表情を変えること無く問い返した。

「ええ。そして先程の質問にも回答させていただきますわ。私は貴女の敵ではありません。むしろ友だと思っておりますの。不愉快でしたかしら?」

マーガレットは問いに答えて、努めて笑顔を浮かべる。今この場で言葉を間違えれば、二度と生きて部屋を出られない。彼女はそう直感していた。

「では、この砲弾については一切関知しないと仰るのですね?」

「私は知りません。しかし、心当たりはあります。貴女なら理解していただけると信じています」

「……ライデン会長ですか」

マーガレットが時折ハヤト=ライデンの悪癖について愚痴を溢しているのを知っているシャーリィは、何処か同情的な視線を向ける。

「残念ながら、私もお父様が開発しているもの全てを把握しているわけではありませんの。何より、お父様の発明は画期的すぎて用途を理解することにも時間を要しますから」

「この砲弾はその一種であると」

「恐らくは。こんなものを造り出せるのはお父様だけですわ。ただ、父の不手際で犠牲者が出てしまったことも事実。その件については、心から謝罪します」

深々と頭を下げるマーガレット。そんな彼女を見て、シャーリィも少しだけ警戒を下げた。

「……規格外の親を持つ苦労は理解できるつもりです。今回は貴女の誠意を信じます、マーガレットさん。貴女は私を友と呼んでくれましたからね」

「偽り無い本心ですわ。貴女は我が社の、お父様の発明に理解を示す数少ない方ですから。それに、同年代としても頼りに思っています」

「今後も変わらぬ関係を望みます、マーガレットさん。また何かありましたら、お気軽にお越しください。貴女は最優先で通すように通達を出しておきますので」

「ありがとうございます。明日には本社へ戻ろうと思っておりますわ」

「ふむ、明日ですか。それなら、アークロイヤル号で送りましょう」

「そんな、お構い無く」

「先々月から石油の輸送を行っていませんからね。便乗してください」

シャーリィの申し出を受けて、マーガレットは困惑した。まだ『血塗られた戦旗』との抗争は続いているのに、有力な海賊衆を交易へ回そうとしているのだ。

「あのっ、まだ抗争中で、海賊衆の皆さんは主力となるのでは……?」

「陸の戦いに飽きたと苦情が出てしまいまして。ライデン社との交易も大事ですから、代用戦力に目処が付きましたので交易を再開するんです。慢心ではありませんから、ご安心を」

今一納得していないマーガレットを帰し、室内には三人が残る。

「シャーリィ、良いのですか?不祥事であることに間違いはありませんよ?」

壁際に立つシスターカテリナが問い掛ける。

「ライデン会長の悪癖については把握していますし、内部事情にまで口を挟むわけにはいきません。ただ、警告を与えただけですよ」

「次はないと?」

「マーガレットさんは聡明な方、正しく意図を理解してくれているでしょう。今はそれだけで満足しておきます。ライデン社にはまだまだ活躍していただかないと困りますから」

「貴女の真意は分かりました。それで、海賊衆を手離す理由は?領邦軍が迫っているのですよ」

「不満が出ているのは間違いありません。エレノアさんが抑えてくれていますが、何れ限界が来ますからね。その前に本来の仕事に戻すだけです」

「戦力はどうするのですか?」

「ロメオ君達の尽力のお陰で、スタンピードの際に生じた負傷者の大半が復帰できるとの報告を受けました。これで戦力は二百名前後まで回復する見込みです。もちろん、本人の意思を確認した上で、です」

「なるほど」

「また、立て続けに起きた戦闘で自警団への志願者が増えているのも判断材料になりました」

「増えた?減ったのではなく?」

カテリナはシャーリィの言葉を聞いて首をかしげた。

「エーリカも困惑しています。もちろん私もです」

二人が困惑するのも無理はない。度重なる戦いは住民達に危機感を植え付けた。『黄昏』の住民は流民が大半であり、他に行く当てもない。

何より帝国全土で横行している圧政もなく、暖かく美味い食事に綺麗な寝床、遣り甲斐のある仕事は彼らに充実感を与えて一種の郷土愛を生み出していた。

その結果町を守ろうと自警団や『暁』戦闘部隊に志願する者が多く、被服関係の管理の傍ら自警団を率いているエーリカや戦闘部隊を統括するマクベスを困らせた。

当然中には他の組織の工作員が紛れ込んでいる可能性もあるため、先ずは自警団に入団させて訓練を開始していた。

当初は剣、槍などを装備していたがスタンピードで多数の被害を出したため、銃器へと装備が更新された。

幸い三者連合との戦いでリンドバーグ・ファミリーが保有していたリピーターカービンライフルを多数鹵獲していたため、それらを装備することとなった。

『血塗られた戦旗』との戦いにも一部は参加していたが、大半は予備戦力として町に残り訓練を継続していたのである。

「装備の更新も終わり、まあまだ訓練は初期段階ですが銃を撃つことは出来ますからね」

「マスケット銃の戦列歩兵を相手にする程度ならば問題はないと」

「はい、シスター。まだ自警団全員を投入することはできませんが、それでも十分な戦力になり増す」

「自警団に入れたのは、スパイ対策ですか?」

「身元の確認を行う余裕がありませんでしたからね。機密情報や重要な区画には一切近寄らせないようにしています。身元確認が済んで優秀な人材はそのまま戦闘部隊へ組み込む予定です」

「それなら問題はありませんか」

「ありません。セレスティン、何かありますか?」

「お嬢様の御意のままに」

深々と一礼するセレスティン。

「愚問でしたね。『ライデン社』への疑惑は一旦棚上げにして、事後処理を進めましょうか」

『暁』は事後処理を進めながら領邦軍を待ち受けていた。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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