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…友達と離れるっていう現実が出てきて笑ってしまいました🙃 ファンタジーだぁ…((短編集書いてみましょうかねぇ…。
Episode3.可愛い? 可愛くない?
※見たことのないキャラが居ます。だってこれが初出ですから。
※ただ会話してるだけ
◇ ◇ ◇
「……可愛くないのです」
「……は?」
困惑。傍らの友人の口から飛び出した言葉に、ノヴァ・オブシディアンは首を傾げた。その目には困惑の色がある。確かに、彼の友人である(自称)美少女のカルミア・アニマは「可愛い」や「可愛くない」とよく言っているのだが、それでも流石に突然すぎた。何か見ているのだろうかとノヴァはカルミアの手元を覗いてみたが、カルミアの手には何も握られていない。それが余計にノヴァの困惑を加速させた。
では、一体カルミアの言う「可愛くない」は何のことなのだろうか? ノヴァは考えてみた。……分からない。お手上げだ。ノヴァには、この突拍子もないことを言い出す友人の思考は全く分からないのだ。いや、これに関しては分からない方がいいかもしれない。カルミアの思考回路について考えてみても、刻一刻と時間が過ぎていくだけで、これといった気付きはなかった。
改めて、ノヴァはカルミアを観察してみる。顎に手を当て、何やら考え込んでいるようだ。その内容は、ノヴァにとってはどうでもいいことなのだが。
「リコリスと生徒会長はどう思います?」
「……何がですかね」
まさか、今日も2人にまで被害が及ぶとは。ノヴァは眉間にしわが寄っていく感覚がし、指で眉間をほぐす。そして横目で、隣で作業していた2人──この学園の生徒会長である青年、クフェア・ハイドと首席のリコリス・チューンを見た。段ボール箱の中身を整理していたクフェアが手を止め、カルミアに向かって問いかける。リコリスは、はてとでも言いたげな顔で首を傾げていた。
「だ・か・ら! この魔法獣、可愛くないですよね?」
「魔法獣? カルミアちゃん、魔法獣に興味があったの?」
「可愛いものは全部わたしの興味の対象なのです! ……ではなくて。これです! これ!」
カルミアが指さしたのは、とある動物のマスコット。それは、人々が生活を共にしている魔法獣であった。ふわふわとした毛が可愛らしい──とノヴァは思っていたが、カルミアにとってはそうでもないらしい。カルミアはマスコットを指さし、どの辺が可愛くないと思ったのかについて力説し始めた。それはもう、カルミアが可愛いと思ったもののどこが可愛いかを解説している時と同じくらいに。
「まずこれ! 目つきが悪いのです! 色合いは悪くありませんが、これでは悪い印象を与えかねません! 次に──」
「……」
ノヴァ、クフェア、リコリスの3人は苦笑しながら顔を見合わせる。こうなってしまえばもう、カルミアは自分が満足するまで止まることはない。上手い具合に聞き流す他ないのだ。カルミアによる魔法獣の可愛くない点の力説をバックに、ノヴァはそういえばそろそろ試験があったということを思い出し、勉強をしなければと考えていた。
それから十分後。クフェアは苦笑いでカルミアの話を聞き、リコリスは手が止まっているクフェアの代わりに段ボールの中の荷物を整理している。ノヴァは、そんな3人の様子を見ながら、大きくため息をついた。
「──ノヴァ! ノヴァはどう思いますか?」
「……会長とリコリスを巻き込むべきではなかったと思う。というかお前は自分の教室に戻れ、もう授業始まるぞ」
「え? ──うわっ、もうこんな時間! どうして教えてくれなかったのです!?」
昼休みの終わりを告げるチャイムは少し前に鳴ってしまった。カルミアは慌てて荷物を片付け、3年B組の教室を出てA組へと戻っていった。嵐のように去っていくカルミアの背中を3人は見つめる。
カルミアは3年A組、そしてノヴァ、クフェア、リコリスの3人は3年B組に所属している。1、2年と4人は同じクラスだったことにより仲良くなったのだが、急に1人だけ離れてしまうのは可哀想だとノヴァは思った。
いくら隣であろうとクラスが離れてしまったせいか、カルミアは休み時間の度に3年B組へと遊びにくるようになった。自分の作った弁当を持参して。そして、度々何が可愛くて何が可愛くないのかについて力説してくるようになった。1番仲の良い話し相手達が揃いも揃って別のクラスに居ることから、カルミアは話し相手に飢えているのかもしれない。3年生になってから、カルミアのマシンガントークは長くなった。
(……まぁ、悪くはないな)
「ノヴァ、次は薬学ですよね?」
「うわ、マジか……。なぁ、2人のどっちかノート写させてくれないか?」
「自分で頑張ってよ。ノヴァは地頭はそんな悪くないんだから、努力すればそれなりに出来るでしょ」
次は自分が苦手としている科目の1つである薬学だということを知り、ノヴァは落胆する。そんな様子を見て、クフェアは「仕方ないですね」と言いながら微笑んだ。リコリスも、似たような表情をしてノヴァを見つめる。……ここにカルミアが居たら、どのような反応をしていたのだろう。カルミアは薬学が得意なので、もしかするとノヴァのことを小馬鹿にするかもしれない。そんなことを考えながら、ノヴァは授業の準備を始めた。
◇ ◇ ◇
新キャラ2人のちょっとしたプロフィール
1人目(生徒会長)
名前:クフェア・ハイド
性別:男性
年齢:18歳
学園の生徒会長でしっかり者。ノヴァ達と仲が良い。
2人目(首席生徒)
名前:リコリス・チューン
性別:女性
年齢:18歳
学園の3年の首席。別の学園に双子の妹が居る。