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ゆうやみ飴🍬*⋆
5,012
むーむー
212
ロンリーユニバース
Aqu3ra様
この作品はあくまで物語としてお楽しみください。
キャラとしてお楽しみください。
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
天界の静まり返った自室に、無機質なアラームの音が響いた。
時刻は、夜中の二時。
無意味な時間にアラームを設定してしまった。
寝たいところだが、生憎私は一度起きると二度寝ができぬ体質だ。
仕方ない。
布団から体を起こす。
顔を洗い、早すぎる朝を楽しむ。
真面目な性格が勝ち、少し書類を読み通す。
天界だろうと仕事はある。
夜だからか、起きたばかりか、知らないが、集中力がない。
書類を机に置き、諦める。
当たり前だが、同居人たちは寝ている時間だ。
寝ぼけ眼で外を見る。
あくびを一つ。
星が綺麗だ。
それと同時に、記憶が一つ浮かぶ。
あの頃の淡い夜のことだ。
確か、あの頃もこんなふうに星が光っていたな。
ふと、外に出ようと思い、支度をする。
すぐに出かけよう。
ピカピカと光る星。
チカチカと、点滅する私の記憶。
甘くて苦い、初恋のような物語。
ずっと、あいつから電子信号が来ることを待っていた。
かつて地上で同盟を破棄し、敵対し、国交が途絶えたあの激動の時代。
届くはずのない電子信号。
実は今でもどこかで待っている自分がいる。
もう、信号など必要ないのに。
「.. / – .. … … / -.– — ..-.」
あの頃は、
天界などないと信じていた。
それが正しいと信じていた。
神がいるのだから。
天など、そんな幸福論あっちゃならんと、鎖を作られたぐらいだ。
懐かしい記憶を本格的に思い出す。
思い出の宝箱を、
カチリ、と静かに鍵で開ける。
溢れ出すのは、息ができないほどの万能感。
世界を二分するほどの覇権を握っていた、あの大英帝国。
その隣に並び立つことを許されたのは、極東の小さな島国だった自分だけ。
フカフカの雲が浮かんで、沈んでいくような、どこまでも行けるような。
重力なんて忘れて、宇宙の海を泳ぐように、夢の中で夢を見ていた。
夢中になって、宙を舞って。
私はどこまでも、
あの気高き、背中を追いかけていた。
ロンドンの霧。きらめく景色。
薄暗い執務室で、
二人で広げた世界地図。
あの頃の私たちは、
きっと、無敵だった。
なのに。
時代の波は、泡みたいにあの輝かしい日々を消していった。
『――日英同盟は、
これをもって失効とする』
冷徹な通告。
次に私たちがまみえたのは、硝煙渦巻く戦場だった。
敵同士として対峙した、あの日。
銃口を向け合いながら、英帝はひどく悲しそうに、けれど誇り高く笑っていた。
『泡みたいに俺たちの同盟が歴史から消えたとしても。君は、俺を忘れないでくれるよな?』
……ずるい男だ。
忘れるわけがないだろう。
そんな風に言われても
素直に「嫌だ、行かないでくれ」と
引き留めることもできなかった。
プライドとか、歴史とか、政治とか。
そんなクソみたいなもののせいで、
私は引き金を引いた。
その引き金は無駄であり、負けるが。
自分の独りよがりが、心底嫌になる。
私は、国際社会の中で
曖昧に傷ついたままで。
暗闇に取り残された、迷子のヒーローみたいだった。
ヒーローは、言い過ぎか?
でも、彼の隣に立つには、これぐらいでないと、いけないよな。
反重力の中を、
ただ一人でもがいていた。
「……はぁ」
夜の冷たい空気が、肺を白く染める。
気づけば、天界の端の家まで歩いてきていた。
星が、うるさいくらいに降っている。
「……いつまで引きずっているのやら」
ぽつり、と呟いた声は、誰に届くこともなく夜に溶けた。
けれど、不思議と今の胸にある焦燥感は、どこか心地よくもあった。
歴史に残り、
今も引きずられても、
案外、今はもう気にしていないのかもしれない。
だって。
あの激動の歴史の中で、
私は確かに英帝という男と巡り合い、同じ時代を
少しでも生きることができた。
それだけで、
私の世界はまぶしいほどの色で
満たされていたのだから。
「ありがとう、と、さよなら、か」
歴史の中でそれを何度も繰り返して、また新しい一日の
ページを刻んでいく。
そうやって、
一人で完結させようとしていた。
なのに。
「夜風に当たるにしては、いささか薄着が過ぎるんじゃないか? 日帝」
心臓が、跳ねた。
振り返れば、
見間違うはずもないシルエット。
何度も見た、あの姿。
小さな冠を指で押し上げながら、
ふっと優しく微笑む、あの男。
「英帝…!? なぜ、こんな時間に…」
「私が、歩いてはいけないのか?」
「いや、そうではないが…」
「たまたま、暇だから星の観測をしに来ていたのさ。」
顰め面をする。
「なんだ、その顔は?」
「そんなに私のことが嫌いかい?」
はぁ…
「なんの、顔もしていない」
「変なことを言うのはよせ、英帝。」
「ククッ、はいはい、すまないな。」
洒落たことでも言ってやろう。
「まぁ、星が綺麗ですね。確かに。」
「?、そうだな」
「まぁ、でも星が綺麗なのは、手が届かないからだと私は思う。」
はぁ………無自覚でこれを言うやつだから、嫌になるのだ。
どうせ、今ここにいるのも、元から夜更かしをしていて、私を見つけただけなのだから。
どこまでも過保護で、どこまでも調子を狂わせる男だ。
彼の手をとる。
あの頃はできなかった、口づけを星空の下で交わす。
届くはずのない電子信号は、
もういらない。
だって、今、私の目の前で、
彼が笑っているのだから。
彼と私はもう、歴史によって引き裂かれることはないのだから。
唇を放す。
ほんのりと頬を赤らめた、彼の顔を星が照らす。
天界の夜空に、魔法がかけられていくように光が差し込む。
「星が綺麗ですね。」
そう言い、抱きしめる。
離さないように、この輝くスターを逃さないように。
目に焼き付けるように。
彼と出会えたこのロンリーユニバースで生きる。
感想、リクエストがあれば欲しいです。参考にします…
読んでくださりありがとうございました。
コメント
1件
おお、めっちゃ良い……! 日英同盟を国家擬人化で描くっていう設定がまず刺さるわ。夜中に一人で星を見ながら過去を思い出す日帝の切なさと、そこで突然現れる英帝の「過保護で調子を狂わせる」感じ、最高すぎる。特に「星が綺麗ですね」って言葉を無自覚に言っちゃう英帝に日帝が呆れつつも惹かれてる空気感、すごく伝わってきた。敵同士だった過去を経て、天界で再会して口づけを交わすラスト、震えた。続き絶対読みたいです🔥