「私を殺して、精一杯の愛を込めて」
日菜は泣きそうな声で言った。
「日菜…」
「ワトソンくん、知ってるでしょ?私がこの学校きた時にも虐められてたの」
勿論。あのことを忘れたことがない。
僕らがまだ付き合っていない頃、日菜は虐められていた。
僕はきちんとそいつらを殺したが、日菜の心には深い傷として残っていたようだ。
「私、私ね、ワトソンくんは知らないだろうけど、生まれつきの痣があるの…」
日菜はそう言いながら、今までずっと、前髪で隠していた左目を見せた。
確かに、今まで見たことがなかった。日菜の左目を。
いつもいつも髪で隠していて、ずっと気になっていた。
日菜の左目の周りには大きく、火傷ともとれるような痣があった。
「私、この痣のせいで虐められてたんだ」
「前の学校でも、今の学校でも」
「必死に、必死に隠してたんだよ。だけどやっぱり隠し通せないもので、バレちゃった…笑」
「それでね『気味が悪い』『獣』『妖怪』『あの子は以上』なんて言われ出して、それでも私に寄り添ってくれたあなたには感謝してる」
日菜は泣いていた。
日菜自身も分かっていないんじゃないかと言うくらいに。
「あれ、あれ?」
「私、なんで泣いてるの…?」
「ねぇ…ワトソンくん…私を救って、この世界から…泣」
「うん、助けるよ」
日菜にそう誓った。
「嬉しい…笑」
「ねぇ、大好き。───くん」
日菜が初めて僕の名前を呼んだ。
だけど、その声は近くを通ったトラックのせいで聞こえなかった。
「日菜ッ!?」
そのトラックはそのまま日菜を轢いていた。
「はあ、はあ、はあ、!」
気づけば過呼吸になっていた。
息がしずらい。
上手く呼吸ができない。
目の前がぼやけて見える。
涙…?
日菜が何かを言っている。
何を言っている?
聞こえない。
日菜が轢かれたその事実が僕を壊していた。
「え…」
「あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!」
「日菜ッ!日菜ッ!!」
「〜〜!」
「〜〜くん!」
「ワトソンくん!」
ひなが何時もの呼び名で僕を呼んだ…
「わとそんくんしっかりして?笑」
「私、もう死んじゃうと思うの。だから最期に聞いて?」
「私貴方のことが大好き。死んでもいいくらいに。全てを貴方にあげてもいいくらいに」
「日菜ッ」
僕はもっと涙が溢れそうなのを我慢して、日菜に言った。
「ああ、僕も、僕も大好きだよ。世界一、宇宙一。君を愛してる。」
僕らは互いに抱きしめあった。
「ねえ、私が息をしなくなったら…私を人目のつかないところに…連れて…行って…」
「私を…食べ…てね」
「!うんッ」
日菜は絶命した。
トラックを運転していた人は逃げていた。
轢かれた所は幸いにもあまり人気のない道路だったので、日菜を連れ出すには苦労しなかった。
「日菜…」
「今から食べるよ…日菜の心臓…どんな味かな」
僕は黙って食べ始めた。
人の心臓を食べるので、こんなにも黙って冷静に食べたことはない。
日菜の心臓は、甘くて、酸っぱくて、何時も日菜が口にしていた、レモネードのような味がした
次の日僕は自殺した。
そのことは大々的に全国に放送された。
なぜなら、遺書に僕が連続心臓抜き出し殺人事件の犯人だと書いたからだ。
これは僕が日菜を救うまでの物語。
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