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健の喉が震えたまま、言葉はなかなか出てこなかった。
夜の森は静まり返り、聞こえるのは私たちの荒い息と、木々が風に揺れる音だけ。
『……ホンマに、後悔せぇへんか?』
低く、かすれた声。
私は一歩近づく。
「後悔なんてしない。だって、健は健だもん」
その一言で、健の瞳がわずかに揺れた。
でも次の瞬間、彼は私の肩を掴み、強く突き放す。
『アホや……紗羅は優しすぎる。俺とおったら、呪いに飲み込まれるかもしれんのやぞ!』
突き飛ばされた衝撃で、背中が木にぶつかる。
痛みよりも、その必死な拒絶の方が胸に刺さった。
健は、本当に私を守ろうとしてる。
でも、それは間違ってる。
私は立ち上がり、もう一度彼の正面に立つ。
「じゃあ……呪いが完全になる前に、二人でなんとかしようよ。」
『そんな簡単に言うな……』
健の声が途切れる。
その時だった。
彼の胸元から、まるで心臓の鼓動とは違うもうひとつの“ドクン”という音が響いた。
私の胸の奥にも、不思議と同じリズムで鼓動が走る。
「……え?」
互いに目を見開く。
鼓動が重なるたび、森の空気がわずかに揺れていくのを感じた。
この感覚……
もしかしたら、呪いを解く鍵かもしれない。