すると彼のお兄さんが、ビールをグラスに注ぎながら言った
「その通りさ、俺のジムに所属する格闘家の中には、乱暴なヤツもいれば、リングの外では虫一匹殺せないようなヤツもいる・・・パリピも逆に孤独を好むやつも家族思いのヤツも・・・・ 」
そう言ってお兄さんは彼の頭をクシャクシャにした、少し恥ずかしがっている彼が可愛い
「落伍者もいれば大学の学位をいくつも持っているものもいる、しかし優秀な格闘家のほとんどに共通しているのは、礼節を重んじ、自分を高めるために努力を怠らないという事だな、まぁ本当にそれだけなんだがな・・・・」
私にしてみれば柚彦君は、今までで出会ったどんな男性とも違って、人に誠実で礼儀正しかった・・・他の格闘家を知っているわけではなかったのだが
「柚彦君は・・・とっても強いですね・・・ 」
お兄さんが笑って言った
「こればかりは俺のトレーニングのおかげだな、たしかにコイツは強いし、自分でもわかってることでしょう、しかし格闘技では身ひとつで負けることもあるし、どんな格闘家でも相手につかまる可能性はある
だからこそコイツの対戦カードはとても慎重にしてるんだ、コイツにふさわしい対戦相手を見つけてやれるのが俺の仕事だからね」
柚彦君も話を続ける
「実はお花屋さんはこの兄さんの奥さんのお店なんだ、そこを手伝ってるんだけど、試合前になったら一日8時間のトレーニングをしなきゃいけないし、実際ここ数日は鈴ちゃんとゆっくりする時間もなかったから・・・ 」
シュンとした彼を見ると、愛しさがこみ上げてきた、それじゃここ数日うちに来てもすぐ寝ていたのは・・・・
そんな過酷なトレーニングを受けても、私に会いに来てくれていたなんて・・・私は胸がキュンとなった
「そんな弟だが、どうかこれからも仲良くしてやってくれないか」
改めて彼のお兄さんにそう言われると、なんだか緊張して思わずハイッと大きな声が出た
私は大きな予感に胸を膨らませた
きっと私は二つの側面を持った彼が大好きになるだろう
お花屋さんのぽやぽやフェアリーの彼も、鬼神のごとくリングで戦う彼も・・・・
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