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素朴な造りで、外には洗濯物が干してあった。 中に入ってライラの部屋を探すと、すぐに見つかった。
彼女の部屋はかわいいものであふれていた。
人形、置き物、家具までかわいらしい。
寝台もまたライラの好きそうなデザインで、その上に彼女は横たわっていた。
赤い顔でうなされていた。
……父の夢を見ているのだろうか。
ヴィンセントは彼女を不憫に思いながら寝台のそばにあった椅子に腰掛けた。
たまに熱冷ましを濡らし直した。
ヴィンセントが来てから一時間ほど経った頃、ライラは目を覚ました。
ライラが徐にヴィンセントの方を向くと、彼は美貌を歪ませていた。
ライラは少し驚いたような顔をして、くすりと笑った。
「いつの間に来たの?」
「……一時間ほど前だ」
「そっか。来てくれてありがとう」
ライラはふわりと笑みを深めた。
苦しいだろうに、彼女は笑顔を浮かべていたのだ。
なんて健気な。
ヴィンセントはどこか歯痒さを感じた。
それからというもの、年月はあっという間に過ぎ去っていった。
ヴィンセントのライラへの愛情は深まるばかりだった。
彼女がヴィンセントに優しくする度、笑いかける度、ヴィンセントはますますライラに魅了された。
ヴィンセントが十代後半になった頃には、もうライラを手放せなくなってしまったほど、彼は彼女に対して重い愛情を抱いた。
ヴィンセントが十八歳になる年のある日。
ライラと共に父に呼び出された。
父から放たれた言葉は、まさに衝撃そのものだった。
父は、ライラをヴィンセントの妻に考えていると言ったのだ。
事前に何も聞いていなかったから、 驚かないわけがなかった。
ヴィンセントは嬉しい反面、彼女の気持ちが心配だった。
もしライラがヴィンセントのことを友人としてしか見られなかったとしても、結婚した場合、跡継ぎを産んでもらわねばならないからだ。
ライラの答えは、ヴィンセントをこの上なく舞い上がらせた。
ライラへの想いは最高潮になり、幸せな気持ちで満たされた。
ヴィンセントは隣で眠っている妻の髪を撫でる。
自分が朝になるまで付き合わせたせいで疲れ果ててしまったが、すやすやと健やかな寝息を立てている。
ライラには迷惑をかけてばかりだが、彼女を手に入れることができて、ヴィンセントは安堵しているのだ。
同時に、もう悲しませることがないように、彼女を幸せにしようと誓った。
ライラの人生が、笑顔であふれたものになるように。
ヴィンセントはライラのかわいい寝顔に、ふっと笑みをこぼした。