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「俺は——」
喉が震える。
逃げないって決めた目。
もう笑っていない。
「ずっと前から岩ちゃんが好き」
はっきり。
迷いなく。
空気が、凍る。
心臓がうるさい。
ずっと欲しかった言葉。
ずっと待ってた言葉。
なのに。
「……遅ぇよ」
声が、震える。
及川の瞳が揺れる。
「もっと前に言えただろ」
涙が滲む。
「俺が傷つく前に言えただろ」
胸が痛い。
好きだって言われて、嬉しいのに。
同時に、怖い。
「昨日キスして、なかったことにしようとしたの誰だよ」
「壊したくないとか言って、逃げてたの誰だよ」
言葉が止まらない。
止めたら、崩れる。
「今さら本気って言われても、信じられねぇ」
本音。
いちばん怖いのはそこだ。
信じて、また引かれたら。
もう戻れない。
「岩ちゃん」
及川が一歩近づく。
「本気だよ」
「やめろ」
即座に遮る。
「それ以上来んな」
その声に、はっきりした拒絶が混じる。
及川の足が止まる。
「……怖いんだよ」
岩泉の肩が震える。
「お前、平気で距離変えられんじゃん」
付き合って、別れて、笑って。
なのに今さら一途って言われても。
「俺はそんな簡単に切り替えられねぇ」
沈黙。
及川の手が、ゆっくり下がる。
「……そっか」
小さな声。
「俺のせいだね」
笑えない。
言い訳もしない。
「好きなのは本当だけど」
喉が詰まる。
「今は受け入れてもらえないのも、本当か」
俺は何も言えない。
言ったら、揺らぐ。
「わかった」
その一言が、静かすぎて怖い。
「追わない」
胸が、ひゅっとなる。
「ちゃんと考える時間あげる」
優しさみたいで、突き放しみたいで。
「だから」
ほんの一瞬だけ、目を合わせる。
「嫌いにはならないで」
それだけ言って、及川は手を離す。
今度は本当に、追わない。
背中が遠ざかる。
足は、動かない。
止めたい。
でも。
怖い。