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こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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限界社畜リーマン青×代行業桃パロ2話目
宣言通り、ないこは次の日もその次の日も俺の前に姿を現した。
初日と同じ青い花束を肩にかつぐようにして立っていて、すらっとした細身の体はそれだけで映える。
違うことと言えば、服装は1日目のようにかっちりとしたスーツ姿ではなかった。
2日目はだぼっとしたズボンに白いTシャツと黒いパーカー。
じゃらっとしたシルバーアクセを身につけていて、どこぞのラッパーのよう。
3日目は襟付きのシャツにスキニーパンツという、清潔感ある好青年風だった。
…これも依頼人の指示なのかもしれない。
2日目は定時、3日目は2時間の残業があったというのに、会社を出たところでないこは待ち伏せていた。
不規則にも対応してくる辺り、こいつは俺の定時時刻からずっと待ち続けているのかもしれない。
いくら仕事とは言え、依頼人のわがままのようなこんな頼みによく付き合えるな。
呆れるでもなくむしろ感心させられたけれど、決して他人事ではない。
ないこが連日待ち伏せるということは、それだけ社内の人間の目にも止まる。
幸い初日のあの1回では特に噂になるようなこともなかったようだけれど、今後1週間も続くとなるとこの状況はいただけない。
「せめて裏口にせん?」
うちの自社ビルには、ほとんど誰も使っていないような裏口がある。
警備員すら存在せず、ICカードでセキュリティが守られているだけの割と不用心な場所。
そこを教えたせいで、ないこは3日目からそこで俺を待っていた。
「好きです、付き合ってください」
花束を前に差し出されてのその言葉に、俺の方は肯定も否定もしない毎日。
ないこがそのセリフを真剣な表情で告げるだけの、意味があるのかないのか分からないような2人のルーティンになった。
押し付けられた花束は、3日目ともなると相当な量だ。
家に持ち帰ったとしても、これ以上入れておく花瓶なんてものはない。
仕方ない、週末にでも買いに行くか。
そう決めながらもとりあえずの応急処置のように、大きめのバケツに水を張って花をぶちこむ。
プレゼントしてくれた人が見たら、きっと悲しむだろうと思わされるひどい構図ができあがってしまった。
4日目、その日は定時で上がれるはずだった。
それなのに終業時間間際になって一本の電話が舞い込んだ。
その着信音ひとつで全てが覆ってしまう。
予想外のトラブルだった。
取引先すら巻き込んでのその事態に、部署内総出で対処に追われてしまった。
関係各所に電話をし、頭を下げ続ける。
俺の上司は直接出向く事態にまで発展していたし、残った全員で息つく間もなく社内を奔走する。
ようやく上司も戻り事態も一段落がついたと思われた頃、壁にかかった時計の時刻はてっぺんを越えようとしていた。
「何とかなったな…」
自席に戻った上司が、そう安堵の息を漏らしながらぐるりとフロアを見渡す。
「皆もお疲れ様。帰ってゆっくり休んでくれ。ひどい雨だから気をつけて」
そんな言葉が続いた瞬間、俺はようやく我に返った。
呼吸すら忘れたように仕事に没頭していたせいですっかり失念していた。
そうだ、ないこ…!
そう思いかけて、ふと思考を一旦止める。
確かに上司の言う通り、窓を叩く雨音は強い。
仕事に集中していたせいとは言え、これに気づかなかったなんて信じられないほどの強烈な雨だった。
…こんな雨の中、いくらなんでも待ってるわけがない。
いつも通り定時に合わせて待ち伏せしていたんだとしたら、もう余裕で6時間以上が経過している。
だから、いつも通り俺は表から帰ればいい。
そう分かっているしそれが正しい判断だと知っているはずなのに、俺は鞄を手にした瞬間、社内の裏口へと駆け出していた。
エレベーターを待つ時間すら惜しくて、非常階段を駆け下りる。
1階にたどり着いた時、いつも通りそこには警備員1人いなかった。
不用心で無機質な扉にICカードをかざす。
開いた瞬間、外の風と雨が勢いよく吹き込んできた。
「…っ」
予想以上の悪天候に、眉を寄せて目を細める。
腕をかざすようにして顔を覆ったけれど、斜めに降り注ぐ雨は防ぎきれない。
容赦なくシャワーのような雨を浴び、たった一歩外に出ただけなのにこの始末。
あぁこれじゃあ、尚更ないこが待っているわけもない。
そう思った、その時だった。
「まろ!」
ここ数日ですっかり耳に残るくらい聞き慣れてしまった声がした。
少し掠れたボイス。低音なのにそれでもどこか愛しさのようなものを感じさせる、甘めの声。
「……っ」
信じられない思いで、声のした方を勢いよく振り返る。
何で、なんて言葉は愚問だ。
それよりもこんな天気の中、傘も差さずにそこに立っていることに声を荒げたくなった。
だけど、そんな説教じみた言葉も喉でひっかかって出てこない。
ずぶ濡れになってピンク色の前髪から雫を垂らしたないこは、そんなことは気にしない素振りで俺の前に立った。
ここ数日で1番カジュアルな格好。
Tシャツにデニムなんていうシンプルすぎる服装だった。
雨で濡れたせいか、そのシャツは肩にぺとりと張り付いている。
「朝天気予報見てくんの忘れたー。やべーくらい降るじゃん」
快活に笑って、ないこは二の句を継げずにいる俺ににこりとその笑みを向けた。
茫然と立ち尽くす俺なんて気にも留めず、後ろ手に持っていたいつもの花束を差し出してくる。
「好きです、付き合ってください」
いつも通りのセリフを、いつも通りの声で君は吐く。
ぎゅっと目頭が熱くなったのを感じた瞬間、俺は目の前のそのずぶ濡れの細い肩に手を伸ばし、自分の方へ抱き寄せていた。
コメント
4件
えっっ ちょっとライブ以降初めて泣いちゃった(泣) 桃くんの青くんに対する気持ちがとっても強く、感動してしまいました!! しばらく見れてなくてコメントしていなくてすみませんでした。 お詫びに時間が許す限り♡を押させてもらいます! 本当にすみませんでした(´;ω;`) これからも無理ない程度に頑張ってください! 陰ながら応援させてもらいます!!
投稿有難う御座います.ᐟ.ᐟ どれだけ遅くても依頼人の為に待ち続けてる桃さん 本当に仕事に本気何だなと強く感じさせられます✨ 雨降ってる中でも青さんが来ると信じて待っていたんですかね... .ᐣ それだったら素敵すぎます.ᐟ.ᐟ🪄💘 無理せず頑張ってください.ᐟ
桃さんの仕事人っぷりが2話は強く感じます...、!! 日毎に服が変わるのも細かく書かれているのでより想像しやすくて魅力に引き込まれてます...✨✨ 抱きしめた時の青さんの心情が気になってうずうずしてしまいました...😖🎶 今日も癒されました...投稿ありがとうございます!!