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私としてはかなり余裕を持って助けたつもりなのだが、彼等にとってはかなりギリギリだったように感じているみたいだ。
魔物の攻撃を受けそうになっていたジーンが、腰を抜かしたまま立てなくなってしまっている。
きっと、怖かったのだろうし、緊張の糸が切れたと言うのもあるんだろうな。
僅かなミスが文字通り致命傷になってしまうのだ。大事にならなくて良かった。
それはそうと、彼等は非常に驚いた顔をしているな。まぁ、先程まで私の姿などまるで見えなかったのだから当然だ。だが、彼等が対峙していた魔物が誰によって仕留められたのかは、理解しているようだ。
「えっ、あのっ、いつの間に此処に…?」
「聞き覚えのある声が逼迫した声色で聞こえてきたからね。声がする方へ駆けつけてきたんだ。走る速さには自信があってね、平原であるなら例え貴方達が麦の一粒ほどの大きさに見えるような距離だろうとも、十秒以内に駆けつけて見せるさ」
「それはそれでとんでもないですね…」
「俺、獣人《ビースター》なのに全然そんな速さ出せる気がしねぇぞ…」
「めがみさまっ!助けてくれてありがとうございましたっ!」
私の足の速さに対して獣人であるジーンが自信を失いかけてしまっている中、パーティの中で唯一の女性である少女の冒険者が礼を述べてきた。
年齢としては昨日冒険者登録をした一緒に馬車に乗った少女達と同じかやや上と言ったところか。いや、今はそれはいいか。
それよりも、彼女は私を女神だと思いたくて仕方が無いようだ。早めに女神では無いと伝えておかないと。
ただ、実際のところ家の皆はともかく、”楽園”の住民達は私のことを森の主と認めてからというもの、妙に強く慕われているような気がしてならない。
それこそ、一種の信仰のようなものにすら感じてしまうほどだ。
ここ最近、彼等の私に対する思いが、一種のエネルギーとして感知できるようになってきているのだ。
ただでさえ姫と呼ばれることに妥協していると言うのに、それ以上の存在に仕立て上げるのはできれば止めてもらいたい。
というかだ。
彼等の私を慕う気持ちを明確なエネルギーとして理解できてしまっている以上、やろうと思えば私に届けられた彼等の思いをルグナツァリオ達のように自らの力に変換できてしまいそうな気がしてならないのだ。
それはもう、定義として神格化してしまっているようなものじゃないか。できれば、私に対する思いをもう少し手加減してくれるとありがたい。私は神になどなるつもりは毛頭ないのだ。
そう言うわけだから、私を女神と呼ぶのは全力で否定させていただく。
「慕ってくれるのは嬉しいけれど、私は女神では無いよ。私はノア。ただのしがない竜人《ドラグナム》さ」
「っ!?!?」
「へっ?そ、その名前って…まさかっ!?」
「ギルドマスターから王都の冒険者ギルドに所属する全員に通達された規格外すぎる冒険者って…。貴女のことだったんですねっ!?」
「まぁ、今回と言い『清浄《ピュアリッシング》』の時と言い、聞いただけじゃ到底信じられないことだったからなぁ…。そりゃギルドマスターも絶対に怒らせるなって毎日朝昼晩に通達に来るわけだ…」
「めがみさま…」
この少女にとって、ベタベタな状態から元に戻してもらえたことはとても好印象だったのだな。
だが、あの程度のことならばいっぱしの冒険者になれば誰にでもできておかしく無いことなのだ。その点も帰りの道中、説明してあげるとしよう。
「とりあえず…うん。このファランザン、解体してしまおうか。それが終わったら、皆で王都に帰ろう」
「い、良いんですかっ!?貴女なら俺達のことなんて置いて帰ることだってできるのに…。あ、ファランザンは貴女が全部貰っちゃってください!助けてもらったのに何もないなんて申し訳ないですし…」
「つーか、今の俺達に支払えるものがそれしかねぇとも言う」
応急手当されているベアーの左腕にこっそりと魔力を与えて自己治癒能力を強化しながら、今まで放置されていた魔物の処遇について話をする。
彼等が先程まで対峙していた魔物の名は、ファランザン。
今は亡き古い国の言葉で”荒野を駆ける牙”、という意味があるらしい。この辺り一帯は碌に起伏や岩場、樹木の無い草原なのだが、そんな草原を縦横無尽に駆け回っているのがこの魔物だ。
外見は獅子によく似た6足の獣のような外見をしている。それでいて顔は毛の生えた蜥蜴に近い見た目をしていて、名前が指すように大きな牙を上下の顎から露出している。後、尻尾は無い。
人間と比べてかなり巨大で、体長は約5メートル、足を全て設置していた時の全高は最大で3メートル近くある。
それでいて”中級《インター》”ランクの魔物の中では地上に置いて最速の部類であり、”中級”に昇級したての彼等ではこのファランザンの動きを捉えることすら難しかったのは容易に想像できる。
ちなみに、ファランザンの体毛はあまり長くはなく、せいぜい2~3センチほどだ。ただ、毛の質自体は柔らかいので、触り心地は悪くない。
名前が示す通り、最大の武器は、上下の顎から最大70センチまで伸びた鋭い牙だ。その牙を自慢の速さを加えた状態で人間の短剣と同じような軌道で対象を切り裂いていくのがこの魔物の主な攻撃方法だ。
危険な魔物であるのは間違いないのだがこのファランザン、体毛が短いせいか他の同ランク帯の魔物達と比べて防御力はかなり低い。”初級《ルーキー》”相当の武器ですら容易に傷を与えられてしまうほどだ。
それ故、あらかじめ進行方向に設置られた罠などにはめっぽう弱い。自分の速度が速すぎるため、止まろうと思ってもなかなか止まれないので自分の早さ故に自滅させやすいのだ。
実のところ、突出した能力のある”中級”の討伐対象というのは、軒並み致命的な弱点や欠点が存在している。
というか、それだけの能力で弱点が無い場合は”上級《ベテラン》”相当の討伐対象として取り扱われることになる。
つまり、このファランザンにてこずっているようでは、まだまだ”中級”相当の強さに到達していないということだ。短い間になってしまうが、彼等にやる気があるのなら鍛えてみるのも良いかもしれない。
私が王都の冒険者達にこれから月末まで稽古をつけると言ったら、彼等はどういう反応をしてくれるのだろう。少し楽しみだ。
そうそう、このファランザンは獣のような外見をしているが、元々は魔力溜まりから生み出されたれっきとした魔物である。
繁殖能力も持っているため、全部が全部魔力溜まりから産まれてきているわけでは無いが、見た目が原因でよく間違われることがある。
その何が良くないかというと、魔力溜まりさえあれば同種の個体が産まれてくる魔物達は、今のところ絶滅の心配がされていない。
だが、魔獣は違う。魔獣という存在は力を持った獣が、膨大な魔力量によって肉体が変質した者達の総称だ。それ故に個体数が絶対的に少ない。
“楽園”のような魔力が豊富にある場所ならば話は別だろうが、基本的に魔獣が子を成しても産まれてくるのは通常の獣である。幾分かは魔獣になりやすいかもしれないが、力を得て魔獣になるかどうかは彼等自身にゆだねられる。
勿論、人間達が大魔境と呼んでいる”楽園”と似通った環境であるならば、魔獣から魔獣が産まれる事が十分にあり得るのだそうだ。ゴドファンスが教えてくれた。というか、彼も魔獣の間に産まれた魔獣だった。
そんな感じで、ファランザンの血抜きを行っている最中、ベアーをリーダーとした冒険者パーティにファランザンの対処法と魔物と魔獣に関する知識を教えていた。
ついでだ。近い内に月末まで自主参加性の稽古を行うことを教えておこう。
「へぇー…。なんかファランザンが魔物魔物って呼ばれるのに違和感があったけど、そう言うことだったのかー…」
「俺達の実力じゃ、まだまだファランザンと真正面からはやり合えないってことがよぉっく分かったな」
「な、何で俺を見るんだよ!?ファランザンとエンカウントしたのはもうどうしようもない事故だろ!?いやまぁ、ロプスフォルミガンにも苦戦してたから文句は言えないけどよぉ…」
「まぁまぁ、そんな自分達の力不足を実感している貴方達に朗報だ。私は今月末まで王都の冒険者ギルドで冒険者達に稽古をつけるつもりなんだ。というか、そうして欲しいとギルドマスターから要請が入った。多分だが、ランクに応じて少ないけれど稽古料を取る事になるかな?」
「ええーっ!?ノ、ノアさんが直接稽古をつけてくれるんですかーっ!?」
「最上位の冒険者が直接指導してくれるなんて…。ケチな依頼を受けてる場合じゃなくなったな!」
「強くて、優しくて、とっても綺麗なお姉様…。やっぱりノアお姉様はめがみさまでは…?」
なんかこの光景、前にも見たことがあるな?
ああ、そうだ。イスティエスタへと魔物の大群が来た時に目の前でドラゴンブレスを放った時だな。あの時に似ているのだ。
あの時は明確な恋慕の感情を感じていたが、今回はどうやら少し違うらしい。
このパーティの紅一点、ベアーの実妹であるベルカが私に対して向けている視線には、相も変わらず崇拝とも呼べるような感情が含まれている。
ベルカ曰く[自分にとって私の行動は慈愛に満ちている]とのことだった。
ベルカよ。その条件で女神になれるのなら、この世の中女神で溢れかえっているんじゃないだろうか?
それを彼女に伝えたとしても、きっと彼女は私のことをお姉様と呼ぶだろうし、女神のように称えるんだろうなぁ…。
あぁ、そんな事を考えていたらファランザンの血抜きが終わったようだ。血抜きを始めてから大体50分ぐらい経過していたのか。やはり巨大な生物の血抜きは時間が掛かるものだな。
作るか?血抜き用の魔術。
今後も討伐依頼を受けていくのなら、あった方が良いかもしれない。
後にしよう。
手早く解体して王都へ帰還するとしよう。今回は人の目もあることだし、尻尾を伸ばすこともできないからな。うっかり伸ばしてしまわないように気を付けなければ。
「あの、ノアさん…?尻尾から出してるそれって、『成形《モーディング》』の魔術で合ってます?それにしては、何だか規模が大きいような気が…」
「『成形』で合っているよ。私の場合、魔力量も密度も大きいからね。長時間発動できるし、形も結構自由が利くんだ。使う者が使えば『成形』の魔術は武器防具を必要としなくなる、とても便利な魔術だよ」
「ノアさん、そんなことができる人って、ノアさん以外でいるんですか…?」
「ああ、”一等星《トップスター》”の冒険者で『成形』を自在に使いこなして活躍している、”型無《フリースタイル》”という二つ名で呼ばれている人がいるみたいだね。私も人から聞いただけの情報だから、詳しいことは分からないけど」
私に恋慕の感情を向けていた”初級”冒険者のミミが教えてくれた情報だな。
『成形』を巧みに使い、状況に応じて使用する武器を瞬時に変更するという、何とも器用な冒険者の話をしてくれたのを思い出しながら説明する。
その”型無”の専売特許を奪っているような真似を今現在してしまっている気がするが、細かいことは気にしないようにしておこう。
何せその”型無”が活動する場所はこの大陸ではないらしいから、今気にしていても仕方が無いだろう。
だが、もしも私が別の大陸に行く時が来たのなら、その時はぜひ会ってみたいものだな。その”型無”に。『成形』の利便性で語り合ってみたい。
「あっという間にあんなにデカイファランザンの解体が終わるし、解体が終わったら全部丸ごと『格納』に仕舞われて行くし…もう雲の上の人だよな…」
「っ!雲の上…!つまりノアお姉様はめがみさま…!」
「こーらベル。いい加減にしとけ。ノアさん、ちょっと困ってるぞ?」
「うぅ…ノアお姉様、ごめんなさい…」
「神様っていうのはとても大きな存在だからね。そんな存在と同列に扱われるほど、私は大きくないよ。貴方達に助力したのも、ただの気まぐれさ」
実際、ルグナツァリオは都市1つを余裕で囲ってしまえるほど巨大だからな。
大きいの意味合いは当然全く違うが、あんなことがあった後だと、正直あの駄龍と同列に扱ってほしくないと思っている。
それにしても、ベルカは巫女・シセラと気が合いそうだな。2人を合わせたら私のことでずっと話を続けていそうな気がする。
まぁ、巫女という存在はそう簡単に会える役職じゃないらしいし、その可能性は低いか。仮に彼女達が出会ったとしても、私の知らない所でなら好きなだけ語り合っていてくれても構わないのだから。
暴走して、他人を巻き込まなければ…。
ファランザンの解体、回収も終えて王都に六人で帰還しようとした時である。ベアーの腕に応急処置を施していた白い修道服を着た新米聖職者《クレリック》のオムがあることに気が付いた。
「そう言えばベアー、さっきから随分と平然としてるけど、左腕は大丈夫なの?思った通り骨折してたから、僕の魔術じゃまだ全然痛みを和らげられない筈なんだけど…」
彼は教会に所属していて、”中級”冒険者に昇級したことで最近見習いから新人の聖職者に昇格したらしい。今はまだ治癒魔術は非常に簡単な術しか使用できないようだ。
今回ベアーに施した応急処置も、魔術的な部分はほんの少しの治癒能力の促進と気休め程度の痛み止めに過ぎない。後は真っ直ぐな添え木を当ててしっかりと包帯で固定しただけだ。
応急処置がとても手際良く、それでいて手慣れていたので、彼は教会で怪我人の治療をしたことがあるんだと思う。
オムに腕のことを尋ねられ、今更ながらにベアーが気付いたように腕を動かす。
「うん?あ、そういやなんかあんま痛くねえな!オム、ひょっとして腕を上げたのか!?やるじゃないか!この調子でどんどん上達してくれよ!?そうすりゃ、俺も安心して前に出ってっ!?いいい痛たたたっ!?急に痛みがぁっ!?」
「折角上手い具合に処置できていたというのに、そんな風に激しく動かしたら意味が無いよ?今の痛みは治癒魔術によって繋がりかけていた骨が、激しい動きによって再び離れてしまったから生じた痛みだね」
「ベア兄…。何やってんの…」
ベアーが自分の腕に痛みが感じられないことに気を良くしたのか、勢いよく応急処置をされた腕を動かしはじめてしまったのだ。
彼の腕の骨が繋がりかけていたのは私がこっそりと私の魔力を彼の骨折部位に流したからなのだが、完璧と言って良い程の応急処置の上から微弱な治癒魔術を施せば、治りが普段よりも速くても違和感を感じることの無い範囲での治療だった。
だから、いくら痛みを感じないからと言って激しく動かしてしまえば、その結果は火を見るよりも明らかだ。
オムは再びベアーに治癒魔術を掛ける気は無いらしい。
軽率な行動を反省してもらうためだろう。それに、治癒魔術だって魔力を消費するからな。そう何度も使用するわけにはいかないのだ。
「オ、オムが厳しい…」
「やぁ~、リーダーの自業自得っしょ~」
「だな。調子に乗り過ぎなんだよ。さっきのファランザンの攻撃だって受け流そうとしないで受け止めようとしただろ?」
「動きを止めるにはアイツの攻撃を受け止めにゃならんからな。受け止め切れなかったが」
「せっかちなんだよ!昔っからお前はよぉ!俺達は動かねぇ!アイツは動き回る!どっちが体力を消耗するかなんてわかり切ってんだろうがっ!受け止めんのはもっとバテさせてからでよかったんだよ!」
「ジーン、そりゃあねぇっすよー。下手に受け流したらベアーは無事でも俺達は無事じゃなかったかもなんだしさー」
「分かってるけどよぉ、怪我をするのはいつもベアーだけなんだぜ!?俺達、それで良いのかよっ!?俺達、いつまでもベアーにおんぶに抱っこなわけにゃ、いかねえだろっ!?」
ジーンがベアーをきつく責めていたが、どうやらジーンはベアーが仲間に向かう攻撃を一手に引き受けていることが不満なようだ。
まぁ、同じ依頼をこなしたと言うのにその実態は1人にダメージを押し付けているということであるなら、後ろめたさや申し訳なさを感じても仕方が無いな。
おそらくだが、ベアーは彼等が冒険者になる前から同じように仲間を庇い続けてきたのだろう。
少々独走気味だが、なかなか良い男だと思うぞ?率先して仲間のために動ける人物というのは、好感が持てる。
彼は美人を見かけるとすぐに口説きだすと言う悪癖があるようだが、妹の介入もあってほとんど上手くいっていないようだな。
というか、ベアーはもう少し女性の扱い方を知るべきだ。
「分かってるっすよー。だから、俺達がやることは決まっているっすよー」
それはそれとして、自分達の現状について思うところのあるジーンに対して、弓矢を装備したアフモは考えがあるらしい。
彼は私の方を向くと、唐突に頭を下げだした。
「ノアさん、これからしばらくお世話になるっす。俺達を鍛えて下さいっす」
「っ!そう言うことかよっ!抜け駆けは無しだぜっ!ノアさん!俺も強くなりたいです!ベアー一人に何でも押し付けなくても、良くなるぐらいの強さが!」
「わ、私もノアお姉様の活躍が見たい…!」
「「俺(僕)もお世話になりますっ!!」」
現状を打破するために、アフモは自分が強くなることを選んだようだ。それにつられるようにジーンが続き、結局全員が頭を下げてお願いしだした。
1名動機が違うようだが、やることは変わらない。どうせ自分のことで精一杯になるのだから、結果は変わらないさ。
「うん、お世話をするよ。しっかりと貴方達を鍛えよう。それこそ、今回のファランザンぐらいは安定して倒せるぐらいにはね。期待も覚悟もしておくと良い」
「えっと、期待は分かるとして、覚悟、ですか…?」
「勿論。私は楽をして強くなる方法なんて知らないからね。短時間で相応の強さを手に入れるには相応に厳しい稽古をつけることになる。なに、心配することは無いよ。今のベアー以上の怪我を負っても、私なら直ぐに治せるからね。みっちりと稽古をつけて上げよう」
「「「……よ、よろしくお願いします……」」」
「ノアお姉様、カッコいい…やっぱりノアお姉様はめがみさま…」
「大丈夫かなー…。ついて行けるかなー…」
「大丈夫じゃないかな?私が想定している物よりも遥かに厳しい稽古を乗り越えた”新人《ニュービー》”もいるからね。あの娘達も稽古を受けるだろうから、うかうかしてたら追い抜かれてしまうかもしれないよ?」
あの3人の少女達は、間違いなく稽古を受けるだろう。流石に毎日、というわけにはいかないだろうが。それでも、私は結果を出すつもりでいる。
というか、昨日の稽古の最後の方の動きを見る限り、彼女達は既に並みの”初級”よりも強くなっていると思うのだ。
「それを聞いたらビビッてなんていられないなっ!燃えて来たぜっ!」
「おうっ!今よりも強く、頑丈になって多少のことじゃビクともしない防御力を手に入れてやるぜっ!」
「やー、俺達が強くなる目的はリーダーの負担減らすためなんスけどねー」
「まさか、その子達もノアお姉様のことを…。崇拝仲間…?」
「あの娘達は私のことを神様だとは思ってないよ。それよりも、やることは済んだのだから、そろそろ王都へ帰ろうか」
ここでやるべきことはもう何も無いからな。後の会話は移動しながら存分にすれば良いだろう。
そろそろ王都へ帰るとしよう。
さて、王都へ帰るのはいいが、ここで彼等の移動速度に合わせていると当然今日中に王都に着くのは難しくなってしまう。
私としては許容しがたい話なので、彼等には済まないが、ちょっと私の我儘に付き合ってもらおうか。
「皆、私としては、今日の正午までには王都に着いておきたくてね」
「あ、それなら俺達のことは放っておいてくれても…」
「流石にそこまで薄情にはなれないよ。ちょっと試したいことがあってね。貴方達には、その実験に付き合ってもらいたいんだ」
「実験?」
「なんでだろう…。ちょっと嫌な予感が…」
まぁ、そうそう体験できないことになるとは思うよ。
なに、命の心配は無いさ。
私が全力で保護するからね。