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大分魔魚が少なくなってきて、水中が見やすくなった。
現在主に釣れている魔魚カンディルーは全長5cm程度。
これでも一応魔石はある。だから問題無く報酬を受け取れる筈だ。
しかし川の中には、他にも魔力の反応がある。
これらはもう少し大きい魔魚カンディルーだろう。
ただしこいつらは用心深くて、こちらの竿の届く範囲に近づいてこない。
という事でジョンは次の作戦に移行だ。
まだ釣れなくなっているわけではないので、ミーニャさんにはもう少し小魚方面を頑張って貰うけれど。
「ジョン、それじゃ次は釣り方を変えてみる。投げサビキという方法だ。針がついている仕掛けはほぼ同じだけれど、ウキと、このリール付きの竿を使う」
「それでどう変わるんだ」
よしよし。
「今度は……」
「釣れたニャ」
ミーニャさんの方の魚をさっと取り込んで、そして次の説明。
「今までと同じように餌をカゴに入れ、針にもつける。つけたら竿を持って、リールのこの部分、糸巻きから出ている糸を人差し指でつまんで固定し、リールのこの部分をこっちへ動かす。これで糸が自由に出ていく体勢になるのはわかるよな」
「ああ、大丈夫だ」
よしよし、それでは次。
「あとはこうやって勢いをつけて、適当なところで人差し指を離してやればいい。そうすれば仕掛けが飛んでいって……」
横投げで軽く仕掛けを投げる。6m位先に着水。大体想定通りの場所だ。
「この部分を元に戻す。そうすれば、ここを回せば糸を巻けるという仕組みだ。これで竿の真下でなくても狙える」
ドラグ調整だの逆転レバーだのの説明は今はパス。
魚が小さいので問題無いだろう。
「釣れたニャ」
冷却魔法、収納、取り出しを半ば自動でやった後、ジョンにリール付き竿を渡す。
「以上だ。狙う場所はだいたい今投げた辺りで頼む」
「わかった」
「釣れたニャ」
まだまだ順調なようだ。
本当はこの辺りでルアーを投げて、大物がかかるか試してみたかった。
しかし今の状態では、そんな時間的な余裕が無い。
釣れた魔魚の取り込みをジョンやミーニャさんにやって貰えば、それくらいの余裕は出来ただろう。
しかしこういった数釣りの場合、釣り上げて魚を外し、エサをつけ、仕掛けを投入する時間の短さ、釣り用語で言う『手返しの早さ』が重要だったりする。
だからいちばん時間がかかり、仕掛けが絡む事がある魚を外す工程を、俺の魔法収納でやるのは正しい。
魔法収納でやれば、ほぼ一瞬でかかった魚だけを回収できるから。
そして魔魚カンディルーがそこそこ溜まったので、俺は別作業の方も進めることにする。
昼食の準備だ。
魔法収納内には、昨日ギルドからの帰りに購入した食材がきっちり詰まっている。
米は既に魔法収納で炊き上げた。
ミーニャさんの胃袋を想定して、7合ほど。
俺は並列思考スキルを持っている。
だから同時に幾つかの事を考えたり行ったりする事が可能だ。
これも前世の業務で得てしまった能力だが、あの世界の事はもう思い出したくないから理由は省略。
そしてここで俺は並列思考を釣りと調理に使用した。
つまりミーニャさんやジョンと釣りをしながら、魔法収納内で昼食の調理をする事に。
魔魚カンディルーは頭と魔石、内臓を取れば白身の美味しい魚だ。
小さいものなら、しっかり揚げれば骨ごとバリバリ食べられる。
素揚げもいいし、フライもいいし、天ぷらも悪くない。
小さいのはかき揚げ風にしてもいいな。
ついでに付け合わせの野菜もガシガシ揚げよう。
揚げ物だけというのも何だから、小さい物をくぎ煮風にしてもいいか。
もう少し大きいものの甘露煮も。
先程ウキ釣りで釣った大物は、蒲焼きなんてのもいいな。
並列思考で釣りと料理を同時進行させつつ、ミーニャさんやジョンの様子も確認しつつ。
そんな感じでこの釣り場で1時間。
「釣れなくなったのニャ」
「こっちもだ。どこへ投げても釣れない」
ぴたっ、と釣れなくなった。
水中にはまだ数匹程度の魔力反応がある。
しかし多分この辺は、釣れない魚なのだろう。
少なくとも今の方法では。
討伐という依頼でなければ、その数匹を相手に勝負を挑みたいところだ。
ルアーとか、別の仕掛けとかで。
しかし依頼内容は全滅ではなく、とにかく数を減らすこと。
ならこれ以上ここで時間をかけるべきではないだろう。
「次のポイントに移動します。近いので全員で歩いて行きます」
「了解」
「わかったニャ」
次の場所へと移動する。
◇◇◇
次の場所でも概ね同じパターンで攻略。
やっぱり1時間で釣れなくなった。
「またこれで移動か」
「でも、そろそろお腹が空いたのニャ」
いや、まだ早い。
先程ダグアル村から聞こえた鐘は午前10時のものだった。
つまり昼食まであと2時間ある。
ただ冒険者は活動量が多いから、その分補給をするなんて事があるかもしれない。
そう言えば村でも朝10時と午後3時の間食があった。
1日中農業をやっていると、食べないと動けなくなるから。
仕方ない。
幾つか魔法収納内で出来ているうち、食べやすそうなメニューを出すとしよう。
「ジョンは米は大丈夫だよな」
ミーニャさんには聞く必要はない。
何度もうちで料理を食べているので把握済みだ。
「食べた事はないけれどさ。多分大丈夫だと思う」
ならこのメニューでいこう。
皿ひとつでしっかりボリュームを稼げるから。
そこそこ大きくてしっかり深い皿に、炊いた白米を1合入れ、
上に魔魚カンディルーのかき揚げ、ナス天、カボチャ天、シシトウ天をのせ、
特製タレをかければ完成。
これもバラモさんから貰ったレシピにあったものだ。
なおレシピには『天丼のタレは濃いものより、つゆに近い程度のものが上品だ。誰が何と言おうとも』なんて、手書きで付け加えてあった。
意味はよくわからないが、きっとレシピにも色々な流派があるのだろう。
それではという事で、家から魔法収納に入れてきたテーブルと椅子を出して、天丼を3つ置く。
「美味しそうにゃ。これは何という料理ニャ」
「天丼というそうです。漁業組合で貰ったレシピにそう書いてありました。それではどうぞ」