「……だけど、ここってどうして、『超イケメンホストクラブ』なんていう名前にしたの?」
お酒をもう一口飲んで、ひと心地がつくと、ずっと感じていた疑問が口をついてこぼれた。
『超イケメンホストクラブ』だなんて、初めて聞いた時には、もしかしたらジョークじゃないのかと私でさえ違和感を覚えたくらいだった。
「……ここが、別格の場所だからです」
と、三日月が口を開いて切り出す。
「あえて、インパクトのある名前を店につけることで、普通とは異なる場であることを強調したかったんです。
あなたも、ここの店名を聞かされた時には、『あり得ない』と思いましたよね?
あり得ないような場所に、実際に来られた時の驚き……こんなところが本当にあったんだと思えるような、そんなときめきを、此処へいらしてくださったお客さまには味わってほしかったんです」
「本当に、なの?」
もしそうだったとしたら、私はまんまと思惑に嵌められてしまったことになる。
「そう、ありえないと思えたからこそ、ありえた時には、それだけ感動も大きいのではないかと……」
もっともすぎる三日月のセリフに、「はぁー…」と、思わずため息がこぼれる。
私はどうやら初めから、このお店のマジックにかけられていただけだったらしい。
「ここって、噂になってんだろ? 都市伝説だとか言われてるって、聞いたことがあるし」
と、流星が話し出す。
「うん…超イケメンばっかりの揃う、『超イケメンホストクラブ』なんて、あるわけがないって言われてる。
まして、そこにはホストに選ばれたお客しか行けなくて、お店に行った人だって全然いないんで、それが都市伝説みたいにもなってるっていうか……」
そう言う私に、流星が「……だろ?」と、ニッと笑いを浮かべた。
「実は、そういうのも狙ってたんだけどね…」
天馬が、ふふっと小さく笑って言う。
「狙ってたって…?」
「都市伝説っていうか、幻想みたいなのを狙ったってことだよ。ここは、幻を現実に変えるような、そんな場にしたかったからな」
銀河が、私に笑い顔を向ける。
「幻を、現実に……」
ぼんやりと口に出して呟く──。
確かにここは幻のようで、訪れてみるまでは現実にあるだなんて到底信じられなかった。
それに、渡されたカードキーでしか入れないこの場所は、よけいに現実感がないようにも思えていた──。
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