「あ、なんか近いな。 」
ついに10話きました。
ついにというか、私が暇で描きすぎただけなんですけどね。
1.344いいねありがとうございます。
それでは、光輝と樹の”友情”物語をお楽しみください。
第10話:『好きって言葉の手前で。』
校舎裏の風が、少し冷たかった。
沈みかけた太陽の光が、
コンクリートの壁をやわらかく照らしてる。
樹はフェンスにもたれて、空を見上げてた。
光輝はその背中を見つけて、
胸の奥が少し痛くなる。
「……おったんか。」
「ん。ちょっと風に当たってた。」
いつもみたいに軽く話そうとしても、
声が震えそうになる。
俺は深呼吸をして、樹の隣に立った。
風が二人の間を抜けていく。
沈黙が続いて、
どっちも何も言わんまま、ただ空を見てた。
「なぁ……」
俺は口を開いた。
けど、次の言葉が出てこん。
「なぁ、樹。
俺、お前とおると、なんか……落ち着くねん。」
「……うん。」
「でも、最近離れられたら、
なんか胸の奥がモヤモヤして、苦しくて……」
樹が少し驚いたように横を見る。
俺は笑おうとしたけど、
上手く笑えんかった。
「……これ、なんなんやろな。」
風が吹いて、二人の影が揺れた。
光輝は視線を落として、
小さな声で呟く。
「……好きって言葉の手前で、止まってまうんや。」
それが何を意味するのか、
自分でも分からん。
ただ、静かに俺を見てた。
その瞳の奥に移る光が、
少し滲んで見えた。
沈む夕陽の中で、
二人の影がまた重なって、また離れた。
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