挙式から一週間が経ち、私たちは新婚旅行でナージリス国に来ていた。
結婚式の後、私たちは同居するため、それぞれの家から出て、私の兄が提供してくださった別宅に住むことになった。使用人もたくさん提供してくださった。兄には本当に頭が上がらない。
初夜の時、とても緊張したが、一晩中口づけられ、骨が折れるかと思うくらいに強く抱きしめられ、全く眠れなかった。どきどきしすぎて、本当に心臓が壊れるかと思った。
「…………アーナ。リリアーナ」
ふと後ろから、聞き慣れた低い美声が聞こえた。
振り返ると、やはり彼がいる。
「ルウィルク様。いかがしましたか?」
「……これからの予定なのだが」
彼は、仕方がないな、という声音で言った。
「明日はどうする?」
私は、うーん、と首を捻る。
ナージリス国の書店を一回見に行ってみたいという気持ちもあるし、でもこの宿の近くにある時計台もじっくり見てみたい……。
無言で考える私に、彼は頷いた。
「わかった。とりあえず明日は、この周辺を少し歩こう」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
私は微笑み、彼に礼を述べる。
私の言葉に、彼はかぶりを振った。
と、彼が私を凝視する。
どうしたのかと首を傾げる私に、彼は深いため息をつき、私をぎゅっと抱きしめた。
え、と私は固まる。
「ど、どうしましたの?」
「……お前が、やっと完全に俺だけのものになったんだと実感が湧いた」
少し拗ねたように言う彼に、私は苦笑した。
「結婚式の時も言いましたけど、私はもう既にあなたのものでしたよ?」
彼に告白され、花束を渡されたあの時から、私は彼のものだった。
そう言えば、と彼は切り出す。
「あの時食えなかったから、今食べていいよな」
はい?どういう理論ですかそれは。
と、本気で彼が自分の唇を近づけてきた。
「え、ちょっ、待っ……」
「待たない」
彼はそう言うと、私の唇を塞ぐ。
「…んっ……んんん…ふ……」
何度も角度を変える荒々しい口づけに、私は声を漏らした。
すると、ほんの一瞬、唇が離される。
かと思うと、また口づけられた。
しばらく塞がれていたが、やっと離される。
彼は膝から崩れ落ちそうになる私を受けとめ、満足げに微笑むと、私を再度強く抱きしめた。
息を整えながら、その温もりに、ほっと安堵する。
私はもう、前世のようにひとりぼっちじゃないんだと感じたから。
「……それじゃ、夕食を食べに行こう」
そう言って私の身体を離し、私の手を引いてくれる彼に、私は未だに火照っている顔で頷いた。
やっぱり、彼にはいつまで経っても敵わないのだ。
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