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【10話】紫苑との手合わせ以来、彼はことあるごとにくらげへ話しかけてきた。 廊下でも、食堂でも、授業の合間でも――。
「くらげ、今度一緒に魔法の調整してみない?」
「え、いいよ!」
無邪気に答えるくらげを、少し離れた場所から海星がじっと見ていた。
◇◇◇
放課後、魔法庭園で紫苑と並んで課題をこなすくらげ。
紫苑が彼女の手を取り、魔力の流し方を教えている光景が、海星の視界に飛び込んだ。
(……何やってる)
気づけば海星は二人の間に割り込んでいた。
「――くらげ、こっちに来い」
「え? でも紫苑くんが――」
「いいから」
低く静かな声に、くらげは思わず従ってしまう。
紫苑が苦笑する。
「そんなに取られるのが嫌なのか?」
「……ああ」
海星は一切迷わず答えた。
くらげを連れ出した海星は、庭園の奥でふと足を止める。
「……あいつ、お前に近づきすぎだ」
「でも、紫苑くん、ただ教えてくれてただけ――」
「俺が教える。お前に触れるのは、俺だけでいい」
その言葉に、くらげの顔が真っ赤になる。
海星は少しだけ視線を逸らしながらも、彼女の手をぎゅっと握った。
「……離す気はない」
握られた手の温かさに、くらげは小さく頷くしかなかった。