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城プル
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FORSAKENの静寂に包まれた壊れかけの教会。
割れたステンドグラスから差し込む赤い月光が、床に倒れ込むGatitoの姿を怪しく浮かび上がらせていた。
先ほどの戦闘でRatの粘着電磁トラップを喰らい、膝をついたまま動けないGatito。
息を荒らげる彼の首元で、重厚なトゲ付き首輪が月光を反射して冷たく光っている。
「ハァ……ハァ……くそっ、動かねぇ……! ドブネズミ、とどめならさっさと刺しやがれ……!」
Gatitoは緑の大きな爪を床に立て、オラオラ系の威勢を崩さぬよう鋭い赤い眼で睨みつける。
しかし、白衣の裾を揺らしながらゆっくりと歩み寄ってきたRatの眼に、殺意など微塵もなかった。
「とどめ? まさか。僕が求めているのは君の命ではなく、知的好奇心の充足だよ」
Ratは青いジーンズのポケットから手を出し、Gatitoの前にしゃがみ込んだ。
頭上のヘルメットとサングラスを軽く押し上げ、視線をGatitoの首元――あの黒い革に尖ったスパイクが整然と並ぶ、イカついトゲ付き首輪へと集中させる。
「ずっと気になっていたんだ。その首輪、ただの威嚇用装飾にしては金属の比重がおかしい。それに、君の頸脈や神経系に絶妙な圧力をかけているように見受けられる。もしかして、自身の野生的なパワーを制御するためのリミッターかい? あるいは……スペクターからの『呪縛』かな?」
「なっ……! 勝手に触ろうとしてんじゃねぇよ! 俺の首輪に気安く指一本でも触れてみろ、噛みちぎるぞ!」
Gatitoが牙を剥いて威嚇するが、Ratは「はいはい、威勢がいいね」と軽やかにあしらうと、右手の黒手袋をすっと滑らせ、首輪と首筋のわずかな隙間に滑り込ませた。
「嫌だなあ、減るもんじゃないだろう? 仕組みさえ分かれば……ほら、楽に脱がせてあげるから」
「ッ!?」
Ratの黒手袋で包まれた指先が、冷たい金属の裏側にある、Gatitoの柔らかい首筋の皮膚に直接触れた。
その瞬間、Ratは意図的に指先を微振動させ、猫科獣人の最も敏感なツボ――耳の裏から頸椎へと繋がる神経節を、優しく、しかし確実な圧力で揉みほぐした。
「あ……っ、ん……!?」
Gatitoの全身に、雷が落ちたような甘い衝撃が駆け巡る。
トゲ付きの首輪というイカつい外見、オラオラとした狂暴な人格――それら全てを置き去りにして、彼の遺伝子に深く刻まれた「猫としての本能」が、強力な快感によって強制起動させられた。
「くっ……やめっ……あぁ……っ」
抵抗しようと伸ばした緑の爪からスッと力が抜ける。
Gatitoは必死に歯を食いしばり、威嚇の声を上げようとした。
しかし、Ratがさらに指先を滑らせて首筋を撫で上げると、口から漏れ出たのは恐ろしい威嚇音ではなく――
『ゴロゴロ……ゴロゴロ……ゴロゴロ……ッ』
喉の奥から響く、重低音の、あまりにも気持ちよさそうな猫の鳴き声だった。
「おや?」
Ratは目を見開いた。
普段ならサバイバーを噛み殺さんばかりに荒々しい黒猫が、首筋を優しく撫で回されるだけで、甘い吐息を漏らしながら自らRatの指に首を擦り付け、喉を可愛らしく鳴らしているのだ。
ドミノクラウンの奥にある赤い眼は熱っぽく潤み、背中の魚の骨柄パーカーから覗く透明な胴体では、心臓がトク・トクと心地よいリズムで拍動している。
「ふむ……首輪による抑制効果の副産物か、それとも純粋な皮膚感覚の過敏性か。……どちらにせよ、実に素晴らしい反応だね、Gatito」
Ratは左手の赤手袋も使い、両手でGatitoの首筋から顎の下にかけてゆっくりと撫で回した。首輪の金具がカチャカチャと小さな音を立てる。
「あッ……んぁッ……! ごろ、ろ……っ!? な、なんだこれ……ッ!?」
己の口から出ている情けない音と、身体が勝手に歓喜して熱を帯びていく感覚に、Gatitoはパニックに陥った。
ネズミ相手に、よりによって自分を狩るはずの天敵相手に、喉を鳴らして甘えているなど、殺人鬼(キラー)としての尊厳が崩壊してしまう。
「っ~~~~~この、変態ドブネズミがぁぁぁッ!!」
理性が限界を迎えたGatitoは、真っ赤に熟したリンゴのように顔を染め上げると、残された全筋力を振り絞ってRatの胸を強引に押し返した。
ドサリと後ろに倒れ込むRat。
しかし、Gatitoは追撃するどころか、自分の首元を両手で必死に押さえ、肩を激しく上下させて息を荒らげている。
「ハァ……ハァ……っ! 覚えてやがれ……次は絶対、その生意気な指ごと噛みちぎってやるからな……ッ!」
涙目になったGatitoは、逃げるように闇の中へと跳躍し、姿を消した。
倒れたままその背中を見送ったRatは、身体を起こすと、自分の右手の黒手袋をまじまじと見つめた。
そこには、まだGatitoの柔らかな首筋の温もりと、撫でられた時の微かな振動が残っている。
「脱がせるどころか、撫でるだけであの反応か……」
Ratは白衣のポケットからメモ帳を取り出すと、ヘルメットを押し上げ、熱を帯びた笑みを浮かべてペンを走らせた。
『観察記録その58:検体Gatitoは、トゲ付き首輪周辺の頸部皮膚への圧迫・撫刺刺激に対し、極めて高い猫科特有の快感応答を示す。オラオラとした攻撃的性格は、この過剰な敏感さを隠すための防衛本能である可能性が高い。……次回は首輪を完全に外し、さらに深部へのアプローチを試みる』
ネズミの狂気的な探究心は、黒猫の隠された甘い秘密をひとつ暴き、さらなる深い底へと突き進んでいくのだった。
コメント
2件
深部…あっ(察し)