エメルとラルドが里内最強の座を賭けた戦闘をしている同時刻、ミナル達は里内を軽く探索していた。
「なぜこうも堂々と里内を歩いてるんだ?」
「別に悪いことじゃないでしょ?一応私らは客人だし、それ以上に里の危機を救おうっていう救世主よ?」
「そういうことを堂々と発言すると余計里のみんなからのヘイトを買うぞ?」
「だとしてもこれは事実だもの。まぁ、見返りが欲しいわけじゃないのも確かよ?」
「ほんとかよ……。」
「妖精族の能力は確かなものだし、それを活用すればこの里だってもっと活気に溢れるはず。人間は妖精族ほど魔力は高くないけど発明という点においては他の種族とは比べ物にはならない。逆に妖精族はそんな発明する力は乏しい代わりに圧倒的な魔力があるため大抵の脅威には対応できる。この二つの種族が仲良くなったら良いこと尽くしじゃない?」
「まぁ、便利な世の中にはなるだろうな。」
「その便利な世の中にするための最初の一歩目をこの里から始めてみるって言うのはどうかなってあの会議の時に思いついてね。」
「つまりは奴隷商人を成敗することすらもルナベルにとっては通過点ってわけか。」
「奴隷商人を成敗して、私ら人間にもいいやつがいるって里のみんなに教えてそのうえお互いに手を取り合うように間を取り持つ。これぞ一石三鳥という奴だ。」
「うーん……。打算的だけどまぁ、言いたいことは理解できるのがなぁ。」
「それよりルナベルお姉ちゃん?」
「どうしたの?」
「なんかあっちの方でわいわいしてるの。面白そうだから行ってきてもいい?」
「……。あ~、やめとこうかそれは」
「えぇー!?なんで?」
「この後の感動が無くなるからよ。」
「?」
軽い雑談をしながら里内を歩いていると、向かいから二人の少女が歩いてくる。
「あっ!いたいた皆さんを探してたんですよ」
「ミクナちゃん……だっけ?どうかしたのか?」
「皆さんが見えたので。」
「あっ、アリサちゃん!!」
「例の件ですがそれまでやることないと思いまして、私らで里を案内でもしようかと。」
「気持ちはうれしいけど仮にも二人は里の子でしょ?私らと一緒に居たらばつが悪いと思うんだけど……。」
「あぁ……そのことは気にしなくてもいいよ。」
「それはなんでなの~?」
「マリンちゃんにはまだ内緒です!」
「えぇー!?アリサちゃんのいじわる!」
「まぁとにかくそういうことなんで私らのことは気にしなくて大丈夫ですよ。」
「本人らが気にしてないなら俺らがあれこれ言うことはないな。」
「……そうね。」
「それでは里内をご案内しますね。」
アリサやミクナに里内を案内してもらっているがやはり行き交う大人たちの視線は痛いものだなぁ……。そりゃまぁ歓迎はされてないし例の追い出すための策か何かで悪い方でお祭り騒ぎしてるわけだし……。妖精たちからすればとっとと消えてほしいもんな俺たち……。ただ、それとは逆で子供はやけに俺たちに興味津々だ。あれ?聞いてた話と違くない?里内全体で俺たちのことが嫌いって話だったのに……。
「やけに子供たちは私らのこと見てくるな?」
「基本里内はみんな人間が悪って聞かされてる。現に私らもそうやって聞かされていたから皆さんにあんな攻撃的な態度をとってしまって……。」
そう話しながらミクナは頭を下げる。
「過ぎたことだしいいよそれは。」
俺はミクナに頭を上げるように話す。その後顔を上げてアリサが言葉を紡ぐ。
「確かに里内ではそうやって教えられてきましたが、私たちの一件から子供たちは人間に対しての見方が変わっています。もちろんこれも一部ではありますが敵対視する理由に違和感を覚えてる層がいるのも確かみたいです。まぁ、元々大人に私怨を持つ子もいたみたいですが……。」
「大人に私怨を持ってる妖精の子供がいるんだ……。」
「なんにせよ今こうして皆さんが来たことによって里が変わろうとしてます。それがどのような結果を残すのかは分かりませんが少なくとも現時点ではいい方向にと向かっています。私はそう感じてます。」
「だといいけどなぁ……。大人の視線は変わらず痛いし俺の扱いは変わらずひでぇし。」
「あんたは戦力外だから仕方ない。」
「お兄ちゃんは賑やかし担当!」
「おいおい……。マリンちゃんになんて言葉を教えてんだルナベルさん?」
「学んだんだよ彼女自身が。」
「えぇ……。」
「とにかく例の件は楽しみにしておいてください。きっと皆さんが気に入ると思いますから。」