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しかしそのあと、奈津美さんを楽しませるような気の利いた話が一つもできない自分に悩んだ。いっそデジュン達と一緒に帰ってしまえばよかったと思った。
電話のベルが鳴った。奈津美さんは台所の端にある受話器へ向かった。
雰囲気が、穏やかでない。
「私はあなたと友達になる気はさらさらないですから、二度とかけてこないで下さい」受話器はその後、ガチャンと鳴った。
「今の人、”I love you” だって。まったくふざけてるわ。私のこと何も知らないくせに。毎日かかってくる」
「よくここの電話番号知ってるね」
「ここのオーナーの、仕事の同僚なんです。先週遊びに来たときに、顔見知りになったくらいです」
再び電話が鳴った。
「まったく」奈津美さんはふくれた顔をして、もう一度台所の端まで行った。そして「もう二度と電話しないで下さい」と言って電話を切った。
「また?」
彼女は膨れっ顔をしたままうなずいた。
そんな奈津美さんが、俺には愛らしい笑顔を見せている。