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「悠真は欲しがってる。遠慮はしなくていいから明日出掛けて買って来い。そこで、プレゼントも買ってくるといい」
「すみません、ありがとうございます」
悠真に聞こえないよう小声でツリーとプレゼントを買うように伝えた理仁。そんな彼の気遣いに真彩は心の底から感謝をし、甘える事にした。
「朔太郎くん、ちょっと良いかな?」
中途半端な時間に昼寝をしてしまった悠真がようやく寝たので、残りの家事を片付けて部屋へ戻る途中、朔太郎の部屋にまだ灯りが点いているのが見えた真彩は声を掛ける。
「姉さん、どうしたんスか?」
その声に気付いた朔太郎は襖を開けて何の用かを問う。
「あの、悠真が書いたっていうサンタ宛の手紙の事なんだけど……」
「ああ、あれっスか」
「悪いんだけど、少しだけ見せてもらえないかな? 悠真の欲しい物が分からなくて」
「あーでもあれ見ても全く分からないっスよ。俺も気になって傍で見てたんスけど、字って言ってもミミズが這ったようなモンで大半が絵だったし、その絵もイマイチ何だか……。それでそれとなく聞いたんスけど教えてくれなかったんで分からないんスよね」
「そっか……」
「まぁ、悠真は何でも喜ぶと思いますから、姉さんがあげたい物をプレゼントするといいっスよ!」
「……そうね、そうする。寝る前にごめんね、それじゃあお休みなさい」
「はい、お休みっス!」
結局手紙を見た朔太郎にも分からないという事で悠真の欲しい物のリサーチが出来なかった真彩は何をプレゼントするべきか悩みながら部屋に戻り、布団に入っても暫く悩み続けていた。
「わー! つりーたくさん!」
「悠真、好きなの選んでいいぞ」
「うん!」
翌日、朔太郎と共にショッピングセンターへやって来た真彩と悠真。
ツリーのある売り場へやって来るなり悠真は大小沢山の種類が飾られているツリーに驚きつつも、好きな物を選んでいいと言う朔太郎の言葉に返事をしてツリーを選びはじめた。
「ねぇ悠真、このツリーとかいいんじゃないかな? 小さくて可愛いよ?」
好きな物を選んでいいとは言うものの、物凄く大きな物や値段のする物を選ばないよう、小さくて安いツリーを指差して悠真に同意を求めようとする真彩だけど、
「ちっちゃいのいや! ゆうまこれがいい」
悠真が指差したのは180cmくらいある北欧風のオシャレなツリーだった。
「これはちょっと大きいから、せめてこっちにしない?」
場所も取るし、もう少し小さめが良いと真彩が120cm程のツリーにしようと提案するも、
「いや! ゆうまはこっち!」
どうしても大きい方がいいと言って聞く耳を持たない悠真。
「姉さん、悠真の好きな方にしましょう。これくらいなら全然平気っスから」
「でも……」
「それより、次はオモチャ売り場に行くのはどうっスか? 悠真の欲しい物がリサーチ出来ると思いますし」
「……そうね。そうする」
「それじゃあ会計済ませて来るんでここで待ってて下さい!」
悠真の欲しがっていたツリーやオーナメントが入っている箱を抱えた朔太郎は会計を済ませる為にレジへ向かって行く。
「悠真、良かったね」
「うん!」
「後で理仁さんにありがとうって言うのよ?」
「うん! おうちいったらみんなでつりーキラキラにする!」
「そうだね。お家に帰ったらね」
「お待たせしました! それじゃあ次はオモチャ売り場に行きますか!」
「おもちゃ!」
「そうだぞ! オモチャ、一つだけなら好きなの買っていいぞ」
「ほんと!?」
「え? オモチャは沢山あるし、買わなくていいよ……」
「遠慮しなくていいっスよ。俺のポケットマネーから出すんで!」
「そんな、それなら私がお金出すから……」
「いやいや、いいんスよ。俺、悠真は弟みたいに可愛いって思うから買ってやりたいんですよ」
「朔太郎くん……」
「悠真、行くぞ」
「うん!」
「ほら、姉さんも行きますよ」
「……うん、ありがとう朔太郎くん」
申し訳ない気持ちはあるも、朔太郎の厚意を素直に受けた真彩は喜ぶ悠真と共にオモチャ売り場へ向かう。
「おもちゃ!」
「悠真、どれにするの?」
「えっとねー……」
売り場に着くとすぐに欲しい物を選び始める悠真。そんな悠真の横に付いて一緒に選ぶ振りをしつつ、密かにクリスマスプレゼントのリサーチをしていた真彩。
「さく! ゆうまこれほしい!」
「いいぞ、じゃあ一緒にレジに行くか」
「うん!」
悠真に内緒でクリスマスプレゼントを買えるよう、悠真を連れてレジへ向かう朔太郎の気遣いに感謝しつつ真彩はリサーチして候補に挙げていた中からプレゼント用のオモチャを手にすると、レジを終えてオモチャに夢中の悠真に気付かれないよう真彩はこっそり購入した。
クリスマスを数日後に控えている事や飾り付けられたツリーが鬼龍家のリビングに置かれて少しだけクリスマスムードが漂っている事もあって悠真は勿論、鬼龍家に住んでいる者皆が少しだけ浮き足立っている中、
「真彩、二十四日は俺に付き合ってくれ」
夕食を終えて朔太郎と悠真と真彩の三人がリビングのテレビを観ながら寛いでいると、翔太郎と共に帰宅した理仁が姿を見せるなりそう口にする。
「二十四日……何かあるんでしょうか?」
「ああ、懇意にしている企業の社長が毎年パーティーを開いていて参加しているんだが、そこの社長が女好きで女がいる方が華やかだからと必ず女性同伴なんだ。俺は社長の代わりにとして参加していて、いつもはKIRYUの社員の誰かを適当に連れて行くんだが、見知った奴の方が俺としても楽だから今年は真彩、お前に頼みたい」
「そうなんですね、そういう事ならば是非お供させてください。あ、でもパーティー用のドレスなんて……」
「そんな物は俺の方で用意するから気にするな。という訳だから朔、二十四日は真彩が居ないから、お前と悠真で過ごしてくれ。クリスマスイブだし、好きな物を買って食えばいいから」
「了解っス。いいか悠真、二十四日はクリスマスパーティーだ! 張り切って準備しような!」
「うん!」
理仁と共にパーティーへ出席する事になった真彩が一日留守になるので悠真が悲しむかと思いきや、二十四日は朔太郎と悠真の二人でクリスマスを楽しむらしく、終始機嫌が良い。
クリスマスが楽しみなのか、大好きな朔太郎が居るので寂しくないからなのか、今までならば『ママ、ママ』と騒いでいた悠真が全く騒がない事に寧ろ真彩の方が寂しさを感じていた。