コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「チハル!」
「ん?あーハルト兄様?」
「なんで疑問なんだ?」
「いや、呼び方ハルト兄様で良いのかなと思ってね?」
「好きなように呼べばいい。」
「それで何?」
門の部屋に4人で戻る所で第一王子のエンハルト殿下に声を掛けられ何かと聞く。
「ユラの目は治ったのか?」
「治ったよ、めっちゃMP減ったけどね。」
「そうか、それは良かったな、古い傷は治りにくいからな。」
「そうなんだ、最近見えなくなったのかな?」
「どうだろうか、いつユラがこの国に来たのかまでは解ってないからな。」
「それで?呼んだのはそれだけ?」
「いや、その子・・ユラの今後の待遇についてな。」
「うん、どうなるの?」
「それを話そうと思って来たんだ、千春の部屋に行こう。」
千春、エンハルト、侍女2人、そしてユラは門の部屋に向かう、部屋に着くとサフィーナはお茶の準備を、モリアンはユラと一緒に寝室の方へ移動する。
「それで?」
「んー結論から言うとチハルの好きなようにして良い。」
「は?どういう事?」
「そう言う事だ。」
「意味わかんないんだけど、因みにそれを決定した人は?」
「父上と母上2人がチハルに決定権を持たせた。」
「んー・・・・その心は!?」
「なんだそれは、まぁ言いたい事は解るがな、普通なら孤児院に戻すかユラの居た氏族の元へ返すかになるんだが、狐の獣人は基本南の寒い所に住んでる事が多い、この国の最南端の領土よりもさらに奥になる、返すとなるとかなり面倒な事にもなりかねん。」
「面倒?」
「あぁ、ユラの種族的にもかなりの確率でユラは違法な奴隷狩りで連れて来られている、他の国では獣人の奴隷狩りが合法の所もあるからな、変に返すとそのまま又奴隷にされるかもしれん。」
「ダメじゃん!」
「この国では獣人は普通に居る、だから孤児院に戻し獣人に養子として引き取ってもらう、これが一番安全だろう。」
「そうだね、でもそうじゃないんだよね。」
「あぁそうだ、父上も母上もチハルに任せると言って来た。」
「そうかぁ、ユラちゃんの両親は居るのかな?」
「いや、最悪・・・だが聞くしか無いだろうな、呼んでもらえるか?」
「うん。」
千春は隣の部屋へ行きモリアンとユラを連れて来る。
「ユラちゃん、聞きたい事があるの。」
「・・・・おとうさんとおかあさんは死んじゃったよ。」
「聞こえてたの!?」
「うん、ゆら、となりのへやでもきこえるから。」
「モリアン聞こえてた?」
「いえ、ぜーんぜん聞こえません。」
「獣人の耳の良さを忘れてた、すまん、ユラ聞き直すが両親はもう居ないんだな?」
「うん。」
「親戚とか面倒を見てくれるような人は?」
「・・・・。」
ユラは首を左右に振り居ないと伝える。
「そうか、辛い事を聞いて悪かったな。」
「ううん、でんかも、ゆらをたすけてくれたんです、わるくないです。」
泣きそうな顔でエンハルトに笑顔を見せるユラ。
「決めた、私が面倒見る。」
「え?」
ユラはチハルを見つめる。
「まぁそう言いますよね、私でもそう言いますもん。」
「選択肢は最初から一つでしたわよね。」
「そうだな、俺も聞く前からそう言うだろうとは思っていた。」
3人はわかってたよと言わんばかりにウンウンと頭を振る。
「ハルトはユラちゃんの両親の事わかってたの?」
「いや、だがおおよその見当はな、奴隷狩りは基本村を襲う、稀に一人でいる子を連れ去る事もあるがこんな小さな子供が1人で攫われる様な所なんぞ行かんだろ、ただ可能性と言う点で確認したんだよ。」
「そっか、うん、私が面倒見るよ。」
「それは娘としてか?」
「そんなわけないでしょ!未婚の母か!」
「それじゃぁ妹か?」
「妹かなぁ。」
「ふむ、それじゃぁ手続きしないとな。」
「手続き?何の?」
「そりゃぁチハルの妹だろう?お前今立場は何か解ってるのか?」
「・・・・・あ!」
「そう言う事だ、お姫様が1人増えたな。」
「まって、それはダメだよね!」
「いいんじゃないか?陛下と王妃が第一王女のお前に一任したんだ、お前がそう決めればあの2人もそう言う風に動くと思うぞ。」
サフィーナとモリアンは事が事だけに我関せずと言うスタンスで立ったまま聞いている、ユラは千春とエンハルトを交互に見ているがあまり意味が解っていないようだ、微妙に沈黙が続く頃ユラがふとドアを見る。
コンコンコン
ノックが鳴る。
「だれかな?」
「少々お待ち下さい。」
サフィーナがすっと動きドアを確認する。
「入っても良いかしら?」
「お母様!」
「母上・・・来るなら言って下さい。」
「良いじゃない、で?どうなったのかしら?あらあらあらあらこの子ね!」
そう言ってマルグリットはユラを見ると近づき腰を屈める。
「おはよう、名前はユラだったかしら?」
「はい、ゆらです。」
ユラは急に現れた女性にビックリするも返事を返す。
「で?チハルは面倒を見るんでしょ?娘にするの?養女?妹?」
「な?もう父上も母上もこうなると思ってお前に任せてるんだ。」
「・・・・・妹にしたいなーと。」
「フフッ娘がまた一人増えたわぁ可愛いわね!」
そう言ってユラを抱きしめる。
「母上、ユラが困ってますよ。」
「お母様まだユラちゃんから了解は貰ってません!」
「そうなの?ユラちゃんはどうしたいのかしら?」
改めてマルグリット王妃はユラに問いかける。
「えっと、チハルおねえちゃんにおんがえしをしたいです、でんかにもおんがえししたいです。」
「そっか、その恩返ししたいチハルおねえちゃんはユラの事を妹にしたいんだって、どうする?」
「お母様その言い方はずるく無いですか?」
千春はマルグリットの聞き方に苦笑する。
「いもうとになってもいいの?」
「うん、ユラちゃん私の妹になってくれるかな?」
「うん、おねがいします。」
「決まりね!それじゃぁちょーっと私も動いてくるわね。」
「どうするんですか?」
動くと言われ千春は思わずマルグリットに聞いた。
「チハルは私の縁戚で他国から養女にしたじゃない?そこで養女だったユラを一緒に連れてきた事にします、養女の家の養女となりますが問題ないでしょう。」
「問題アリアリじゃないですか?!獣人とかそう言うのは大丈夫なんですか?」
「問題無いわよ、獣人の子を養女にする貴族も普通に居るわ、少なくともこの国で獣人の貴族も居ますからね。」
「そうなの?」
初耳な千春はエンハルトを見ながら聞く。
「あぁ居るぞ?特に武官貴族に多いな、第一騎士団の団長は虎の獣人だ。」
「王族に居ても大丈夫?」
「陛下と王妃が良いって言うなら良いんだろ?」
エンハルトは笑いながら言う。
「それじゃ私は行くわね、あ、チハルの部屋の寝室にベッドを一つ増やしておかないと、エリーナ?セバスに伝えておいてくれるかしら?」
「はい、了解しました。」
一緒に来ていたらしいエリーナは直ぐに返事をする、そしてマルグリット王妃と侍女達は扉を出て行った。
「さて、ユラの待遇も決まった事だし俺も行く、ユラ、俺の事はお兄ちゃんでいいぞ、あーお兄ちゃんが3人出来るのか、ハルトお兄ちゃんだな。」
「お兄様じゃないの?」
千春はなぜ「お兄ちゃん」なのかと思い突っ込む。
「お兄様はチハルが言うだろう?ライリーもフィンレーもお兄様だからな、お兄ちゃんって言われてみたいじゃないか。」
エンハルトは笑いながらそう言う。
「ハルトおにいちゃん?」
「あぁそうだ、よろしくなユラ。」
エンハルトはユラの頭を軽く撫で笑顔で部屋を出て行った。
「チハルおねえちゃん?」
「そうだよーお姉ちゃんだよー。」
「よろしくおねがいします。」
ぺこりと頭を下げるユラ。
「よろしくね、そう言えばユラちゃんって歳いくつなんだっけ?」
「6歳ですね。」
「え?サフィー知ってたの?」
「今朝聞きました。」
「そっか、フィンレーは?」
「7歳に、もうすぐ8歳ですね。」
「いつ?」
「来月の15日ですね。」
「マジか、ケーキつくらにゃいかんにゃー。」
「にゃーってなんですか。」
「なんとなくにゃー。」
「ケーキ食べたいです!!」
「モリアンは好きだねぇ、でも王族の誕生日に侍女がケーキ食べれないよね。」
「一緒に侍女用の作ってくださあぁぁい!!!」
「必死過ぎでしょうモリアン、昨日お腹いっぱい食べたでしょうに。」
「また食べたいですもん、ね!ユラちゃん!」
「うん、またたべたいです。」
「ほら!」
「はいはい、ユラちゃんは王族と一緒に食べれるからねー、誕生日ケーキは作るとして、まぁその前に作ってあげるよ。」
「やったー!」
モリアンはユラの手を上げハイタッチの様な事をして喜んでいる。
「それでは、チハル勉強しましょうか?」
「うぇぇぇ・・・思い出してしまったぁぁぁぁ。」
サフィーナはココに戻って来た目的を千春に言う。
「ユラ様は貴族のマナーを少しずつ覚えていきましょうか。」
「はい!がんばります!」
「ユラ様?」
急にサフィーナが様付けするので千春はビックリした。
「第二王女殿下になるわけですからユラ様でしょう?」
「私はチハルだよ?」
「他の貴族の方が居たらチハル様って言ってるじゃないですか。」
「あー、そうだったね。」
「普段はユラちゃんと言いますけどユラちゃんも「ユラ様」と呼ばれ慣れしておかないと色々と面倒な事もあるんです、勉強の時はユラ様と呼ばせてもらいます。」
「はーい!」
「良いお返事です、それではチハル様のお勉強を邪魔してはいけませんからそちらの部屋でマナーのお勉強しましょうか。」
「まって!ここで1人で試験勉強は寂しい!」
「・・・・モリアン置いていきますから。」
「いらん!」
「ちょっと!チハルさん!」
「いい!一人でやる!」
「チハルさーん!?」
そして千春は向こうの部屋から勉強道具を持って来て黙々と試験勉強に勤しんだ。
「私だけ何もしてないんですけどー?」
モリアンはポツンと立ったまま千春の勉強している姿を見ていた、じーーーーーっと。