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僕たちは、急いで次の国へと向かった。
僕もバベルの姿になって魔力が膨れ上がった為、ミカエルとアズマの二人を同時に空間移動が出来た。
「さあ、今度こそ灼熱地獄になってるな……」
楽園の国は、既に住宅や店が燃え盛っていた。
しかし、住民全員で火消しに取り掛かっているようだ。
「指示しているのはダンさんか……?」
「こっちっス! こっち! あ、君はそっち!」
しかし、楽園の国の住民たちに指示を送っていたのは、カズハさんを抑えてるはずのルークさんだった。
「ルークさん!?」
「あ、ヤマトくん! 家はこんなだけど、まだ死者は出ていない! 直ぐに戦闘に向かってやってくれ!」
「ちょっと、カズハさんは……!?」
「あの後、岩龍がちゃんと目を覚まして、持続的に大地の巡りを遅らせることで岩の神の暴発を更に弱めてくれたんだ! だから俺はこっちの救援!」
「なんで住民たちはこんな指示に……?」
「前言わなかったっけ? 俺ここで凄い働いてるし、みんなとは顔見知りの仲だから!」
「なるほど……。それで、ゴーエンはどこに……?」
「ああ……」
そう言って、上空を指差した。
見上げると、大きな岩盤が楽園の国を覆っていた。
「この上」
「えぇ!?」
「守護神の岩魔法で創ったみたい! 俺は魔法は防げるけど、自然発生してる灼熱地獄じゃとけちゃうから戦闘には参加できないんだ! でも、守備は任せてくれ!」
そして、再び火消し作業に戻って行った。
「い、行こうか……」
僕たちは、大きな岩盤の上に向かった。
ゴーエンは、ヒーラと同じように、炎のエネルギー体に覆われており、灼熱を周囲に放っていた。
対面しているのは、全身を岩の鎧で固めた、守護神ダンさんとグランさんの二人組だった。
「お前……ヤマトか!?」
どこに行っても変わった僕の姿は驚かれるな……。
そんな呑気なこと考えてる暇はないけど……。
「お二人とも、よく聞いてください! ゴーエンを止めるには、まず強力な炎魔法が必要です! 自然発生の炎を魔法の炎で上書きした後、岩魔法で覆い込みます! 最後に雷魔法の強い一撃がないと……ゴーエンは……」
しかし、岩魔法使い二人と僕たち三人……。
「ゴーエンは身体自体が強過ぎる……今ここに居る人たちじゃこの作戦は不可能……」
「不可能だなんて、バベルの姿になっても弱気腰は直ってないのかしら!」
そこに現れたのは、西の社からこの国に真っ先に駆け付けてくれていたセーカだった。
「セーカ!」
「ゴーエンに恩を返せる時が来た! 炎魔法と雷魔法の役目は私に任せて!!」
「え、セーカに炎魔法は……」
「さっき、大人カナンちゃんが現れて、私に炎魔法を付与してくれたの! それに、彼もいるわよ!」
そして、オオオオッ!と現れたのは、水龍アーク。
「ルークさんが呼んでくれていたんだ! これですぐに消火できる!!」
そして、セーカは徐に上空へと飛び上がった。
「炎魔法……じゃなかった……えっと確か……」
そして、弓を思い切り引く。
「炎龍魔法 ゴーカエンブ 爆散!!」
セーカの放った矢は、上空で大きな炎の波となり、ゴーエンのエネルギー体を飲み込んだ。
「炎龍魔法!?」
「さあ、驚いてる暇なんかないわよ!!」
すると、既に二人はゴーエンの上空へと駆けていた。
「あのちっぽけだったセーカに……!」
「負けておられんのぉ……!」
すると、グランさんはダンさんの背後に回った。
そして、そっとダンさんの背中を押す。
「何やってるんだ! グラン!!」
「ワシの寿命ももう長くない。お前も炎神の加護魔法を使っているから、この炎は止められないじゃろ……」
そして、自分の魔力が枯渇する勢いで、自分の中の岩魔力をダンさんへと注ぎ込む。
「やめろ! もういいから!!」
しかし、そのままグランさんは注ぎ切り、その場で倒れてしまった。
「グラン!!! クソっ……! 岩魔法 ランガンダダン!!」
涙を溢しながら、巨大な隕石をゴーエンに放った。
「セーカ!! 決めてくれ!!」
「言われなくても分かってるわよ……!!」
セーカも、その光景に涙ぐんでいた。
「雷魔法 ラピッドビライト!!」
セーカの、グランとお揃いの鎧から、落雷のような膨大な雷魔法がドバッと放たれる。
ゴーエンの炎は、すっかり消火されていた。
「光神魔法 エイレス……!」
その隙に、僕は自分の仕事を行い、ゴーエンの燃え盛る炎の結界を解いた。
「アーク、街の消火に水龍弾を頼む……」
水龍アークに指示を送った後、僕も倒れているグランさんと、駆け付けていたダンさん、セーカの側に駆け寄る。
「どうして……自分の命を賭してまで……」
グランさんは、それから目を覚まさなかった。
「ヤマト、セーカ、聞いてくれるか……」
涙ながらに、ダンさんは話し始めた。
「この楽園の国、炎の神の守護神だけは前例がある。このグランが、前任の守護神だったんだ」
「守護神が切り替わってた……!?」
そして、その全貌を話し始めた。
「俺は、生まれながらに不治の病に侵されていた。齢二十まで生きられないだろうと言われていたんだ」
しかし、ダンさんの相貌は十代後半に見える。
「俺が死んじまう寸前で、ゴーエンとグランは、俺に守護神の座を譲って、永遠の命にしてくれたんだ……」
「じゃあ、グランさんって……」
「あぁ。すっげえ昔から生きてる人だ。それから、加護の残り火で延命していたが、自分でも分かってたんだろうな」
僕が楽園の国でグランさんに敗けた理由も、炎の神ゴーエンの一番弟子だった理由も頷けた。
「私も……グランに救われた……。ドレイクに捨てられた後、私を見つけてくれたのはグランだったから……」
セーカは、お揃いの防具をそっと撫で下ろしていた。
「なあ、ヤマト……。死者の送られる冥界の国ってのは、いい国なのか……?」
ダンさんは鼻水を垂れ流しながら訊ねる。
「なあ……いい国か……楽しくて……愉快な……」
ミカエルは、そっと僕の背を小さく押した。
あの、闇が嫌いで、闇の神アゲルを名乗っていたミカエルが、伝えたいことは分かっていた。
だから、唯一神の僕も応えなくちゃいけない。
「いい国です。楽園のように祭りはないけれど、とても、本当にいい国です。だから、まずは七神を救って、この世界を守ってきます」
ダンさんは、ボロボロの泣き顔を向けた。
「まがぜだぞぉ!!」
僕は、その泣き顔に応えなければいけない。
今度は、ミカエルに背を押されずとも。
「漢、ヤマトに任せてください!!」
アズマを消火作業に向かわせ、僕とミカエルは、次の国、自由の国へと飛んだ。