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「寝ていて汗をかいたでしょう? シャワーを浴びてきませんか?」
彼に言われて、そうかもしれないとソファーを立った。
「じゃあ、そうしますね…」
頷いて「どうぞお先に」と応じる彼に、(今日は一緒に入ったりしないのかな…)と思い、そんなことを考えている自分がふと気恥ずかしくもなった。
バスルームから上がり、リビングに出て行くと、
「これを、あなたへ」
不意に、白い大きな箱が彼から手渡された。
「なんですか……これ?」
不思議に思いながら、蓋を開けてみると──、
中には、淡い水色のショート丈のワンピースドレスが入っていて、箱から取り出して見てみると、胸元には小花を散らした刺繍があしらわれ、腰の切り替えには大きなサテンのリボンが付いて、裾はオーガンジーの薄布で覆われていた。
「それを着て、待っていてもらえますか? シャワーを浴びたら、私も服を整えてきますから」
彼の言葉に、一緒には入らなかったのはその為だったんだと思う。けれど、こんな素敵なドレスを私が着てしまってもいいんだろうかと戸惑っていると、
「着飾られて、待っていてください。私も、楽しみにしていますので」
たぶん私の戸惑いを察したのだろう彼に微笑んで促されて、「はい…」と赤くなって俯いた。
彼が浴室へ行ってしまうと、改めてドレスを眺めた。
「……本当に、綺麗。こんなのが私に似合うのかな…」
着たこともないようなドレスにためらいが浮かんで、ひとり呟く。
だけど、彼が私のために選んでくれて、そうして『楽しみにして』いてくれるのならと、ドレスに袖を通した。
レース使いの幅広な肩ストラップが華やかで、私にはもったいないぐらいにも感じる。
ファスナーを上げると、膝丈のオーガンジーの裾がふわりと広がった。
自分じゃないみたいでなんだか居心地が悪いようにも感じて、だけどちゃんと服に合わせて見た目も装わないと、せっかくこんな素敵なのを選んでくれた彼に申し訳ないようにも思えた。
鏡の前で肩を過ぎる髪をアップにして、ドレスの色味に合わせたメイクをし終えた頃に、彼がリビングへ現れた──。
私と同じ色合いの薄い水色のスーツ姿の上下に、首元にはインディゴカラーのスカーフタイプのアスコットタイをリングで留めていて、
その魅惑的な出で立ちには、思わず目が奪われるようだった。